クラブに入りたい
僕とミーシャとルイはあのクルーズ以来一緒に行動するようになった。
「クラブ?」
「そう、クラブ。入ろうと思って…。ルイは何か入ってないの?」
「ゴルフとかテニスとか去年は少しやったけど、ずっと同じ所に所属するとか苦手なんだ。」
「そっかぁ…。何かしてみたいと思うんだけど何がいいか分からなくて。」
「何に興味があるのよ?スポーツ?」
「運動も好きだけど、料理や絵を描いたりも好きだし、音楽も興味あるし…。」
「つまりやりたいことが多すぎて困っていると。」
「そうなんだよね…。」
「じゃあ、イベントサークルに入ってみたら?」
「ルイ、何それ?」
「キャンプやスキーに行ったりあちこち遊びに行くんだ。」
「何それ、楽しそう。」
「いろいろな人に会えるしね。体験に行ってみたら?」
僕はルイの言う通りイベントサークルをのぞいてみることにした。一人で行きにくいと言ったらルイがついてきてくれた。
「あら、リネア。体験の予約に来てくれたの?」
「フリーダ!あれ?エマも入ってるの?」
「今必死でロマノ君を勧誘中なの。」
「ユーラを?」
「きちんとしたクラブに所属すると勉強が忙しい時とか困るじゃない?だから予定があわせられて行きたいイベントの時だけ行けるからオススメなのよ。リネアがロマノ君に頼んでくれる?」
「と言われても…。ユーラがそういうのに所属するとは思えないし。」
「さっきから断っていたんだけど…リネアは入るの?」
「とりあえずのぞいてみた。エマ、体験て何するの?」
「古城にハイキングよ!来週の土曜日に。」
「行く!ルイはどうする?」
「んー、リネアが行くなら行こうかな?」
「じゃあ私も行こうかな。」
「えっ?ユーラがハイキングに?…ブッ!…似合わない。」
僕はユーラのハイキング姿を想像して吹き出した。
「どういう意味?」
「だって服装とか…ハイキングの服装とか似合わなさそうじゃない?」
「リネア…覚えてなよ。」
ユーラが僕の頬をつねった。
ハイキング当日、ユーラは待ち合わせ場所に時間通り来た。
黒を基調にまとめたコーディネートでとても格好いい。
体験に来た令嬢が彼をみてうっとりしていた…。
「笑ってごめん…予想と違った。」
「君は私がチロリアンハットでも被ってくるかと思った訳?」
また頬をつねられた。
「…ごめんなさい。あと、チェックのシャツと、ハーフパンツを想像してました。」
「私が自分に似合わない服装をわざわざ選んで来ると思う?」
「ごめん…ブッ、想像したらまた笑えてきた。」
「…あの二人入ってくれないかしら?ロマノ君が入ってくれたら入部人数が増えて予算も増えるわ。」
「リネア次第よね。」
「エマ、なんとかリネアを勧誘して」
「がんばるわ。」
集合場所から古城のハイキングルートに入るまではバスを使う。僕の隣にユーラが座る。
「…ユーラ、せっかくだから他の人と座ったら?私はルイを誘ったのに。」
「君は私が知らない人と座ると思う?君のクラスメートはすでに他の女性と楽しそうにしてるじゃないか。」
ルイがいつの間にかフリーダの隣に座っている。
「せっかく知らない人と知り合う為に来たのにいつもいる人とじゃ意味ないよ。」
「君は重ね重ね失礼な人だ。君くらいだよ。私にそんな冷たい事を言う人は。」
ユーラが僕の手を握る。
「もー、すぐそういう事するんだから。」
僕は手を振りほどくと今度は肩にもたれかかってくる。
「ユーラ?もー!」
「疲れてるから寝る。ついたら起こして。」
「はいはい。」
僕は仕方なくそのまま窓の外の景色を眺めた。
バスに乗るなんて小さい頃行った遠足以来だ。
スモーランドではある一定の資産を持つ人達は環境に配慮して馬車に乗る事が義務づけられている。だからこんなふうにたくさんの人と同じ乗り物に乗るなんて久しぶりですごくワクワクしてきた!
「あら、リネア、ロマノくんは…」
「しー…、寝てる。」
僕は人差し指を口にあてた。
「リネア、あなたみんなに羨ましがられるわよ。」
「なんで?」
「ロマノ君、私のゼミにいるんだけどすごく人気なの。超絶美形なのに、あまり人と話さないからそれがまたミステリアスでいいって言われているわ。」
「えっ?エマのゼミに?いいなぁ。私も建築の勉強したい。」
「遊びに来なさいよ。」
「行く行くー!」
「エマ、…彼女はどなた?」
「スモーランドから留学してきたリネアよ。私の友人なの」
友人…嬉しいな。
「リネア、こちらは同じゼミのルドルフよ。」
「よろしくリネア」
「初めてまして。もしかしてロマーナ王国から来たんですか?」
「そうだよ。よく分かったね。」
「うわー!!いいなぁ!!」
「リネア…しーっ。」
「…ロマノ君は君の彼?」
「違います。友達です。」
「懐かれてるね。クラスではエマとくらいしか話さないんだよ。」
「へぇ。」
ユーラが僕にしがみついてきた。
起こすと面倒だからそのままにしておく。
「それよりロマーナ王国のどちらからいらっしゃったんですか?」
「…本当に彼じゃないの?君、慣れてない?」
「いつもこんな感じなので気にしないでください。そんなことより、どちらからですか?私、すごく興味があって…」
ユーラがさらに強くしがみついてきた。
「…ユーラ、うっとおしいな。起きてるなら離れてよ。」
「…」
「もー、仕方ないなぁ。」
僕はユーラの髪の毛を三つ編みにして遊び始めた。
「リネア…あなたくらいよ、ロマノ君にそんな事ができるの…。」




