夜遊び
予想通り、クラブではユーラとセルゲイが目立ちまくっていた。次々に令嬢達から声がかかる。
僕は隅の方で新しいクラブの様子を観察していると誰かが声をかけてきた。
「あら、カールソンさんじゃない?あなた、彼がいるのにこんな所で遊んでいるの?とんだあばずれね。」
タバコの煙を吹き掛けられ、すごい敵意を感じる。
ノースリーブに丈の短いスカート、胸の部分を強調するデザインのドレス…。初めて会った時とは随時印象が違う。
メアリー…。
「誰ときたのかしら?あら、セルゲイ?髪を切ったのね、素敵よ。」
メアリーがセルゲイの首に腕をまわす。
「メアリーこそ今日も美しいね。」
二人がキスをした。なんなんだ?
「あら、ミハイルもいるの?珍しいわね。」
あ、ミハイルとメアリーは確かはとこなんだっけ?
「…」
ユーラは無言だ。
「いけないわ、セルゲイ。こんな子を誘っちゃ。平気で人のものをとっておきながら男遊びする悪い子よ。」
メアリーがセルゲイに抱きつく。
「ユーラ…私バカとか阿呆とか言われるのは慣れてるけど悪い子って言われたのは初めてで新鮮だよ。」
「まぁ、良い子でもないんじゃない?」
「確かに。火遊びや夜遊びの常習だしなぁ。」
「すぐ人について行くしね。好奇心で。確信犯でしょ。」
「…あなた、私をバカにしてるの?」
「え?!」
「あなたみたいな人はフリッツに相応しくないわ。早くフリッツも気付けばいいのよ。色気のない身体して男好きのあばずれ女だって。」
「色気がないのは否定しないけど私は男好きじゃないよ?どっちかと言えば綺麗な女性の方が興味あるし…。」
「リネア…」
ユーラが顔を背けた…。今にも吹き出しそうだ。
「気持ち悪い子ね!こんな子のどこが良かったのかしら?フリッツも騙されるならもう少しマシなのにしてほしかったわ。」
「ごめんなさい…。」
「ブッ…」
ユーラがついにお腹を抱えて笑いだした。
「ミハイル?何がおかしいのよ?!」
メアリーが顔を真っ赤にして怒る。
「いや、君よくそんな性格を隠してフリッツをベッドに連れ込めたね。彼、その時酒か薬でも入ってたのかな…。」
「失礼ね!ああ。…そういう事。あなたもこのおちびちゃんが気に入っているのね?」
「そうだね。」
「じゃあ、とっととしちゃいなさいよ。そしたらフリッツも目が冷めるでしょ。」
今さらっと凄いこと言ったなこの人…。
「そういうのは私がいない所で言わないと意味がないんじゃない?」
ユーラが僕の言葉を聞いてさらに笑いだす。
「失礼な人たちね!不愉快よ!帰るわ!!」
「…あ、じゃあ私が帰ります。」
「じゃあ、私も。」
「セルゲイは帰らないわよね?私の見方よね?」
「はー…。今日は三人で楽しみたかったのに。」
「私とにしなさいよ。」
メアリーがセルゲイに抱きついた。
「じゃあ、兄上、リネア、また…。」
なんとなくセルゲイに申し訳なく思ってしまった。
帰り道、僕たちは暫く無言だった。
足音が響く。夜風が寒くなってきた。
「なんでフリッツはあんな変わった人としちゃったんだろう?妹みたいだって言ってたけど…まったく私のタイプじゃないし理解できない。」
「まぁ、情が移ったか、その場の流れじゃない?」
「流れ」
「好きじゃなくてもできるし。」
「そんなものかなぁ。私にはまだ分からないなぁ。」
「リネアは12歳で性別が変わっちゃったから、男の身体についてはよく分からないかもしれないね。」
「そうかも。すべて中途半端なんだよね。」
「それが君の魅力じゃない?」
「…ありがとう、ユーラ。」
ユーラが僕の手を繋いだ。
「流されてみる?私と」
「…結構です。まだ、そういうのはいいので。」
「フリッツが可哀想…。」
そうなの?
「…それにしても今日はいろいろあったな。セルゲイとも久しぶりに話をしたし、思ったより普通の人間ぽい所もあるんだね。」
「それでも…」
「ん?」
「彼と二人だけであっちゃ駄目だよ。彼を信用したら行けない。絶対に。」
「課題の時はスクールの中で会うようにするね。」
「その方がいい。」
つぎの日、セルゲイは髪を整えてコンタクトをして来た。
ノーマークだったはずの彼が一気に令嬢達に囲まれた。
「ロマノ君、素敵!」
「綺麗な瞳ね」
「…彼女いるのかしら?」
ルイと僕はそれを横目でみていた。
「…また犠牲者がでそうだね。」
「うーん、私にも責任があるかなぁ。」
「なんで?」
「髪を切らせたの私だし。」
「どういう事?」
僕は昨日起こった話をする。
「リネア…夜遊びは程々にね。」
ルイがため息をついた。
「そう言えば、メアリーに会ったよ、クラブで。セルゲイと親しそうだった。」
「他にも誰かいた?」
「暗くて良くわからなかったよ。」
「そう…。本当に気をつけてね。」




