第百六十一章 マリ、黒幕に助けられる
陽子は、やくざ姿でコスモスの力を借りようと相談しました。コスモスも人をからかうのが大好きなので協力する事にしました。
コスモスがマリをからかおうとしていると、マリが海坊主に狙われている事に気付きました。
陽子が、「コスモスさん、マリさんを海坊主から守って!」とコスモスに助けを求めました。
陽子の上着に化けていたコスモスが、電撃で海坊主のメンバーを攻撃すると驚いたマリは、「そこにいるのは誰!」と確認しました。
やくざ姿の陽子がマリの前に現れて、「私がいたので命拾いしましたね。」と馬鹿にしたような笑いをしました。
マリは、「お前は、私が先日取り逃がした人身売買グループの黒幕ではないか!お前も私を狙っていたのか!」と陽子に挑戦しようと身構えました。
陽子は、「伝言したように、あなたに怪我をさせるつもりはないわよ。無駄話せずに早く警察に通報しないと、あなたを狙っていた人達は気絶しているだけよ。」と現状を把握するように促しました。
マリは、警察に通報してから、「助けてくれだなんて一言も頼んでいないわよ。余計な事をしないで!私も実戦経験のある軍人よ。あのくらい私一人で充分対応可能です。」と陽子に助けられてプライドが傷ついたマリは強気に出ました。
陽子は、「妊婦さんに、戦闘は無理ですよ。今、あなたが戦えば流産するかもしれないわよ。」とマリに無理しないように忠告しました。
マリは、「大きなお世話よ!そんな事は、お前に関係ない!あの怪我で医療機関へも行かずに死ななかっただなんて、悪運が強いのね。所で何故、そこにいたのよ。偶然にしては話ができ過ぎているわ。私を尾行していたのね!」と何故尾行していたのか確認しました
陽子は、「実戦経験のある兵士が、尾行されていたかどうかも解らないの?だからサバイバルゲームでは私に敵わなかったのよ。」と指摘しました。
マリは、「そんな事は関係ないだろう。質問に答えて!何しに来たの!」と再度確認しました。
陽子は、「誤解を解きに来たのよ。あなたの叔父さんは私の事は何も知らないわよ。仲直りすればどうなの?佳子さんも心配していたわよ。」とここに来た理由を説明しました。
マリは、「大きなお世話よ。あなたに、指図される覚えはないわよ!お前は、佳子や陽子さんとどういう関係なのよ!佳子はあなたを逮捕できなかったと言っていたが、何故なの?」と陽子の正体を知ろうとしました。
陽子は、「どういう関係って、私の正体のヒントを三つも教えてあげたでしょう?まだ解らないの?出産して、子供のオムツを替えながら、ゆっくりと考えなさい。それと佳子が私を逮捕できなかったのは、私を逮捕すると困る人がいるからよ。そこに隠れている、あなたの上官も困る人の一人よ。」と返答しました。
パトカーのサイレンが聞こえて来た為に陽子は、「私は退散するわ。」と去って行こうとしました。
マリは、「待て!」と追い駆けようとしましたが、上官が飛び出して、「マリ、辞めろ!お前に敵う相手じゃない。」と止めました。
上官は、「しかし何故私が隠れている事が解るのだ?彼女がマリを尾行していた事も海坊主がマリを狙っていた事も私は気付かなかった。さすがだな。」と感心していました。
マリは、「上官、今の武器を見た事がありますか?」と見た事のない武器だった為に上官なら何か知っているかもしれないと判断して確認しました。
上官は、「いや、ない。SF映画に出て来る光線銃のような直線ではなく、ギザギザで不規則に進んでいた。丸でカミナリのようでしたが、数名の目標に確実に命中していた。カミナリの原理とも違うようだったが、私にも解らない。矢張り彼女は只者ではないな。」と陽子は只者ではないと感じていました。
マリは、「佳子が彼女は魔女だと言っていましたが、それと何か関係があるのですか?」と上官から情報を引き出そうとしていました。
上官は、「魔女か。確かに彼女は昔からそう呼ばれていたな。だが今の攻撃と魔女とは関係ない。」と返答しました。
マリは、「魔女と呼ばれていた人がいたのですか?」と予想外の上官の返答に驚きました。
上官は、「うっかりと口が滑ってしまったが、もう彼女には手出しするな。彼女がマリに正体のヒントを三つ教えたと言っていたが、どういう事だ?」とどんなヒントを与えたのか確認しました。
マリは、先日の話をして上官に手紙を見せました。
上官は手紙を見ながら、「確かに、彼女の筆跡だな。こんなヒントを貰って未だ解らないのか。マリは、からかわれているだけだ。マリの手に負える相手じゃない。もうこの件から手を引け。」と再度指示しました。
マリは、「このまま黙っていられないわよ。彼女が逮捕されると上官は何故困るのですか?」と上官と黒幕の関係を知ろうとしました。
上官は、「この件に、これ以上関わるな。」と断言を避けました。
マリはその後も、色々と上官を問い詰めました。
