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死霊の棲む廃園【夏のホラー2017】  作者: 江渡由太郎 原案:J・みきんど
第二章 ドリームキャッスル
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1 切り裂きピエロの遊戯 壱

 人々が集まり賑わいを見せていた当時、遊園地の中心部にある中世の城を模倣した純白の建造物があった。


 今は廃墟と化したこの遊園地だか、その存在感は尚も健在である。


 夜空に輝く赤銅色の満月が、この城をより悪趣味な魔の巣窟へと脚色した。


 瀬戸流星は友人たちと肝試しのために、裏野ドリームランドまで足を運んだのだった。


 出雲崎莉菜が今回の心霊ツアーを言い出したのだが、流星は最初から乗り気ではなかった。


 このような廃屋には永遠に沈黙を誓った亡者が集い、亡者たちな巣窟となる。


 そこへ興味本意で生ある人間が足を踏み入れていい場所ではないのだ。


 流星が渋々この肝試しに参加するのを承諾したのは、蕨野託生が行くからである。


 流星にとって託生は幼馴染みであり一番の親友である。


 託生にもしもの事がないように流星は着いてきたのだった。


 この裏野ドリームランドは山林を伐採した土地にあり、ここまで来るには出雲崎莉菜の年の離れた兄で


 ある大学生の出雲崎星矢の運転でここまで来たのだ。


 夜の遊園地に到着すると車を荒れた果てた駐車場に駐車した。


 以前は綺麗に舗装されていたであろうアスファルトは無惨な姿である。


 雑草が舗装を食い破り、背丈ほどの高さの草が生い茂っていた。


 その草を掻き分けて遊園地の入場口までたどり着いた。


 そのまま入場口のバリケードを乗り越えて中へと侵入し、アトラクションを順次巡る肝試しを始めたのだ。


 事前に色々な噂や情報を集めてきた佐野幹博は、遊園地のドリームキャッスルにまつわる怖い話を披露し始めた。


 裏野ドリームキャッスルの地下には隠された秘密の部屋があるのだという。


 その部屋へ連れて行かれた人間は生きてはそこから決して出られない。


 その地下にある秘密の部屋は”拷問部屋”であると噂されていると、幹博は勿体振った言い回しで言った。


「何で、そこが拷問部屋だと噂されているんだ?」


 流星の問いに、幹博は待ってましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべた。


 この裏野ドリームランドが賑わっていた頃から、来客の人間が居なくなる事件が頻繁にあった。


 それが遊園地の園内での失踪なのか、帰路の途中の何処かで何かの事件に巻き込まれたのか分からないまま月日が流れた。


 ただ、夜間の閉館している遊園地から人間の叫び声が聞こえるなどの当時から夜警の警備員の間では噂はあった。


 だが、市街地から離れた山林を切り開いて建設された遊園地であったため、烏や獣の鳴き声を聞き間違えたのではないかとされた。


 遊園地の人気が失われてもうすぐ廃園間近と言われている頃に、一人の女子大学生がその日に失踪した。


 その夜、その女子大生は一糸纏わぬ姿で全身血塗れのまま園内を徘徊していた。


 それを見つけたら夜警の警備員は、女子大生の傍へ駆け寄るとあまりの悲惨な姿に絶句し口に加えていた煙草が落ちて女子大生の体に火の粉が舞った。


 その瞬間、女子大生は全身を炎に包まれて、園内をそのまま走り出して断末魔をあげながら絶命した。


「何で全身血塗れだったの? 拷問されたの?」


 莉菜は怖い話を聞きたくて目を輝かせていた。


「なかったんだよ」


「なかったって何が?」


「皮が」


 幹博の言葉の意味が直ぐにはできずにいた莉菜だったが、暫くして顔が真っ青になった。


「全身の皮が綺麗に剥ぎ取られて、血塗れだったんだ」


 幹博はもう一度念を押すようにそう繰り返した。


「でもどうして煙草の火が燃え移ったんだろう?」


 託生は遠慮がちに幹博へ尋ねた。


「エタノールというアルコール消毒液を全身に浴びていたという噂だよ」


 夜警の警備員が女子大生に近づいた時に、アルコールの消毒液みたいな匂いがしたと情報にはあったと幹博は付け加えた。


 全身の皮を剥ぎ取られてアルコール消毒液をかけられたと聞いただけでも、全身に激痛が走りそうな恐怖を流星は感じた。


「でも何で皮を剥ぎ取るんだ?」


「拷問だからじゃないか?」


 流星の問いに答えた幹博の言葉に呆れてしまった。


「拷問目的なら苦痛を与えるあらゆる残虐で無慈悲な行為を、ありとあらゆる手段を用いて行うはずだろう?」


「この拷問部屋ではいったい何が行われていたのか興味あるなら、その部屋を探しに行きましょうよ!」


 莉菜は流星の細い腕を引いて中へと入るように促した。


 ドリームキャッスルの入口はここへ来た人が、その記念にスプレーで落書きしたものが幾つもある。


 耳をすましていると、微かに悲鳴が一瞬聞こえた気がしたが、流星以外は気づいていなかった。


「気のせいだよな……」


 この遊園地で実際に焼身自殺のような事故はあったようだが、それを皆が面白おかしく脚色して怖い話を作り上げているだけだと思いたかった。


 怖い話は次々と広まりまるでウィルスが増殖し拡散されるように、噂が広まって人々の恐怖心を求める欲求を満たすのだった。


 噂が真実か否かは関係なく話し手と聞き手がお互いに、恐怖という快感に似た感情を共有さえできればいいのだった。


 流星は自分たちもそういった人間の仲間なのだとつくづく痛感させられたのだった。

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