セルゲイの不在
カフェテリアでイーチェンと待ち合わせをした。
先日のレストランの店舗の状況が分かったらしい。
「…そっか、じゃあ今店は空いてて借りるのも可能なんだね?」
「らしい。一度中を見せてもらうよう頼みたいがいつが空いてる?」
「たいてい大丈夫だよ。あのさ…」
「なんだ?」
「今回はセルも参加させたい。」
「…分かった。じゃあいくつか希望日を教えてくれ。」
「ありがとう!明日にでも連絡するね!」
「ああ。」
セルの事、すんなり了承してくれてほっとした…。
ホームルームに戻る途中、中庭でマギーがセルに何か言っていた。彼女は怒っているみたいだ。
近くにルークがいたから声をかけた。
「何かあったの…?」
「僕もよく分からないんだけど、何かセルゲイがマギーの友達に手を出したとかなんとかって朝から怒ってたよ。」
「セルが…?」
僕が言ったせいだろうか…?そういえば今日は登校も別々だったし朝から話してなかった。
帰ったら話してみようと思ったけどセルは夜ご飯の時間になっても帰ってこなくて、気になってユーラの部屋へ行ってみた。
「セルゲイ?知らないよ…。」
「何かあったのかな?」
「小さいこどもじゃないんだから、大丈夫だよ。それよりリネア…」
ユーラがハグの合図をした。
僕はユーラにハグをする。最初は抵抗があったいってきますのキスもハグも慣れてしまえば気にならなくなった。
「セルゲイやビジネスの事ばっかりで寂しい。」
ユーラが上目遣いで僕を見る。
「何それ?」
「私だってリネアと博物館や美術館に行ったりしたいのに休日は毎回セルゲイと食べ歩きしてるし…。」
「…じゃあ今週末行く?私もずっと行ってみたかったんだ。エンゲル王国一の博物館。」
「行く、約束だよ。」
「…リネア、ヴィルフリートとは連絡とってる?」
ユーラがコーヒーを入れてくれた。トーストと卵を焼いて今日は簡単に夜ごはんをすませることにした。
「この前久しぶりに手紙を書いて返事がきたんだけど…、引っ越ししなきゃいけないかも。ヴィルの要望で。」
「へぇ?不便だね。」
「そうなんだよね…。寮に空きがでたら入るつもり。この街の家賃は高いしね…。ただ、今さら引っ越しとかなぁ…。ここ気に入ってるのに。」
「…私が何とかしてあげようか?」
「どうやって?」
「どうしようかな。アリーナとの関係を脅しに使ってもいいし、この近くを借りて事務所にしてもいい。」
「…後者の方にしよう。」
「リネア…。いいの?ヴィルフリートは君に婚約をせまっておきながら浮気してるんだよ?なのに君だけ彼の言うことを聞く必要なんてあるの?君はやましい事をしている訳でもないのに。」
「そうなんだけどね…。6月に来るみたいだし…。私はさ、ヴィルに恋愛感情がある訳じゃないから浮気って言われても正直あまり気にならないんだよね。…むしろ、自分がヴィルとそういう事をする事になる方が抵抗がある。」
「フリッツとしたのに?」
「だってフリッツは私がオスカルだった頃を知らないし、私を男としてみていないから…。」
ユーラが僕に顔を近づける。
「その条件からいくと私も対象になれるってこと?」
「何の?」
「だから、私とならできるかって話。」
「どうなんだろう…?考えたこともないし…。」
「目をつぶって、想像してみて?」
「うん…?」
ユーラが僕の耳元で甘い声でささやく。
僕は言われたとおりにしてみる。
「私がリネアにいっぱいキスをして、リネアの弱いところをみつけたらそこを攻める…。」
「えっ?弱いところを攻めるの?ひどくない?」
「…黙って。」
「はい。」
「君は私にいじわるされてるうちに、だんだんそれが快感になってきて、ついにはどうしようもなくなるんだ。」
「…どうしようもないのはユーラじゃないか。ひどいよ、勝手にいじわるしておいて、私がそれを喜ぶ設定なんて…。私はそんな変態じゃ…。」
ユーラが僕の口を指でつむらせる。
そのまま僕をソファーに押し倒した。
「君は私が欲しくてたまらなくなる。そしてついには我慢できず私を求めるんだ…。」
「えっ、私からいくの?何それ、ユーラの妄想?なんかおかしくない…?」
「ぶ…っ。」
ユーラが震えだす。どうやらツボに入ったらしい。
「あはははっ!」
「ユーラ…、全く想像できなかったよ…。」
「そのうち言った意味が分かるから。」
「へ…?」
ユーラが僕のおでこにキスをした。
「その日が来るのを楽しみにしてるよ。それまでは妄想で我慢する。」
「…もう少しましなのにしてよ。」
「どんなのならいい訳?」
「知らないし!」
その日から週末の夜になるまでセルはアパートに帰ってこなかった。ユーラには連絡があって大丈夫だと僕に伝えるように言ったらしい。なんだかとても不安になった。
日曜日、博物館に行く前に僕とユーラはイーチェンに会うことにした。




