皇太子の部屋にて 1
学園内にある皇室専用の建物のヴィルの部屋。入り口のところでヴィルが人払いをした。
ヴィルの部屋のインテリアはすっきりしていて華美な装飾は控え目だ。壁紙は流行を取り入れたシックな色合いで、家具もいわゆる猫足じゃなく、機能的で無駄のない僕好みのシンプルなものばかり。
「あ!この椅子!!ヨハンセンのもの?」
「そう、君が欲しいって以前言っていたから頼んでおいたんだ。」
「あっちのランプはcw30?!すごいっ!!」
僕は食べ物以外に建築や家具にも興味があって、昔から外国に父と行く度、気になるデザイナーの工房に連れていってもらった。でも父は買ってくれなかった。いつか自分で稼いだら自分の金で買うよう言われていた。
ヴィルは僕のあらゆる好みを熟知していたし、彼も僕と好みがよく似ていた。
「気に入ってもらえたようでなによりだよ。そろそろお茶にしようか、今日はオルセンのルバーブパイにしたんだ。」
こいつはー!!本当に僕のこと分かりすぎてていやになるっ。
「…ここに来たら叱ってやるつもりだったけど、もうやめた。」
「何を叱るの?」
「目立つなって言っておきながらヴィルのせいでみんなに注目されたからだよ。」
「初めが肝心だからね。ああしておけばあの阿呆以外、僕に懸想する女も君にちょっかいかける男も減るだろう?僕はつまらないことでこの学生生活を台無しにされたくないからね。」
「だからって…。誤解されたら困るのは君だろ。僕なんかと噂になったらどうするんだ。だいたいカールは僕の友達だ。君もわかってるはずなのになんであんな意地悪言うんだよ。」
「昔から僕はあの阿呆が嫌いだからね。僕が誰かを知っていてあの態度、不敬にも程がある。計算ができずバカ丸出しだから、媚びへつらう他の奴らより質が悪い。」
「質が悪いのはどっちだよ。」
「…パイいらない?」
「いります!すみません!ごめんなさい!ヴィルは良い人です!」
「じゃ、今から僕の言うこと聞いて?」
「何だよそれ?」
うわ…このパイまじでうまいっ。甘さと酸味が絶妙。パイ生地に使ってるバターもいいやつだ。
「フェルセンには気を付けろ。」
「どういう事?気持ち悪いんだけど、やきもちやいてるみたいで。」
「一昨日、君の事件に関わったと思われる人物のリストにフェルセンの父親の名前が加わった。」
「…え…?」
「あの阿呆自体は知らないだろうけどね。だけど用心するに越したことはない。だからあの阿呆には色恋沙汰と勘違いさせておく方が都合いいと判断した。フェルセンは君の父と同じ外交官だ。最近隣国のフレーデル王国との貿易で怪しい動きをしていると、国王の側近達から目をつけられている。」
「フレーデル王国…。」
僕らが死んだ日に来ていた国賓がいる国。
「フェルセンから得られる情報もあるだろうから避けるなとは言わない。敢えて同じクラスにしたのもそういう理由だよ。まさか初日から話しかけてくるとは思わなかったけどね…。肝に命じて慎重に動くように。つかず離れず、食べ物につられないようにね。」
「僕は犬かっ!!」
「ワンて泣いたらレモンパイもだすけど?」
「ワンワン!!」
「…そういうところだよ、僕が心配なのは。」




