第百八十四章 陽子、猪熊先輩から隠れる
マーガレットは、「幽霊は、この世に怨み事があり、出て来るのよね?この病院にかつて入院していた患者も、退院後は年老いて何れ亡くなります。この病院に入院中、看護師に冷たくされたと幽霊として出てきても不思議ではないですよね?私は今、柔道の選手だという事になっています。若い頃でないと現役は無理なので、そういう事になれば、廃院になる頃には私も選手を引退して、今度は看護師として、ここに就職するわよ。地球人とは体力が違うので、一日二十四時間働いても大丈夫よ。八時間勤務を日に三回できるので、三人の別人の看護師として働く事も可能よ。目的は患者に冷たい看護師が芹沢外科医院からいなくなる事なので、患者に冷たい看護師を改心させるか退職させる方法が他にあれば幽霊は出ないわよ。」と提案しました。
陽子の警備をしているコスモスが、「私は陽子さんがここで入院していた時に、看護師をしていた事があるので看護師は私も手伝うわ。私も三人の別人の看護師として就職するわ。」とマーガレットにつられて提案しました。
アヤメが、「先程から興味津々で聞いていたようだが、本当は看護師ではなく、幽霊の手伝いをしたいのだろう!」と指摘しました。
コスモスは、「それは母ちゃんでしょう。断られたからと言ってそんな事を言って。私が手伝うのは看護師だけです。」と説明して、“看護師をしながら地球人を驚かす程度を研究して、感覚を掴めば幽霊になろう。”と思っていました。
菊枝が、「確かに脳卒中の後遺症などで言語障害になり、意思表示が困難な患者や認知症でその発言に信頼性が全くない患者などに冷たい看護師がいる事は確かです。その看護師は私が気付いていないと思っているようですが、私は透視力で以前から気付いていました。なんとかしなければいけないと思いながら、そこまで手が回らなかったというのが本音です。しかし問題はもう一つあります。このような患者はお年寄りが多いのですが、偶に事故などで若い患者も、そのような状態になる事があります。女性看護師は男性患者を、男性看護師は、女性患者を性的に悪戯する看護師がいます。それは私の方で考えるので、暫く時間を下さい。」と提案しました。
マーガレットは、「解りました。しかし患者に性的悪戯をする看護師がいるのは本当ですか?今は偶々そのような若い患者がいなかったので気付きませんでした。皆さん忙しそうなので、急には無理だと思うので、半年待ちます。その頃には、私もここを出ていると思いますが、半年後透視力を駆使し、確認して患者に冷たい看護師や性的悪戯をする看護師がいれば、芹沢外科医院に幽霊が出ます。」とその提案に答えました。
陽子はミーティングで紹介されると後ろに隠れて、下を向いて、「梅沢です。よろしく。」と簡単に自己紹介を終わらせて直ぐに席を外しました。
マーガレットが意思波で、「あっ!陽子さん、猪熊監督から逃げた!」と指摘しました。
陽子は、「仕事があるのよ。投薬の時間だからよ。」と返答しました。
マーガレットは、「あれっ?陽子さんはこの医院では資格のない只のボランティアではなかったのですか?資格のない人が投薬するのですか?」と指摘しました。
陽子は、「人手不足だから、私が外科医だと知っている母の指示で私も手伝っています。多忙の中で急いで投薬すると、誤薬の可能性も出て来るのでね。薬の種類によっては、人命に関わる場合もあります。誤薬に関わらず医療ミスは人命に関わる事がありますので、それだけは避けようとしているのよ。」と返答しました。
菊枝は、「寺前さん、あなた方の更衣室での話を聞きましたよ。猪熊さん、あの子は恥ずかしがっているのですよ。高校時代、あなたに、ときめいた事があるそうです。だから自分の自己紹介が終わると直に席を外したのですよ。」と耳打ちしました。
猪熊先輩は、ピンと来ませんでした。まさか優秀な外科医がナースキャップ姿で看護師をしているとは考えられずに、年も違うようなので、同級生とは違い、“テレビでオリンピックに出場している所を見たのかな?それとも私の近所に住んでいた人なのかな?”などと色々考えていました。
陽子は意思波で菊枝に、「母ちゃん、だから違うっていったじゃないの。何も先輩にそんな事を言わなくてもいいじゃないの。先輩が私に注目すれば、私の事が先輩にばれるかもしれないでしょう!」と怒りました。
医院には、やくざは来ませんでしたが、マリが、“近所の子供達と戦争ごっこしていると子供が怪我をした。“と連れて来ました。
