フリッツの話 2
「今日城に招待されて行ってきたのは知ってるな?」
「知ってる」
「国王夫妻と話してみて、白だと判断したから、国王と二人だけにしてもらった。正解には俺の側近と向こうの側近も同席したが。あぁ、お前の父親にも同席してもらった。」
「そんな急展開?!」
「あぁ」
「…それで?」
「やはり、違法取引について国王たちがかなりの情報を持っていることがわかった。フェルセンが関わっていることも。お前たちには危険が及ばないよう伏せてあるとの事だから、俺からこの話を聞いたことは秘密にしておけ。」
「わかった。」
だから父たちの周りを調べても情報がでてこなかったのか。
「ただな…思った以上に厄介な話だったんだ。」
「厄介?」
「あぁ。想像してた以上に組織が大きいらしい。」
「国王やうちの父に反発している者たちの仕業だと思ってたんだけど…。そんなにたくさんいたの?」
「そうらしい、俺も単独ではないと思っていたんだが…相手がな。」
「言いにくそうだね」
「リスラ共和国だ。」
「え?うちの国じゃなくて?」
「スモーランド王国は表向き利用されているだけのようだ。この国の製品は品質が良いと評判だからな。実際に裏で密猟を取り仕切っているのはリスラ共和国らしい。あの国は昔から俺たちと政治形態も宗教も違いすぎるし、国際条約なんて加盟しない。しかも、天然資源が豊富で保有資産も多く国土も大きいから簡単に手がだせる国じゃないんだ。」
「そんなスケールの大きい話しだったなんて…」
「その上、最近は動物以外に人身売買まで始めたらしい…。」
背筋が凍った。
「お前の父親は何度か個人的にフェルセンに忠告したようだ。しかし、違法取引がやめられることなく、ついにはあの事件がおこった…。」
「そんな…」
フリッツはテーブルの上に用意した木苺のジュースを口にした。
「俺は、今回の件を片付ける為にここに来たが、断念せざるを得ないだろう。」
「…国が国だもんね。」
「あぁ、俺の国の貴族に違法商品を買わないよう警告しながら気長に様子を見ることになりそうだ。お前もこれ以上この件に関わるな。」
「…いやだ。」
「リネア」
フリッツが僕の腕を抑えた。
「…私、真実が知りたい。」
「真実?」
「だって、リスラ共和国の組織とか言われたってピンてこない。フリッツ、私もフェルセン侯爵のところに連れてって!自分で確かめたいんだ!」
僕は昼に預かった招待状をフリッツに渡した。
「次は生きていない可能性もあると言われても?」
「どうせ死ぬはずだった命だ。」
「だめだ、危険すぎる。」
「お願いだ!!オスカルが、何で死ななきゃ行けなかったか、私には明らかにする義務がある!」
涙が溢れた。
「泣くな」
フリッツが僕を優しく抱きしめた。
「お前はこの国の国王の重臣のひとり娘だ。これ以上親を悲しませるな。お前が死んだらお前の両親はもう立ち直れない。お前の父親がだめになると国の政治にも支障をきたす。」
「だけど…。」
「お前はオスカルの代わりをしてるんだろ?だったら、その役目をまず果たせ。無駄死になんかするんじゃない。」
「ふぇ…。」
フリッツがおいで、と両腕を僕に差し出してくれた。
僕はフリッツにしがみついて思いっきり泣いた。
あの事件の後、泣いたのは初めてだった。
父や母を悲しませたくなかったし、リネアが死んだなんて、自分がこんな姿になったなんて受け入れたくなかったから。
こんなことの為に僕たちが殺されなきゃいけなかったなんて…。
大好きなリネアを失くしたなんて…。
「なんで、なんで…」
泣き止むまでフリッツはずっと頭を撫でてくれた。
彼の手は大きくて優しい手だった。
気づいたら朝だった。フリッツが横にいる。
しかも…二人ともベッドの上だ。
「起きたか?」
「フリッツ…私どうしてここに?」
「お前があのまま寝たからだ。起きて勝手にどっか行かないようにそのままここで見張っといた。」
「ごめん…迷惑かけたね。…今何時?」
「ん?…5時だ。」
結構長く寝てしまったようだ。
スモーランドの冬は日照時間が短いくほぼ一日暗いため時間がわかりにくい。
フリッツは僕の頭をぽんぽん撫でた。
「俺がフェルセンの家に行ってくる。なるべくたくさんの情報を持って帰るから、おまえは大人しく待ってろ。俺もお前が死ぬのは見たくないからな。」
「分かった」
フリッツの優しい言葉にまた涙が出てきそうになった。




