8刀
作者 遠井moka
バシン!!
竹刀が混じりあう音が響きあう、夏風は面食らい一歩足を後退させる。
「なかなかでござる」
「不意討ちなんて卑怯な真似を・・・・てか、なにその格好」
北欧はケラケラと笑い、不意討ち相手の顔をまじまじと見る余裕まである。耳に入れてあったイヤホンは取れ地面に転がり落ちている。竹刀袋は秋風に舞い北欧の足元にゆらゆらと落ちている。二人の間に距離は出来たが、前進すれば面を狙えるそんな位置にいる。
「誰だか知らないけど、この俺に面つきしようなんて怖いもの知らずな人だね」
薄明かりに映る北欧は卑しい笑いを浮かべている。権力者が身内にいる、格差など平等なこの現代でも力を持つ相手の心情など、同じと言うことだろうか。
「北欧殿は、そうやって圧力をかけているのだな。拙者通りすがりの侍でござる!!」
黒いものを取り上げ素顔を見せる。ちょんまげ姿の侍に動揺すらしないだと?
「みんな、そうさ。不意あれば狙い打ちしてくる。俺に手負いさせようと必死なんだ・・・無意味だってわからせてあげるよ」
夏風の竹刀が宙を舞う、北欧から降り放たれる竹刀に太刀打ちできるものは、腰に差してある刀だけだ。
「ぐぅっつ!!」
今度は夏風が不意討ちされた側に変わる。面を付きに来たと思われた竹刀が真っ直ぐに胴へと向けられた。よろよろと倒れる夏風の身体を支えたのは、上野少年だった。
「んで・・・なんで勝手なことしたんだよ!!」
責められているのにそんな感じがしないのは、くしゃくしゃの泣きっ面の少年に言われているから。