第百六十章 マリ、陽子に復讐される
ある日、佳子とマリは近所に住む敷島さんから、サバイバルの日時が決まったと連絡があった為に佳子が陽子にサバイバルの日時を連絡しました。
陽子は、「その日は休みですので、参加させて頂きます。私は子供の頃に事故で銃が持てなくなり、いつも日本刀ですが、今回は実弾ではない為に頑張ってみます。」とマリと勝負しようとしていました。
佳子は、「そんな事は初耳よ。事故ってどんな事故?」と陽子の過去を知ろうとしていました。
陽子は、”まさか佳子の父親を殺したとも言えないわね。“と困ってどう説明しようかと考えていました。
陽子は、「子供の頃に銃で人が撃たれて死ぬ所を見たのよ。子供の私には精神的ショックが大きく、それ以来よ。」とこれだと嘘にならないわよねと思っていました。
佳子もなんとかスケジュールを調整し、マリは主婦業なので時間が取れ、マリ・佳子・陽子は三人共参加する事になりました。
サバイバルに参加する人は、到着後直ぐに同好会で準備した簡易形の更衣室で、決められた戦闘服にヘルメットを装着した為に、マリは陽子に気付かず、“佳子が連れて来た女性は誰だろう?陽子さんは、やくざの幹部だと佳子が言っていましたが、まさかね。世界一の名医に銃の練習をしている時間などないわよね。”とマリは佳子が連れてきた女性を捜していました。
同好会の説明で、ヘルメットの防風は必ず下ろしておくようにと説明があり、「下ろさずに、ペイントが口に当たり病気になったり、目に当たり失明したり、その他それが原因の不慮の事故は、同好会では一切責任を取りませんので、防風を上げる時には、個人の責任で上げて下さい。皆さんから何かありますか?」と最後に確認しました。
陽子が、「もし怪我や失明をした時には連絡下さい。世界一の名医である大日本医療大学の梅沢陽子先生を紹介しますので。」と伝えました。
佳子は小さな声で、「普通、自分で世界一の名医って言う?」と陽子に耳打ちしました。
陽子は、「今日は、外科医ではなく、やくざの姉さんとして来たのでね。」と返答しました。
マリは、“陽子さんの事を知っているようなので、あの女性は、やくざ関係の知り合いなのかしら?”と思っていました。
サバイバルは、全員本部との連絡用にイヤホーン付き携帯無線機を渡され、電波が届く範囲はパイロットランプが点灯する為に、その範囲内から出ないようにと忠告されました。
携帯無線機に付属している時計の時間で、約五分後にゲーム開始のブザーを鳴らします。と宣言したので、全員四方八方へと散らばって行きました。
ゲームが開始されると、マリは実戦経験がある為に、次々と相手を倒し、陽子も透視力で次々と相手を倒して、マリ・陽子・佳子が最後まで残り、最終的にはマリと陽子の一機打ちになりました。
その段階で本部から、「現在残っているのは二組だけです。どちらも頑張って下さい。」と連絡がありました。
陽子は透視力を使い戦った為に、マリはペアーの敷島さんに、「佳子が連れて来た女性の事を何か聞いていますか?あれは、実戦経験豊富なプロよ。超一流だわ。何者なの?」と確認しました。
敷島さんは、「えっ!?そんなに凄いの?佳子さんからは、こういう時には、頼りになる女性としか聞いていません。」とマリと雑談していました。
ペアーの相手を狙うと簡単に終わらせる事ができるのですが、陽子はマリに仕返しがしたくて、マリを狙い、マリも実戦ではないので実戦経験のあるプロの軍人のプライドを懸けて陽子を狙いました。
陽子は、“さすが実戦経験のあるプロの軍人だけあって手強いわね。”と思いながら戦いました。
マリは、“アメリカ陸軍にもこれだけ手強い軍人はいないわ。本当に何者なのよ。只のやくざだとは思えないわ。”と思いながら戦いました。
マリが陽子を見失った時に、囮として小石を投げましたが、陽子は透視力で小石だと気付き、マリの背後から構えて、「私がそんな手に引っ掛かると思うの?」と声を掛けました。
マリが、「えっ!?」と思った瞬間、振り返る間もなく陽子に銃撃されて結局、陽子が優勝しました。
納得のいかないマリは佳子に、その女性が誰なのか確認しました。
「先日も言ったように、知らない方が良いと思いますよ。」と教えて貰えませんでした。
マリは、“確か、陽子さんの名前を出していた為に、陽子さんが、何か知っているかもしれない。”と考えて病院を訪ねて、陽子に確認しました。
マリは、昼休みの時間に、他の職員に聞こえないように小さな声で、「佳子から、聞きましたが、あなた、やくざの幹部らしいわね。先日のサバイバルゲームに参加した女性は、陽子先生の名前を出していましたが、やくざ関係の知合いなのですか?」とその女性の事を調べていました。
