フリッツとの再会 1-2
「つまり…お前が婚約したくないとミハイルに言ったせいでこうなったんじゃないか…と。」
「うん、ヴィルは多分私の留学をあの時すぐに打ち切るつもりではなかったんだと思う。だけど私がユーラに愚痴をこぼしたせいで気づいたらこんな事になっていたんだ…。」
「お前がヴィルフリートと婚約する話は俺がお前と付き合う前から知っていたことだしな。それを知っていて俺もお前と付き合ったんだ。ヴィルフリートにしてみれば非常に不愉快だったはずだ。」
「…私の知らない所で勝手に話を進めるなんて酷いよ。」
「…でも俺がフレーデルに留学を薦めなかったらお前はその話を自然に受け入れていたかもしれない。」
確かに…。スモーランドとヴィルの用意してくれた世界しか知らなかったら…。
だけど僕は知ってしまった。外には本当に色々な世界がある事を…。
僕たちは食事を終えてソファーに座った。僕はコーヒーをいれた。
「店を始めるんだって?」
「うん。セルと、ユーラと新しい友達とね。もうすぐ開店で準備があるからスクールが終わった毎日準備に行ってるんだよ。」
「…楽しいか?」
「うん、めちゃくちゃ楽しい。」
「お前はどこへ行っても俺がいなくても楽しく生きていけそうだな。」
フリッツがため息をつく。
「…フリッツの事は考えないようにしてた。」
「酷いな。忘れるつもりだったのか?」
「…忘れたかった。」
「…勝手にいなくなって勝手に忘れられるとか、俺、お前にとってそんな小さい存在だったのか?」
「違うよ。特別すぎて、思い出したくなかったんだよ。思い出したって、私たちには未来がない…」
涙がこぼれる。
「なんで来ちゃったの?もう会わずに終わらせるつもりだったのに。」
「終わらせる?俺はそんなつもりは全くない。お前はもう俺と別れたつもりでいるのかもしれないが俺は認めていないからな。」
「フリッツ…。」
「リネア、離れている間に俺はもう分かったんだ。お前以外考えられないって…。」
「でも私、もうヴィルと約束しちゃったんだよ。ヴィルは私がいないと駄目なんだ…。」
「じゃあなんで、ヴィルフリートはアリーナと別れない?」
「それは…色々事情が…。」
「俺は婚約者がいるにも関わらずそんなこともはっきり出来ないような奴にお前を渡す気にはなれない。」
「そんな事言ったって…んっ…。」
フリッツがキスをしながら僕をソファーに押し倒す。
「駄目だよ…」
「お前を知ってしまった後に、クリスマス休暇が終わったらずっと一緒にいれると思って楽しみにしていたのに、いきなりいなくなって、連絡も一度もしてこないで、放置された俺の気持ちが分かるか?」
「…」
胸が痛む。
「仕事を必死で片付けてここまでやっと来たのに、なんで来たとか言われる気持ち、分かるか?」
「…だって…。」
「だってじゃない。お前が基本自分勝手なのは俺も十分分かってるんだ。お前は俺がいなくても生きていける奴だって事も…。」
「フリッツ…。」
「だけど、俺は…。お前と一緒にいたい。リネア、俺はお前がいいんだ。」
「…」
「好きだよ…。」
真っ直ぐな人。僕はどうしてこの人だけ特別なんだろう?他の男を意識する事なんか出来ないのに、フリッツだけは違うって、何故そう思うんだろう。
「私だって…フリッツ以外の人を好きになれるとは思わないよ。フリッツだけだよ、私がこうしたいと思うのは…。」
僕はフリッツの首に腕を回してキスをした。ああ、やっぱり好きだ。彼の匂い、体温、すべてが心地いい。
「私だってずっとこうしたかったんだ…。」
「リネア…」
「フリッツ、大好きだよ…。」
フリッツと離れてから4ヶ月、ずっと思い出さないようにしていた。だけど会ったら一瞬で引き戻される。どうしようもなく好きで求めずにはいられない…。
「リネア…いい?」
「うん…して。」
「…っ!!」
今は考えるのはやめよう。ずっと会いたかった人に会えたんだ。勝手な僕を見放さずにわざわざ会いにきてくれた。
またすぐに会えなくなるんだ。今だけは…フリッツと一緒にいれる時間を大切にしよう。
「フリッツ…」
「ん?」
「…やらしい…」
「…誰のせいだ?」
「…知らない。」
フリッツが時計をみて僕を抱き締めた。
「リネア…。」
「ん?」
「日付が変わった。…誕生日おめでとう。」
フリッツが指輪を僕の指にはめてくれた。
「フリッツ…だから来てくれたの?」
「…かなりいろいろ頑張りました。」
涙がでてくる。どうして…この人は…。
「ふぇ…。」
「泣くな。」
「ごめんなさい、私は自分勝手で連絡もしなくて。フリッツがこんなに大切に思ってくれていたのに…。」
「本当にお前は酷い奴だ。」
「私の事、嫌いになる?」
「…なれたらよかったんだが…。リネア」
「ん?」
「これからの話をしようか。」
「これから…?」




