僕の学校生活
スクールの授業は簡単だった。今まで王室の専属教師から学んでいたせいか、今習っていることは数年前に習得した内容で、改めて習うまでもなかったから、来学期から先生に頼んで飛び級させてもらうことにした。女子のみが習う裁縫もリネアに生まれ変わったせいか簡単に課題をこなすことができたし、料理は得意だったから、苦手そうにしている他の生徒を手伝ってあげた。
「カールソンさまは、本当になんでもできてしまうのね。」
「さすが特待生ですわ。」
「あの…、リネア様と呼ばせていただけませんか?」
「ずるいっ!!抜け駆けはファンクラブ会員の規約違反ですわよ!!」
気づいたらリネアファンクラブなるものができていたらしい。
「私は構わないよ、好きに呼んでくれたらいい。」
「きゃーーー!!」
僕は話し方を直すことが未だできなくて、妹が好んで読んでいた本の男装令嬢みたいな感じのキャラになってしまった。
「学校生活には慣れましたか?」
アンが僕の髪の毛をとかしながら聞いた。
「うん、最初はどうなるかと思ったけどね。なんとかやれてる。」
「その話し方で?」
「今さら変えにくいからこのキャラでいくことにした。もう、みんな僕がこういう奴だと思ってる。お陰でカール以外の男はほとんど話しかけてこなくなったけど。」
「…男性が話しかけてこないのは、別の理由だと思いますけどね。」
「まあ、巻き毛令嬢たちも、あれ以来何もしてこないし、いたって平和だよ。刺激がないから来年あたり留学したいと思ってるんだ。」
「許しがでるとは思えませんけど。」
「父は積極的に外にでるよう言っていたよ。…オスカルには。」
「いえ、そちらじゃなくて…。」
本当の目的は別にある。入学してからも僕を殺した犯人探しは一向に進展しなかった。カールからも特に情報が得られなかった。時間が経つにつれ、どんどん証拠が隠滅されてしまう。僕はどうしてもフレーデル王国に行って手懸かりをつかみたいと思っていた。
授業後、ヴィルからビッグニュースが伝えられた。
「フレーデル王国の第一皇子が留学してくるって?!」
今日のおやつはミートパイだ。ヴィルに押し付けられた仕事がおわらないから、作業しながら食べている。
「…みたいだよ。先程父からそう言われた。3ヶ月ほどの滞在期間だって。例の国賓も来るらしい。
…パイを書類に溢さないでよ、シミがつくから。」
「留学する手間が省けたかな…。」
「…何が目的か分からないから気をつけて。表向きは我が国の鉄鋼産業と水力発電技術の見学だと言っているけど。世界指折りの大国の皇子にとって参考になるものがあるのか疑わしい。」
「別の目的がある可能性、か。」
「とにかく皇子が来ている間、君は危険な可能性もあるから僕の部屋にはなるべくこないように。この建物に皇子の部屋も用意するから。」
「皇子は普段は城に滞在するの?」
「…そのはずだよ。」
「じゃあ、何か分かったら教えてね。僕が直接関われなくて残念だよ。」
「あぁ、何かわかったら報告するよ。とにかく良い子にしてるんだよ。余計なことはしないでね。」
「小さい子どもじゃあるまいし!」
ヴィルがぼくの頭をなでながら、僕の口にパイをもう一つ入れた。