上官は、「マリ、おまえ妊娠しているのか?もう、この件は忘れて出産準備をしろ!これは命令だ!子供や箱入り娘じゃないから、送っていかなくても一人で帰れるな。」と上官は去って行きました。
陽子はコスモスのUFOから、その様子を見ていて、「上官は、私の診察の時に会議があるような事を仰っていたので、矢張り送って行かなかったようね。海坊主は、まだマリさんを狙っている可能性がある為に、コスモスさん、マリさんを尾行して。」とマリを護衛するように依頼しました。
陽子は、マリが帰宅するまで特に何もなく、途中も透視で確認していましたが、海坊主を発見できませんでしたので、思い過ごしだったと判断して、陽子達も帰りました。
マリは帰宅後、佳子に連絡して、「佳子、今日、例の黒幕が私の前に現れたのですが、その時、海坊主が私を狙っていて、見た事もない凄い武器で攻撃したのよ。上官も見た事がないと仰っていました。アメリカ軍も知らない武器を使う彼女は何者なのよ!」と黒幕の正体を知ろうとして問い詰めました。
佳子は、“陽子さん、何とか星人の力を借りたわね。海坊主が宇宙人の科学力を手に入れた事が解るとパニックになる可能性がある為に、幾らマリでも言えないわね。しかしマリが銃撃した後、陽子は暫く松葉杖だったのに気付かないのかしら?”とマリの鈍感さに驚いていました。
佳子は、「だから彼女は魔女だといったでしょう。マリの敵う相手じゃないわよ。その正体は知らない方が良いと思うわよ。」と諦めるように促しました。
問い詰めても佳子は教えてくれなかった為に、マリは仕方なく出産準備を始めて約一年後、元気な男の子を出産しました。
その後、マリは親子三人で幸せな結婚生活を送っていました。その後二人目もできて元気な女の子を出産し、親子四人で暮らしていました。ただ普通と違うのは、趣味が大空の散歩だという事です。
マリが始めて操縦桿を握ったのは八歳の時でしたので、マリの子供達にも八歳で操縦桿を握らせました。ただ違うのは、マリはセスナ機だったのに対して、マリの子供達は戦略爆撃機の操縦桿でした。
ある程度操縦ができるようになれば、マリは上官に、子供を機械獣に対抗できるパイロットに育てる事を希望していると次郎から聞いたと伝え、今の自家用機では、アクロバット飛行の指導ができない為に、もっと小型のジェット機を用意して頂きたいと伝えました。
上官は、「日本の民間人がジェット戦闘機を所有する事は都合が悪い為に、小型のビジネス用ジェット機を秘密兵器扱いで費用を捻出して用意する。ジェット戦闘機については、離着陸可能な無人島を見付けておいたので、日を決めて年に数回、その島で会おう。」と伝えました。
そして、マリは通常の操縦以外にアクロバット飛行も徹底的に仕込みました。それは単なる曲芸飛行だけではなく、実戦にも役に立つものでした。
偶にセスナ機もチャーターし、プロペラ機の指導もしました。
霧島外科医はそんなマリを見て、何故そこまで徹底的に指導するのか不信に感じ、子供達が不在の時にマリに確認しました。
マリは、上官からの依頼を説明すると、危険な事に捲込みたくない為に必ず反対すると判断して、その事は伏せて、「二人共、凄い才能があるのよ。私は、その才能を伸ばしてやりたいのよ。それに二人共、航空機が好きでそれを望んでいるのよ。私は途中までしか指導できませんが、私のできる限りの事をしてやりたいのよ。」と説明しました。
霧島外科医は、「えっ?途中まで?何故最後まで指導しないのだ?」と不思議そうでした。
マリは、「今、凄い才能だと言ったでしょう?私が追越されるのは、時間の問題よ。」と返答しました。
霧島外科医は驚いて、「えっ?二人は君以上のパイロットになるのか?信じられないな。」と予想外のマリの説明に驚いていました。
マリは、「数年後、結果は出ていると思います。信じられなかったら、それまで待って。」と返答しました。
一方テレジア星の衛星に帰っていた菊子は、誰も住んでいないテレジア星の衛星で、同じ境遇のテレジア星人もなく、友達もいない淋しい生活を紛らわす為に、亡くなった親友の芹沢陽子の立体映像を出力して、「陽子、あなたは、何故同じ事しか喋らないの?」と泣きながら話し掛けたり、食事の時も、「陽子、あなたはいつも同じものばかり食べているのね?」と喋りながら食事をしたり、宇宙旅行に出掛けたりしていました。
宇宙旅行の時も立体映像を出力して、「陽子、今日は何処に行こうか?」などと話し掛けていました。
菊子は、「最初は母ちゃんも偶に来ていたが、最近全然来なくなり、挙句の果てに一人で宇宙旅行に行ってしまって・・・・。せめて私を連れて行ってくれれば、こんなに淋しい思いをせずに済むものを。宇宙旅行にいつまで行っているのよ。戦闘艦だと宇宙旅行だと言っても遠くまで行けないし。」と独り言でブツブツ呟いていました。
次回投稿予定日は、1月26日です。