第百五十八章 マリ、サバイバルに興奮する
敷島さんは、「次回のサバイバルゲームは、ゲーム専用の自動小銃に、ペンキのようなペイントを装填して、最後まで残ったチームが優勝というゲームです。女性会員でも不利にならないように、男女のペアーで参加する事になっています。先日の自治会での報告を聞いて、DVD鑑賞会で奥さんのDVDを拝見させて頂き、感動しました。奥さん、是非、私とペアーを組んで参加して頂けませんか?参加資格は、ペアーのどちらかが、同好会のメンバーである事です。」と依頼されました。
霧島外科医は、「マリ、家の中に閉じこもってばかりだと、気が滅入るだろう?偶には気分転換も必要だぞ。戦場のような実弾ではない為に、気軽に参加してみれば?」と勧めました。
敷島さんは、「奥さん、ご主人もこのように仰っておられるので、是非お願いできませんか。奥さんは、近所の子供達の戦争ごっこに誘われて参加しているではないですか。大人の戦争ごっこだと思い、お願いします。それと、他に自動小銃などの経験がある女性に知り合いは、居られませんか?今日、私と一緒に来た親友がペアーの相手を捜しています。」と依頼しました。
マリが横にいた佳子を指差しました。
佳子は敷島さんとその友達の視線が自分に向いている事に気付き確認すると、マリが自分を指差している事に気付きました。
佳子は驚いて、「えっ!?一寸待ってよ、私は自動小銃の経験どころか、持った事もないのよ。」と慌てていました。
マリは、「今の敷島さんの説明では、自動小銃などといっていましたでしょう?“など”とね。佳子は元刑事で、拳銃を撃った事あるじゃないの。山奥で、大勢のやくざに囲まれて銃撃戦したでしょう?もう忘れたの?」と佳子を推薦した理由を説明しました。
佳子は、「あの時、マリが私に拳銃の扱いは下手糞って言っていたじゃないの!」と反論しました。
マリは、「あの時は実弾だったので恐かったのでしょう?だって、拳銃を持っている佳子の腕は震えていたわよ。でも今回は実弾ではないので、大丈夫でしょう?拳銃の経験があるだけ、他の女性より有利じゃないの?それも只の射撃ではなく、銃撃戦の経験がね。それに佳子は、お母さんの会社を弟と二人で引き継いでいて、何かと気が滅入る事があるのではないですか?佳子こそ気晴らしが必要ではないの?」と助言しました。
佳子は敷島さんの親友から、「是非、私とペアーを組んで頂けませんか?」と頼まれました。
敷島さんから、「他にそのような女性に知人は居られませんか?」と聞かれました。
佳子は、「私の知人にいますが、聞いてみないと解りません。」と陽子の事を考えていました。
敷島さんは、「その人は警察関係者ですか?」と元刑事の知り合いだから警察関係者だと思いました。
佳子は、「いいえ、違います。警察関係者でも、自衛隊の関係者でもありません。今度本人に確認してみますが、そのようなゲームですと、ひょっとすればマリさん以上かもしれませんよ。」と宇宙人の透視力には地球人は対抗できないだろうと考えていました。
敷島さんは、「まさか、あのDVDを見たでしょう?奥さんの実戦経験は天下無敵ですよ。もう優勝は頂いたようなものです。」とマリに期待していました。
佳子は心の中で、“陽子さんも、きっと自動小銃で銃撃された仕返しがしたいのではないかしら?”と思っていました。
マリは、「佳子、あなたにそんな知人がいたとは知らなかったわ。誰なのよ!日本では警察と自衛隊以外は銃の経験がない筈よ。」と指摘しました。
佳子は、「猟師だっているわよ。私が最初にマリに会った時に逮捕したでしょう?その人は逮捕できなかった人よ。今は普通に付き合っています。」と明確な説明を避けました。
敷島さんは驚いて、「えっ!?逮捕したって?」と確認しました。
佳子は、銃刀法違反の一件を説明して、「まさか、マリが精神力の訓練をしていたとは思わなかったわ。総理大臣に大目玉を食らったのも、あんな裏があったとは知らなかったわ。」とマリに酷い目に遭わされたと睨んでいました。
敷島さんは、「裏ってなんですか?」とどんな裏があるのか知りたい様子でした。
マリは、「私の氏名がマスコミで発表された為に、海坊主に襲われた時に身を守る手段として、アメリカ政府が日本政府に私が日本国内で銃の所持許可を依頼した時に、日本政府は、警察が守るから大丈夫だと断ったのよ。その警察が私を守るどころか、逮捕した事がアメリカ政府に知れると、日本政府の面子が丸潰れになるので、怒っていたのよ。私も総理大臣が凄く怒っていたので不信に感じ、あの後、総理大臣に連絡して聞くと、そういう事だったのよ。」と説明しました。
佳子は、「えっ?あの後、総理大臣に連絡したのは、私達の事を穏便に済ますように連絡したんじゃなかったの?私達の事はついでに頼んだだけなの?」と不満そうでした。
