新しい出会い
僕たちのお店は開店から期待以上の売り上げをだしていった。
ホールの席は常にほぼ満席だし、テイクアウトも好調だ。
シャーロット様が来てくれたおかげで僕たちの店は度々テレビやラジオで紹介されたのも大きい。
早食いで優勝した男性はあれから何度も店に来てくれて、毎回バォズのセットを注文する。今日は僕に声をかけてきた。
「やあ、君は留学生なのかな?」
「そうですが。」
「お店に少し興味があってね。ニュースで君も店の立ち上げに関わったって聞いたから、ちょっと話を聞くことはできる?」
「いいですよ?」
僕は他のスタッフの人に休憩をもらって店の前の公園のベンチに座った。
「これ、よく来てくださっているお礼です。」
僕はシアナのお茶を渡した。
「ありがとう。僕、このお茶の味好きなんだ。」
「私もです。」
「僕はデイヴィッド・アンダーソン。君は?」
「リネア・エステル・カールソンです。」
「よろしくね。」
「はい…。」
デイヴィッドさんは年は僕たちより少し上だろうか。短髪で青い瞳、無精ひげが生えていてラフな服装をしていた。
「君はどこから来たの?」
「スモーランド王国です。」
「へえ、まだ行ったことがないなあ。」
「デイヴィッドさんはメルア大陸の方ですか?」
「え?なんで分かった?」
「いえ、エンゲル語が母国語かと思いましたが発音が違うので…。」
「へえー。すごいね。よくわかったね。」
「それで…?お店に興味を持ったってさきほど言っていましたが。」
「そうなんだ。すっかりこの店のファンになっちゃってね。それで、どうしてこんなお店を外国人の君たちが開こうと思ったのか興味を持ったんだ。」
「…。」
イーチェンのお父さんの言葉を思い出す。誰かに真似されないよう気をつけろ、と言っていた。
ここで知らない人にぺらぺら話すほど僕も馬鹿じゃない。
「あの…、お店を気に入ってくださったことはとても嬉しいんですが、詳細はお店のオーナーである別の人に聞いてもらえますか?私はあまり権限がないんです。」
それは嘘じゃない。株の大半はユーラがもっているし僕は基本ユーラの会社の一社員扱いだ。
お店の前にユーラが立っていてこちらを見てる。
僕が手を振るとユーラがこちらへ来た。
「リネア、ちょっとお店が混んできたからそろそろ戻って欲しいって他のスタッフの人が言っていたよ。」
「了解、今もどるよ!あ、よかったら彼がオーナーなので彼に聞いてください。」
「どうした?」
「あ、この方がお店についてちょっと知りたいって…。」
「こんにちは、はじめまして。」
「どうも?」
デイヴィッドさんがユーラに何か話しているのが店の窓から見えた。
「素敵よね、オーナー。」
「本当、うらやましいわリネア、彼と本当に仲がよさそうで。」
スタッフのミオンとリンが僕にそう言った。
お客さんもユーラが来ると本当にうっとりしているのが分かる。
僕にも見に覚えがあるくらいだ。ユーラは本当に美しい。あんな人が僕に告白してきたなんて何かの間違いじゃないかと思う。
「…私はあそこのテーブル片付けてくるねっ。」
トラブルにならないよう気をつけよう。女の子を怒らせると怖い…。
自宅のアパートに戻ると夕食の用意を手伝った。今日はセルが用意をしてくれる。セルも厨房へ入ったり一緒に料理をするうちに手際がよくなっていろいろな料理を作ってくれるようになった。
今日はマッシュポテトとステーキ、それからサラダだった。
「豪華だねえ…。」
「うん、ちょっと奮発したよ。リネアが担当だといつも豚肉か鶏肉だもんね。」
「…すみません。また借金が始まりまして。」
「お前またそんなことやってんのか?…うん、セルの料理も旨いよな。」
最近はイーチェンまでご飯を食べにくるようになった。イーチェンが担当の日はシアナ料理を持ってきてくれるため僕は楽しみにしている。
あの食事の日以降もこれといってイーチェンが何かを言ってきたりすることもなく普通に過ごしているから僕たちも気にしないようにした。
「そういえばさ、ユーラ。今日の人何か言ってた?」
「…。いや、特に。お店が気に入ったって言ってたよ。」
「うちのお店の真似をしようとかそういうのじゃなかった?」
「…そういうのではなかったよ。」
「ならいいんだ…。」
その後、店は5月に入っても忙しいまま毎日が過ぎていった。
僕とユーラはいよいよリスラ共和国出発に向けて用意を始めた。




