一筋の光
「リネア、あのさ、ちょっといい?」
「どうした、カール」
パーティーの次の日、授業の合間にカールに呼び止められた。
今日フリッツは国王夫妻に城に招待され、自国の通訳を伴って朝から出かけて行った。何か情報が得られることを願うと同時に国王夫妻が違法な事に関わっていないよう祈るばかりだ。もしそんな事があればヴィルがどれだけ傷つくか、いや、怒り狂って何を仕出かすか予想がつかない。
「フレーデル殿下、何か言ってたか?」
「何かって…?」
「いや、その、…。うちの親の事とか。」
「…特に…、何で?」
「なら良いんだ…。」
カール、何を聞こうとしてる?
こっちも聞きたいことはたくさんあるけど言葉がでない。ヴィルやフリッツに余計なことするなと怒られそうだ。
「あ、そういえば…。」
「何だ?」
「カールがフレーデル語が得意なんて知らなかったよ。」
「うちは、代々外交を勤める家系だろ?だから、小さい頃から何ヵ国語も話せるよう父に厳しく指導されてきたんだ。」
「そっかー!」
「おまえも意外だったよ!ほとんど外に出ずに生活していたはずなのに、殿下に頼まれるほど話せるとか、すごいよ!」
「…ありがと。全然、まだまだのレベルだけどね。…カールも将来外交官に?」
「…そのつもりだ。色んな国へ行きたいし、色んな国の人にこの国を知ってもらいたい。」
「いいなぁ、それ。」
「お前も目指してみたら?女だってなれるんじゃないか?」
「…なれるかな?」
「一緒になろうぜ!!」
カールが笑った。
目の前に一筋の光が見えた気がした。
僕も、色んな国へ行ってみたい。そういう仕事がしてみたい。
この国では国家公務員の女性の職業といえば、看護士や教師、事務職くらいで、政府の仕事についている人なんて聞いたことがない。女性の社会的地位はまだまだ低い。
ヴィルが国王になったら…変わるかな?変えてくれるかな?
「ありがとうカール。私、外交官目指してみたくなった。」
「あぁ!おまえならできる!」
いい奴だな、こんないい奴の父親を疑わなきゃいけないなんて…。
「そうだ、リネア。…これ。」
カールが綺麗な絵柄のついた封筒を僕に差し出した。
「何?」
「…父から、フレーデル殿下に渡してほしいって。今日お会いできたら直接渡したかったんだけど、頼めるか?」
「いいよ、渡しておくね。」
「ありがとう、助かる。…リネア、あのさ、…」
「どうした?」
「…いや、なんでもないっ。じゃあ、俺次の授業行くわ。」
「あっ、うん…。」
授業後、僕はヴィルの部屋に寄った。ヴィルは僕が来ることがわかっていたかのように今日もお菓子を用意してくれていた。
「…来てもよかった?」
「どうせもう、フレーデル殿下に関わることになったんだ。むしろ来てくれた方が良い。いろいろ聞きたいこともあるし、ね。」
今日もヴィルが笑顔だ…。




