第百七十五章 謎の機械獣、再び出現する
陽子は、まさかとは思いつつも、検査データーを確認している振りをして、上着に化けているコスモスに意思波で、「この特徴はテレジア星人の特徴です。地球人との間に子供を作ったのはアヤメさんだけですよね?とすれば、あの選手は何者なのでしょうか。地球人ではない可能性があります。」とコスモスなら、何か知っている可能性があると判断して確認しました。
コスモスも驚いて、「えっ?嘘でしょう?テレジア星人は地球人とは全く異なるのよ。検査なんかすると人間でない事が判明するのではないですか?」と不思議そうでした。
陽子は、「テレジア星人のコスモスさんが何を変な事言うのよ。テレジア星人は染色体から体を変化させられるのでしょう?染色体から変化させられるという事は、外観だけではなく、内臓や循環器なども地球人と同じように変化させられるのよね。地球人の科学力では見破れないわ。でも検査によってはテレジア星人の特徴が出るのよ。私も健康診断では同じ結果が出ていて、最初は解らなかった為に何かの病気なのかと心配していました。自覚症状も特になかった為に暫く様子を見ていましたが、何も起こりませんでした。あなた方と出会いテレジア星人の説明を聞いて謎が解けました。あの選手はテレジア星人の血を引いている事は間違いないと思います。」と返答しました。
コスモスは暫く考えて、「あっ、そうだ。そう言えば以前母ちゃんが、そんな事を言っていた事があったわ。確か、これは殆どのテレジア星人も知らないらしいのですが、モミジさんが地球人との間に子供を作ったそうです。しかし今は宇宙旅行中なので、地球にはいない筈です。」と返答しました。
陽子は驚いて、「コスモスさん、宇宙旅行というのは、テレジア星人のあなたに説明したのでしょう?宇宙旅行でテレジア星にいないという意味ではないのかしら。そう考えると地球にいても不思議ではないわよね。」と確認しました。
意思波で選手に、「マーガレット選手、私は今の試合であなたと対戦した梅沢渚の母です。あなたはテレジア星人の血を引いているのではないですか?監督の持っている検査データーに、テレジア星人の特徴がはっきりと表れていますよ。」と呼び掛けました。
選手から意思波で、「世界的名医は誤魔化せませんね。私はモミジの娘のマーガレットです。渚ちゃんも昔は迷子になりベソをかきながら泣いていましたが、大きくなりましたね。」と自分はテレジア星人の血筋だと告白しました。
陽子は、「えっ?渚が小学生の時に迷子になった時に、親切に学校に電話して頂いたマーガレットさんは、あなたの事でしたか。」と驚きながら聞きました。
マーガレットは、「そうです。私はいつもあなた方を見ていました。監督が言っていた手足が痺れる事は本当です。テレジア星人の血を引く陽子先生には解るかもしれませんので、その時は宜しくお願いします。詳しい事はアヤメさんがよく知っていますので、ゆっくりと説明を聞いて下さいね。母とは親友らしいので、アヤメさんには何でも話をするようです。」と返答しました。
陽子とコスモスは驚いて、意思波でアヤメに確認しました。
アヤメは、「ばれちゃったのね。モミジから色々と聞いているので、詳しい事は陽子が帰ってから、ゆっくりと説明するわね。」と笑っていました。
陽子は、「猪熊先輩、特異体質については特に心配いりません。しいて言えば、格闘技が強いのはその為です。私も同じ症状があります。渚には内緒にしていますが、渚も同様です。」と安心させました。
猪熊先輩は、「そうですか。世界一の名医からそれを聞いて安心しました。」と一安心すると落ち着いて、その後色々と雑談して、その場は別れました。
オリンピックも終わり日本へ帰ると、渚と早苗姉妹を待っていたのはマスコミでした。受験一色の大日本高校が三人もオリンピックで金メダルを獲得した事がマスコミで取り上げられて、インタビュー等でマスコミに追い駆けられて、更に学校新聞にも大きく取り上げられ、授業を一時間使用して、放送室に校長先生、教頭先生も駆けつけて、渚と早苗姉妹のインタビューを校内放送で流し、チョットしたスターになりました。
