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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
フレーデル王国編
122/350

皇太子の婚約者 2

広い食堂のテーブルの上にハーブやスパイスの効いたローストチキンをはじめ食べきれないほどのご馳走が並べられた。どれもオスカルが好きなものばかりだ。

彼は食べ物に意識をとられつつもこちらの様子を伺っている。


「こんなことで許されるとでも?」


最初に沈黙を破ったのはオスカルだった。

僕は今、目の前にいる少女に睨まれている。

明るい栗色の髪の毛、エメラルドグリーンの瞳をもつ可愛らしい少女は目の前の食事に手をつける事なく怒りで震えていたが、僕は平然と食事を進めた。


「早く食べないと冷めるよ。今日は君の好きなものばかり用意したんだ。次は新鮮なムール貝、ロブスターもあるからね。デザートはティラミスだよ。」


オスカルは一瞬僕の誘惑に負けそうにもなったが、唾を飲み込んで我慢することにしたらしい。



「ごっ、ごまかすな!どういうつもりだって聞いているんだよ!婚約って何だよ?ふざけてんのか?!答えろ!」


可愛らしい見た目と話し方のギャップが面白い。

僕は彼が怒っているのを見て見ぬ振りをして美味しそうなロブスターを食べ始めた。ソースとロブスターの相性がとてもいい。


「僕と公爵家の娘である君が婚約する事?身分的にも問題ないだろ?」

「そういうことを言っているんじゃない!…なんでこんな事をしたんだ?」


僕はナイフとフォークを皿に置くと

「僕は皇太子だよ、君が一番分かっているはずじゃないか。」とオスカルの目を見てこう言った。


「僕は僕の正しいと思う選択をした。婚約者をめぐる争いなんて面倒極まりないし、何より僕は他人に興味がない。唯一心を許した君が何の運命のいたずらか婚約対象になったんだ。僕が自分の使える権力を行使して何が悪い?立っているものは親でも使えと言うだろう。

だいたい、こうなる前に君には十分な猶予があったはずだよ。僕は予め君に何度もヒントをだしていたし、婚約を回避できなかったのはつめの甘い君の落ち度だ。」



オスカルが不満そうな顔をしている。

怒った顔も可愛い。



「長年親友をやっていたし君の立場は分からなくもない。婚約者争いにうんざりしているのも知っている。だけどどう考えてもおかしいだろう?」



「お前は僕の親友で、僕は元、男だったんだから…。」





「そうだね。おかしいよね、自分でもそう思う。僕にとって君は今もオスカルのままだからね。」

「僕だって、ヴィルはずっと特別だよ。小さい時からずっと一緒にいたんだ。…だからこそ、そんな対象に見れるはずがないじゃないか。」


「僕は…見れる。」

「ヴィル…?」


「自分でも信じられないけど、何度も自問自答したけど、やっぱり答えは同じ…僕は君が好きだ。君だけなんだ。僕がずっと一緒にいたいのは…。」


オスカルが僕の言葉にひいているのが分かる。辛い。僕たちがこんなふうになってしまうなんて…。

フリッツがこの国にこなかったら、オスカルが留学なんかしなかったらもう少し時間をかけて僕の気持ちを受け入れてもらえたかもしれないのに。


「卑怯な手を使ったのは十分承知してるつもりだ。」

「だったら…」

「婚約はやめない。君は祖国のために生きると言ったよね?…だったら、僕は君に相応しい場を用意するまでだ。君のやりたい事ができるよう国を変えて行くつもりだ。簡単ではないから時間がかかるだろうけど…」


「ヴィル…」


「僕の決意は変わらない。婚約発表までにお互いいろいろ整理しておかないとね。留学については改めて話し合おう。」


「ヴィル!」

オスカルが僕の胸ぐらを掴んだ。

「君は…アリーナが好きで付き合ったんじゃないのか?」

「嫌いじゃない、ただそれだけだよ。」

「それだけで…どうして?」


僕はオスカルが僕を掴んでいる手を押さえつけてキスをした。深く長いキスを…。

「ヴィル…んっ…。」

オスカルが抵抗するが僕はやめない。


「君の為に付き合っただけ。」


「…おかしいよ。そんなの。」


「僕がおかしいのは元々のことじゃないか。君の気をひくこと、君が喜ぶことなら今までずっとしてきたよ。大好きな君の趣味にあわせて自分の好きなものも変えてきた。僕が君の一番でいたいから。」


「…」


僕は涙を流しながらオスカルを見つめた。

彼の動揺が伝わる。

「約束したよね?ずっと一緒だって。僕を一人にしないで。」


もう一度キスをしてみる。

彼は逃げない。あともう少し…。



「僕は君がいないと生きられない。君がいない人生ならなくとも同じだ。」

僕はバルコニーのドアを開けて手すりに手と足をかけた。


「ヴィル?何を…。」



「僕は真剣だよ。君が僕を選ばないなら、僕はここから落ちて死ぬことを選ぶ。」

「バカな事を言うな!」

「バカは承知だよ。だけど、君は僕の事を知ってる。僕が冗談で言っているんじゃないことを。」


そう、僕は真剣にここから落ちてもいいと思ってる。


そして、君がそうさせない事も…。






「死んだら…駄目だ。」

オスカルが涙を流しながら僕に手を差し出した。




「僕を選んでくれる?」


「分かったから…死ぬな。」


オスカルが僕を抱き締めた。身体が震えてる。

やっと…帰ってきた。オスカルが僕の所に。




「オスカル…好きだよ。一生君を大切にすると約束するから。」


僕はオスカルにキスをした。何度も…オスカルを確かめる為に。

彼が僕を抱き締めた手を放す事はなかった。

僕の為に僕のキスを受け入れる彼が愛しくてたまらなかった。



「食事…食べない?お腹へってるよね?」

「減った…」

「暖め直してもらうよ。」

「うん…。」



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