パーティー会場にて 1-2
「あの、髪の赤いやつか?」
「はい。隣にいるのはカール、私の友人です。」
「…ついて来い。あの者たちと目をあわすなよ。然り気無く近づくんだ。」
「はい。」
なんか探偵みたい、ちょっとワクワクしてきた。
私たちがテラスの近くに行くと、フェルセン侯爵のほうからこちらに近づいてきた。
「これは、フレーデル殿下、お初にお目に掛かります。ラース・マグヌス・フェルセンと申します。外交官として、貴国の貿易を担当させていただいております。この度はようこそ我が国へお越し下さいました。」
「うむ、よろしく頼むぞ。そちらは?」
「私の息子、カール・アクセル・フェルセンです。」
「初めまして。」
「そちらの可愛いお嬢さんは…?」
「…リネア・エステル・カールソンだよ。昔近所に住んでいた。」
「ああ、カールソン君のご令嬢か、久しぶりだな」
優しい笑顔、カールに似てる。
「俺は今これの家で世話になっていてな、俺がスモーランド語が全く分からないから通訳として使っている。」
「そうでしたか。うちの息子もフレーデル語が得意なんですよ、是非、仲良くしてやってください。」
…ヴィルは…、テラスの反対側か。あちゃ、令嬢たちに囲まれちゃったよ。
「そうか、こちらに3ヶ月留学するんでな、いろいろ頼む。」
「…承知しました。」
「殿下、うちにもぜひ遊びに来てください、最近いろいろ珍しいものも輸入していまして。」
「…それは楽しみだ。俺は珍しいものが好きだからな!ぜひ、近いうちに伺おう。」
「お待ちしておりますよ。」
「…リネア、行くぞ、喉が乾いた。それではフェルセン侯爵、失礼する。」
「はい…カール。またね!」
「おぅ!…またな」
何となくカールが寂しそうに見えたのは気のせい…?
オーケストラの曲に合わせ、ダンスがはじまった。
私はヴィルの予想どおりダンスをする羽目になった。
まったくステップがあわない。さっきからフリッツの足をふんでばかりだ。
「…お前、ひどいダンスだな。」
「ダンスは苦手なんです。」
「そのようだな。お前の父親もヴィルフリートも絶望してこっちを見ようともしない。苦手というか…、そうか。」
フリッツが体勢を変えた途端、相手の足に引っ掛からなくなった。
「えっ!!?急に踊りやすくなった?!」
「俺が女性パートにアレンジをかけて踊っているからだ。」
えっ…
フリッツは僕の腰に手を回し耳元で囁いた。
「リネア・エステル・カールソン。お前…一体何者なんだ?」
「…」
僕は返事ができなかった。
ダンスは次の曲に突入した。フリッツは僕の腰を押さえたまま相手を替えさせなかった。
「話は後でじっくり聞くことにする。どうせ同じ家に帰るんだからな。」
息がかかるほど顔が近い。正体を疑われているせいか心臓のドキドキが止まらない。
「リネア」
「ヴィル。」
やっと来たー!おそいよ!
ヴィルがものすごい笑顔で僕の手を握った。…怖いっ。
「フレーデル殿下、リネアと踊ることをお許しいただけますか?」
「許す。ヴィルフリート、そなた、こいつと仲が良いならもう少しまともな令嬢らしく振る舞えるよう教育しろ。そなたが恥をかくことになるぞ。」
「肝に命じます。」
ヴィルとは練習の甲斐あってかなんとかそれなりに踊れた。
人前で男同士で踊る羽目になるなんて…。
「ヴィル、来るのが遅いよ。」
「…君は自分の状況わかってる?」
「…なんとなく…やらかしたってことだけは。」
「フレーデル殿下は君が思うより、僕以上に油断ならない相手だ。」
「ヴィルより?極悪じゃん!」
「…いたっ」
ヴィルに足を踏まれた。
「…もう君に気をつけろと言うのが無理なのは分かった。なるべく家の外では僕を同席させるように。屋敷の中では…侍女にいてもらうんだよ、君よりは使えるはずだ。」
「アンのこと?…それよりさっきから何でおまえこんなに顔が近いんだよ?」
「この中にいる者が読唇術が使えるかもって考えたりしない?」
「そっか、だからフリッツも…。」
「愛称で呼ぶのを許されたんだ、へぇ。」
「…殿下の忠告は正しい、僕は君を少々甘やかしすぎたみたいだ。」
「どういう意味?」
「…もう少し、教育しなきゃってこと。」
ヴィルが僕の手を強く握った。
寒気がした。
ヴィルは帰りにお土産をたくさん持たせてきれた。
僕の好きなペッパコーカ。
結局ヴィルは僕に甘い。
今日はこれを食べてゆっくり寝よっ!
◇◇◇
「リネアさま、夜分失礼します」
「アン?どうした?」
「フレーデル殿下がこちらにいらっしゃっています。」
「アン…同席してくれる?」
フリッツはすでにドアの前に立っていた。
「無用だ。お前に変な気を起こすほど俺は女に困っていない。二人きりにしろ。心配ならドアの外に護衛でも立たせておけ。」
ヴィルー、やっぱりうまくいかないっ!!