陽子は、「それを聞いてどうするの?」等と、誤魔化していました。
あまりしつこく聞かれた為に陽子は、「仕方ないわね。私は争い事が嫌いなので黙っていましたが、実は彼女から伝言があります。“中近東のXX地区では、大変お世話になりました。太ももを自動小銃で撃ち抜かれた仕返しができました。またお会いする事もあるでしょうが、その時も、私の仕返しに気を付けて下さいね。今回の仕返しでも解ったように、殺したり怪我をさせたりしませんので安心して下さい。”と言っていました。」と返答しました。
マリは驚き、「一寸、陽子先生!それって、私が取り逃がした人身売買グループの黒幕の事ですか?黒幕が誰なのか知っているのですか?誰なのですか?」と問い詰めました。
陽子は、「私は争い事が嫌いだと言ったでしょう。またお会いする事もあると言っていたでしょう?案外近くにいるのではないですか?それとマリさん、あなた妊娠しているでしょう?名医の目は誤魔化せませんよ。まだマリさん自身、気付いていないのでしたら、早く産婦人科に行って下さい。彼女にも、この事を伝えて、暫くマリさんには悪戯しないように伝えておきますので、安心して出産して下さいね。」と助言しました。
マリは、陽子も黒幕が誰なのか教えてくれなかった為に、諦めて帰宅すると、カバンの中に見なれない包みが入っていた為に、開けると、自動小銃の弾丸と、手紙が入っていました。
その手紙には、“先日は中近東のXX地区でお世話になりました。あの時の弾丸をお返ししておきます。私はあなたの近くにいますが、気付きませんか?私の事を捜しているようですので、手掛かりを三つ教えてあげます。一つは、あなたに撃たれた太ももにある自動小銃の傷跡です。もう一つはこの手紙です。この手紙は私の自筆です。筆跡から、私を特定できますか?最後のヒントは指紋です。この手紙には複数の人の指紋があります。その中の一つは私の指紋です。私には前科はありませんので、警察には私の指紋は登録されていません。マリさんが私を尋ねて来る日を楽しみに待っています。”と書かれていました。
マリはその筆跡を何処かで見た覚えがありましたが、どうしても思い出せませんでした。
マリが佳子を見舞いに行った時に、陽子がメモを看護師に渡していましたが、まさかその時に見た筆跡だとは夢にも思いませんでした。
指紋を調べるのは、佳子や弟の修に頼んでも、“先日も言ったようにマリは知らない方が良いと思うわよ。“と断られると思い、自衛隊の知人を通じ警察で調べて貰いました。
確かに複数人数の指紋が検出されましたが、どの指紋にも前科はなく、一人も特定できませんでした。
筆跡を、いくら思い出そうとしても思い出せませんでしたので、確か上官は黒幕に気付いたような事を仰っていた為に、次郎の事を思い出して、まだ私に隠している事があるのかと思い、次郎の携帯に連絡しました。
次郎はマリから着信があった為に、“やっと許してくれたか。“と思いながら電話に出て話を聞くと、問い詰められました。
次郎は、「許してくれるのじゃないのか?犯罪に関係のある事は何も聞いてない。もう何も隠してない。信じてくれ。」と訴えました。
マリは、「そんな事は信じられないわ。陽子先生も佳子も上官も皆、知っているのよ。私だけが知らないのは、隠し子同様、今迄のパターンと同じじゃないですか?何故隠すのよ!私の近くにいる人だから?でも私の近くであれだけ実戦経験のある人は誰もいないわよ。白状しなさい!」と次郎の態度に切れました。
マリは次郎を問い詰めても白状しなかった為に、「馬鹿!」と怒り電話を切りました。
困った次郎は、佳子に事情を説明して、マリに、本当に知らない事を説明して欲しいと頼みました。
佳子は、「仕方ないわね。元を正せば、私が彼女をサバイバルゲームに連れて行った為に、私にも責任の一端はありそうですね。私が一肌脱ぎます。」と引き受けました。
次郎はホッとして、「宜しくお願いします。」と佳子に期待して電話を切りました。
佳子から事情を聞いた陽子は、「マリと叔父さんはそんな事になっていたの?病院でも叔父さんを見付ければ、会わないように隠れたりして、何か可笑しいと思っていました。でも、元を正せば、叔父さんが悪いのじゃないの?自業自得ね。叔父さんも、ばれても言訳せずに、その理由をはっきりと、マリに言えばよかったのよ。あのマリの性格じゃ、言訳ばかりしている叔父さんの顔を二度と見たくないので、隠れていたのかもしれませんね。仕方ない。これ以上拗れると、マリは叔父さんと同じ空気を吸うのも嫌になり、病院で叔父さんを見掛けると、息を止めて病院から出て行くかもしれませんので、助けてやるか。」と動く事を伝えました。
次回投稿予定日は、1月22日です。