陽子は、マリさんの住所はこの近くではなかったと思いながら、診察申込書を見ながら、「この近くの方ではないようですが、何故近くの病院に行かなかったのですか?」と不思議そうでした。
マリは、「私は近所の子供達とよく遊びますが、今日は子供達と相談して違う場所に行こうとして、親の許可を得て、この近くで遊んでいたのよ。」と返答しました。
陽子は、「子供達に好かれているのですね。診察の結果、通院が必要であれば、どうされますか?」と確認しました。
マリは、「通院が必要であれば近くの病院に通院しますので、今日は応急手当だけお願いします。可能であれば、どのような治療をしたのか紹介状を書いて頂ければ助かります。」と返答しました。
陽子は、「紹介状の事は解りました。所で今日は保険証を持って来ていますか?」と子供の保険証は親が管理している事が多く、遊びに行くのに持たせないだろうと考えて確認しました。
マリは、「先程この子の親に連絡しましたので、保険証など必要なものを持って、今こちらに向かっています。」と返答しました。
陽子は、「この子には薬などに対するアレルギーとかはありませんか?」と確認しました。
マリは、「私もそこまでは知りませんので、親が来れば、直接聞いて下さい。」と返答しました。
その時マリは陽子を見て、見覚えがあった為に、「失礼ですが、以前あなたと何処かでお会いした事はありませんか?」と聞きました。
陽子は、“まずい、マリさんに声を掛けたのは失敗だったわ。“と焦って冷静を装い、「いえ、覚えがありません。他人の空似ではないですか?それか偶々同じ電車やバスに乗り合わせたとかではないですか?」と返答しました。
“まさか、以前自動小銃で撃たれた者ですとも言えないし、マリさんが思い出さない事を祈るしかないか。”と思っていました。
アヤメはタイムマシンで調べて誰が陽子を撃ったのか知っていた為に、「こいつが陽子を撃った奴か!」と呟いていました。
コスモスは、「えっ、そうだったの?こんな可愛い顔をしているのに、人は見かけによらないわね。」と驚いていました。
陽子は、「アヤメさんもコスモスさんも、マリさんは私の正体を知らないから、変な事しないでよ。それに謎の機械獣と戦えるパイロットはマリさんだけなのだから、地球にとって必要なパイロットなのよ。」とアヤメ達を説得しました。
結局マリは、陽子の事を思い出さずに、看護師でしたので、外科医だとも気付かずに帰ろうとした時、偶々玄関で寺前さんと会いました。
マリは、「あれっ?寺前さんは、ここでも看護師をしているのですか?副業は禁止されてないのですか?」と予想外の対面に驚いていました・
寺前さんは、「私は陽子先生の手伝いをしているだけで、給料は頂いていませんよ。だから副業ではなく、ボランティアです。仕事を持っている人でもボランティアはするでしょう?ここの院長先生は陽子先生のお母さんですよ。だから陽子先生も今日は、お母さんの手伝いをしているのよ。」と返答しました。
マリは、「えっ?何処かに陽子先生もいるのですか?」と確認しました。
寺前さんは、「えっ?気付きませんでしたか?髪型も違い度の入ってない眼鏡をしていたので気付きませんでしたか?先程マリさんと保険証や紹介状などの事で話をしていた看護師は陽子先生ですよ。」と返答しました。
マリは驚いて、“何処かで見覚えがあったが、陽子先生だったとはね。そう言われてみれば、確かにあの看護師は陽子先生だったわね。他人の空似だなんて、すっかり陽子先生に騙されたわ。”と思いながら帰って行きました。
芹沢外科医院の看護師の一人も変装した陽子のイメージを見て、見覚えがありましたが、思い出せませんでした。昼休みに、それとなく陽子に確認しました。
陽子は、「外を歩いている時に、見かけたのではないですか?私も色々な髪型をしますので・・」と説明しました。
内心、“まずいな何処かで、やくざ姿を見られていたのかな?”と思っていました。
次の日、その看護師は陽子の、その姿がやくざの幹部に酷似している事を思い出して菊枝に、「偶にボランティアに来ている梅沢さんですが、やくざの幹部に酷似しています。あの人は誰なのですか?大丈夫なのですか?」と確認しました。
菊枝は、「病院は人の生死に関わる仕事をしています。スタッフ同士が信頼し合わなければ、最悪患者の生死に関わる事もあります。私が選んだスタッフが信頼できないのでしたら、退職して頂いても結構ですよ。後はあなたの判断に任せます。」と説明して、陽子の事には触れませんでした。
次回投稿予定日は、4月27日です。




