ヴィルフリートの愁い
オスカルが部屋をでた後、僕は残りの仕事を片付ける為机に向かっている。…駄目だ、一向に進まない。
フレーデル殿下が来てからというもの、僕は今だかつて感じたことのないような焦りと嫉妬を感じている。
あの男は危険だ。
今回、何かを調べに来たことは間違いない。まだこの国へ来て3日しか経っていないのに、事件に関わる人物と着実に会い続けている。
今日は城に来ていた。何か調べていたかもしれない。
だけど、僕が一番気になっているのはそこじゃない。
オスカルのことだ。
僕とより楽しそうに踊ったり、夜に寝間着姿で部屋にいれたり、二人は毎日少しずつ距離を縮めている。
オスカルは可愛い。おっちょこちょいな所とか、嘘がつけない所とか、すぐ騙されるバカなところとか、食い物につられる犬みたいなところとか…可愛いとこを挙げたらキリがないけど、この良さを理解できるのは今まで僕ひとりのはずだったんだ。
入学してから、フェルセンが現れて、二人は幼なじみだったから最初こそ警戒したけど、あれは僕の敵じゃなかった。
だけど、フレーデル殿下は違う。
今はまだリネアの事を変わった女くらいにしか思っていないだろう。だが3ヶ月も毎日一緒に過ごしたらどうなる?早くも専属通訳に指名したくらいだ。気に入ってなかったらそんなことしないし、あの気難しそうな男が愛称で自分の名前を呼ばせるなんて普通のことじゃない。
フレーデル殿下は、僕が今まで会った他国の皇太子の中で抜群にカリスマ性を感じる。世界有数の大国の皇太子なのに、飾らない豪胆な性格の持ち主で、見た目も良く頭もすごくきれる。男の僕でさえ魅力を感じるくらいだ。人を惹き付けるということにおいて、ある意味あの二人は似ているのかもしれない。
オスカルがリネアとして殿下を好きになってしまったら…
それを殿下も受け入れたら、僕には勝ち目がない。
身分的にも問題ないし、国交上メリットしかない。
そう思ったらたまらなくてつい押し倒してしまった。
あれがオスカルの姿だったら、同じことをしたんだろうか?
最近僕は自分で自分が分からない。
ただ、オスカルが好きで、
一緒にいたいだけなんだ。
キスしたいとか、そういうことをしたいと思っていたわけじゃない。
だけど、今は…。
自分が怖い。君にこんな感情を抱くなんて。
君に嫌われたくないのに、僕はもう、自分を抑えられる自信がない。
まだ僕たちは13歳で、正式に婚約発表できるまであと2年近くある。それまでに手を打たなければ。
…考えるのはやめよう、とりあえず僕は今僕のやるべきことをするまでだ。早く仕事を終わらせて家に帰ろう。
オスカル、あいつとまた今頃一緒にいるんだろうか?
…だめだ、とまらない。




