6刀
作者 遠井moka
北欧ムサシの写真を夏風に見せてくれた上野少年の表情は暗い。夏風が思う北欧の印象は好印象だった。高身長でなかなかの男前なので、いじめられていると聞かされなければ、首を捻っていたことだろう。
「今日も一方的にやられたよ」
居候生活二日目。上野夫婦は夏風を受け入れてくれた。母君との初対面の出会いかたからして追い出されるかと思っていたのだが・・・・
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『こちら夏風さん。僕の師匠で剣術を教えてほしいから、しばらく夏風さんを家に泊めてくれないかな?』
『悟志の師匠ねぇ・・・真面目そうなかただけど、見た目から入るタイプね』
母君の視線が上下に動き、一点を見つめる。夏風の顔をまじまじ見たあと、散乱物に視線を向け、腕組みをする。空気で悟った二人は竹刀を仕舞い、散乱したものを片付ける。
『ただいま』
片付け終え母君の手伝いをし、二時間ほどたった頃に父君が帰宅する。上野少年は部屋に籠り勉学中、またまた気まずい初対面となったのだが。
『夏風さん、悟志をよろしくお願いします』
深々と頭を下げあいながら、上野家の居候が認められた。事の詳細は連絡ずみらしく父君と杯を交わしあいながら、北欧家との話を永遠と聞かされたのである。
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上野少年が留守の間、剣道部のDVDを何度も再生し北欧の戦術を確認。母君に頼まれている掃除や洗濯たたみを合間に入れながら、上野少年が北欧に勝つ術を考えていた。
「浮かばぬのだ・・・・申し訳ない!!」
カーペットに額を擦り合わせて上野少年の返答を待つ。
「仕方ないよ・・・めっちゃ強いんだから」
そう、北欧ムサシはめっちゃ強いのである。