マリは、「そんな訳ないじゃないの。総理大臣は多忙な上、高度な仕事をしているのよ。総理大臣の判断一つで日本の浮沈が決まるのよ。そんな詰まらない事で連絡しないわよ。佳子の為に連絡したんじゃないの。総理大臣が怒っていた理由を聞くのが、ついでに決まっているじゃないの。落ち着いて考えれば解る事でしょう。何も悲劇のヒロインになったような言い方をしなくても良いじゃないの。」と佳子を宥めました。
佳子は、「総理大臣に呼び出された時には、私は悲劇のヒロインになっていました。誰かさんのくだらない訓練の為にね。」と不満そうでした。
敷島さんは、「それは大変な目に遭いましたね。」と同情していました。
マリは、「だから、今も説明したように私も責任を感じて、総理大臣に穏便に済ますようにお願いしてあげたでしょう。」と佳子を宥めました。
佳子は、「確かに、それは上司から聞きました。お陰で首が繋がり感謝していましたが、責任を感じたってのは本当?その後も、何回もマリが拳銃を所持している所を見付けたけれどもな。」とマリを横目でチラッ見ました。
マリは、「酷い目にあったのは佳子だけじゃないのよ。この事がアメリカ空軍の上官の耳に入り、私も上官から大目玉食らったわよ。上官がその事を公にしなかった為に、総理大臣が心配しているような国際問題には発展しませんでしたけれどもね。」とマリも佳子と同じように酷い目に遭った事を伝えました。
佳子が、「何を言っているのよ。上官でしょう?大統領ではないのでしょう?私は上司ではなく、総理大臣から直接大目玉食らったのよ。今後マリに手を出せば警視総監に指示して即刻解雇すると怒鳴られたのよ。全然違うわよ。」と不満そうでした。
マリは、「まあまあ、抑えて。所で佳子、逮捕できなかった人と付き合っているってどういう事なの?」と都合が悪くなった為に話題を変えました。
佳子は、「罪を犯している事は解っているけれども、証拠がないのよ。先日、偶然に、その人の正体が解り、私の手に負える相手じゃない事が解りました。マリ、はっきりと言っておくわね。もし、その人が参加すれば、冗談抜きでマリ以上の可能性があるわよ。いえ、きっとマリ以上よ。その人に敵う人なんていないわ。」と強調しました。
マリは、「信じられないわ。でも、その話が本当なら、私も、お遊びではなく、実戦訓練になりますので、是非、説得して参加して貰って下さい。一度紹介して頂けませんか?」とどんな人なのか興味がありました。
佳子は、「機会があれば紹介しますけれども、辞めといた方が良いと思うわよ。きっと腰を抜かすわよ。ヒントは、魔女です。」とぼかしました。
佳子は、“今、人身売買の黒幕が陽子さんだと言ったら、とんでもない事になるわね。マリの事だから、はっきりさせる為に自動小銃を持って、丸東組に乗り込むかもしれないので、暫くの間は言えないわね。魔女で解るかしら?陽子さんは医学会の魔女と言われている事に気付くかしら?”と思っていました。
マリは、「何を言っているのよ。魔女なんて実在する訳がないでしょう。サバイバルゲームに参加すれば、私が正体を暴いてやるわ。」とサバイバルゲームに乗り気でした。
佳子は心の中で、“確か人身売買の黒幕もマリが正体を暴こうとしていましたが、失敗したのじゃなかったのかしら?もう勝負は見えたようね。”と思っていました。
マリと佳子は、次回のサバイバルの日時が決定すれば、その時に時間が取れれば、参加する事を約束しました。
その数日後、佳子は、敷島さんとマリに、「例の魔女も時間が取れれば、参加してくれるそうよ。それと、マリに伝言があります。魔女は、“私を倒すのは無理よ。精々訓練を積んでおく事ね。”と言っていたわよ。」と伝えました。
敷島さんは、「それは、その人が、奥さんの実戦経験を知らないからでしょう。DVDを見れば考えが変わると思いますよ。」とマリの実戦経験に敵う女性はいないと思っていました。
佳子は、「そのDVDの事を伝えると、“私だけマリさんの情報を入手するのは卑怯です。ゲームの後で拝見させて頂くわ。”と断って来ました。」と伝えました。
マリは、「正々堂々と勝負しようというのね。望む所よ。戦場での実戦経験を見せてやるわ。」と興奮していました。
敷島さんは、「奥さん、落ち着いて下さい。実戦ではなく、悪までもゲームですから。」とマリを落ち着かせようとしました。
マリは、「そこまで馬鹿にされて黙っていられないわよ。やるからには、優勝を狙うわよ。世界一のアメリカ軍人がそう簡単に負けないわよ。」と興奮していました。
一方、その魔女である陽子は親子三人で結婚生活を幸せに暮らしていました。菊枝が渚の通う小学校の校医になった為に、渚は学校で、母親だけでなく、祖母も医師だと解り人気者になりました。
渚は友達とよく道草をして遊んでいて、迷子になった事もあるのでいつも母親の陽子から叱られていました。
次回投稿予定日は、1月10日です。