フリードリヒ殿下が来た 1-1
「フレーデル王国から来たフリードリヒ・アウグスト・フォン・フレーデルだ。今回は世話になる。」
「殿下、ようこそお越しくださいました。」
「ああ、よろしく頼む、カールソン公爵」
なんでこうなった?関わらないようにって言われていたはずなのに。
「こちらは、私の娘です。」
「リネア・エステル・カールソンです。初めまして。」
「ふむ、なかなかよい発音だ。最初城に滞在する予定だったんだが、城にいる者の誰より公爵がフレーデル語が達者だと聞いてな、こちらに変えて欲しいと来る道中で言ったのだ。お前も話せるのか?」
「ある程度は。」
「それは良い。俺はスモーランド語をあまり勉強していなくてほとんど分からない。しかもrの発音が苦手でな。うちの国のと違うだろう?」
「確かに、私は逆にそちらのrがうまく発音できませんから。」
「悪くないぞ?上出来だ。」
「ありがとうございます。」
なんか面白い人だな。警戒しろって言われていたのに早くも自信なくなってきた。
「さあ、玄関で立ち話もなんですから、中へお入りください。食事を用意します。大した物をお出しできません事、お許しください。」
「無理を言ったのはこちらだ、気にするな。むしろ豪華な食事はこれからもいらん。普段と同じものにしてくれ。俺は食べ物を捨てるのも嫌いだから作りすぎないように。」
「承知しました。お気遣い、感謝します。」
今日は典型的なスモーランドの家庭料理、サーモンのサラダとフレステルセが夕食のメニューだった。我が家は経済的に苦しい訳じゃないけど豪華な食事が苦手で、庶民の家庭料理を好んで食べている。
「…これはうまいな。俺の国も芋が主食だがこのような食べ方はあまりしない。」
「フレステルセという食べ物です。アンチョビが利いているのが特徴です。」
「気に入っていただけたようでなによりです。リネアの得意料理でもあるんですよ。」
父上、そういう情報いらないから…。
「へぇ、お前まだ小さいのに料理なんかできるのか。」
「小さいって…。私はこれでも13歳だ。失礼な奴だな。」
「リネア、お前話し方…!失礼しました。これはまだフレーデル語がうまく話せないようで…。」
「公爵、気にするな。リネアといったな、お前スクールに通っているのか」
「通ってますけど。」
「丁度よい、お前俺がここにいる間、俺の通訳をしろ。国から通訳をつれてきたが、大人がいちいち間に入ると他の者が気兼ねして忌憚ない意見を聞けなくなるからな。」
「そもそも皇子に忌憚なくとか、無理でしょ。」
「リネア…」
父がさっきからハラハラしている。全く食事が喉を通らないようだ。
「殿下、うちの娘はこの通りとんだ跳ねっ返りでして。双子の兄がいた頃はこんなでもなかったのですが…。通訳なんてとてもそのような大役勤まらないかと。」
そうだよな、要らないこと言って国際問題に発展したらって心配でたまらないよな。
「決めるのは俺だ。リネア、褒美は何がよい?只で働けとは言わんぞ。」
「そんな…殿下、何もお気遣いは無用で…。」
「公爵、俺はリネアに聞いているんだ。」
「…食洗機。」
「ん?」
「ガゲナーの食洗機ください、2台!」
「…おまえ、そんなものどうする気だ?」
「一台はこの家に。手荒れのひどい職人がいるんです。もう一台はうちの殿下の部屋にあるキッチンにつけます。色はステンレスでお願いします。」
「…よくわからんが、良かろう。宝石とか、ドレスを想定していたが、…家電か。変わった娘だな。」
父が完全に脱け殻のようになった。
「よろしく頼むぞ、リネア。俺のことは、非公式の場ではフリッツと呼ぶことを許す。敬語も使わずに話すがよい。どうせほとんどの者はフレーデル語が理解できないからな。」
「フリッツも相当変わってるね。」
「誉め言葉として受け取ろう。」
こうして、フリッツが僕の家に滞在することが決まった。




