皇太子の部屋にて 2-1
「…そう言えばお前に婚約者がいるなんて聞いてなかったぞ」
お昼ご飯の時間と授業が終わって帰宅するまでの間、僕がヴィルの部屋に行くのが日課になった。
ヴィルはこの歳である程度国の仕事を任されているらしく学校運営にも関わっていた。僕も側近の役目だと言われ何かしら仕事を押し付けられた。僕はこ褒美目当てにがんばった。
今日のおやつはヴィル特製のチーズケーキだ。下の台の部分に全粒粉のクッキーを使っていてサクサクしておいしい。僕の方が先に料理を始めたのにいつの間にかヴィルの方が上達していた。自室にトスカナから輸入したキッチンつけるとか、ヴィルは昔から金と権力の使い方がずれてる。
「何の話?」
「おまえのはとこの取り巻きに嫌み言われた。」
「へぇ…。なんて?」
「こどもができない虚弱な身体で近づくな、とか、おまえには婚約者がいるのにどうとかさ。
なんで身体が弱いとこどもができないとか、意味わかんないよなっ。」
「確かに以前のリネアなら無理だっただろうね。」
「どういう意味だよ?」
「君は13歳にもなって、どうやったらこどもができるか知らないわけじゃないだろう?」
「えっ!?こども?!ある日なんとかって鳥が運んでくるんじゃなかった?…違う?どっかでもらってくるとか?!」
「…5歳児並みの知識だね」
ヴィルがため息をついた。
「…どうするか知りたい?」
ヴィルが僕を見つめる。
「…いや、今はいい。なんとなく。」
「カールに聞いたりしないでよ。」
「あっ!!…カールと言えば!」
「どうした?」
「あ、いや…。」
まだ言うべきじゃないか…?さっきなんとなく違和感を感じたことを。
あの言葉はカールが僕に言ってくれたことだ。今はまだ僕のなかにしまっておこう。
「なんでもない。…おいしいよ、今日のチーズケーキも。おかわりもらえる?」
「…はとこの件だけど、婚約者じゃないから。」
「分かってるよ。」
「へぇ…、君でもそういうことするんだ?」
「いつもの仕返しだよ。…でもはとこなら、本当かとしれないも思った。」
「あの巻き毛は昔から本当にしつこくてね。しかも低レベルの策士なんだ。」
「君のこと、よっぽど好きなんだろうね。」
「やめてよ、僕がそういう感情持ち合わせてないの知ってるだろ?気持ち悪いとしか思えない。僕のこと何もしらないのに、何を求めてるのか、考えたくもない。…僕はね、ああいう女たちと結婚して世継ぎを残すしかない自分の将来に最近まで絶望していたんだよ。」
「最近まで?…最近は?」
「最近は…、そうでもない、かな。むしろちょっと面白そうだとさえ思えるよ。」
「ついに好きな人ができた?!学校の子?」
「秘密」
「教えてよー!」
「教えない。」
僕がヴィルにジャレた拍子にソファーにヴィルを押し倒すような体勢になってしまった。
「…ヴィルの顔、やっぱり綺麗だよな。絵画のモデルみたいだ。ヴィルならどんな女の子も絶対に墜ちるよ。」
なんだろ?胸が少しチクっとした。
「絶対…?」
「絶対。お前の本当に良いとこも悪いとこも、全部わかって一緒にいてくれる子だといいな。」
「…そうだね。僕もそう思う。」
ヴィルの一番が僕じゃなくなるのは正直寂しいけど、僕はお前が幸せになってくれたら嬉しいな。
ヴィルがリネアの髪に触れる。人差し指に絡めて巻いた。
「お…お兄様?!」
ドアの向こうに真っ赤な顔をしたヴィルの妹、ユリアがたっていた。