学校新聞や校内放送では、早苗は、“全試合秒単位で一本勝ちして余裕で金メダルを獲得して、それは白い柔道着が丸で白鳥のように優雅でした。お淑やかな早苗姉妹は試合もお淑やかでした。”と説明したのに対して渚は、“昔、金メダルを獲得した猪熊選手が編み出した大技を破って、SF映画の特撮のような試合で、早苗選手と違い大股開いて戦っていました。”と説明していました。
渚には、その説明が不満で、“悪かったわね。大股開いてお淑やかでなくて。”と不愉快そうでした。
マスコミが何度も追い駆けて来る為に、受験勉強ができず、雲隠れする事にしました。渚は丸東組の組事務所に雲隠れして、早苗姉妹は、陽子の口ききで芹沢外科医院の看護師寮から入院病棟の個室に雲隠れしました。登校は毎日違った道を通り誤魔化しましたが、問題は下校時です。マスコミが表門や裏門などで待ち伏せしていた為に、変装した上で一部の生徒だけが知っている抜け穴から下校する事にしました。
陽子もアヤメの説明を聞きたかったのですが、暫く病院を休んでいた為に外科医の仕事が多忙で、なかなか聞く時間がありませんでした。
一方マリは、父親の見舞いと子供達に操縦技術の指導をする事以外は平凡な主婦生活を送っていました。
そんなある日、マリの長男富士夫が大学生、長女紅葉が高校生の時にとんでもない事件が起こりました。
それはマリが独身の頃に空飛ぶ機械獣を撃墜しましたが、その機械獣を作った組織が長年研究して、更に進んだ強力な空飛ぶ機械獣を作り、世界征服を始めました。それは丸でSF映画に出て来る空飛ぶ恐竜のようでした。各国の空軍やアクロバット飛行チームも全然歯が立たなかった為にアメリカ空軍は大統領に現状を説明して、マリへの緊急応援を決定しました。
大統領は、最後の手段として、日本政府を通じてマリに協力を依頼しました。マリは以前と同じ様に、まずアメリカ空軍が撮影した映像を入手して、富士夫と紅葉とで一緒に研究しようとして、アメリカ空軍の上官を通じて問い合わせていました。
その返答の電話が、佳子がマリの所に来ている時にあり佳子は、「今、英語で喋っていたけれども、アメリカから?まさかテレビで最近報道されている空飛ぶ機械獣の事?マリが出撃するの?」とマリの事を心配していました。
マリは、「どうやら、そうなりそうです。先日総理大臣から直接連絡があり、アメリカ大統領からの依頼だそうよ。それで今アメリカ空軍と打ち合せしていたのよ。」と電話の内容を説明しました。
佳子は、「直ぐにアメリカに発つの?」と確認しました。
マリは、「そんなに急には行かないわよ。あの機械獣は必ず私が撃墜するから安心してね。今度は私には頼りになる仲間がいるから大丈夫よ。協力依頼するかどうかは、機械獣の事をもっと調べてからにするけれどもね。」と落ち着いていました。
佳子は、「誰?その人は。マリ、あなた最近はアメリカに行っていないみたいじゃないの?という事はアメリカ空軍パイロットではないのね?日本の航空自衛隊員なの?」とマリの仲間の事が気になる様子でした。
マリは、「それは秘密です。ご想像にお任せします。操縦技術は私以上です。航空自衛隊員にそんなパイロットがいるかしら?」と航空自衛隊員でない事を仄めかしました。
佳子は驚きながら、「嘘でしょう?伝説の名パイロット以上のパイロットがいるとは思えないわ。」と凄腕刑事の佳子は、“もしそんなパイロットがいるのでしたら、マリの二人の子供しかいないわね。内緒にしているのは、狙撃を心配しているのかしら。”と薄々感じていました。
アメリカ空軍から機械獣の映像データーが届いた為に、マリは富士夫と紅葉とで何度も映像を確認していると、富士夫が弱点を発見しました。
「母さん、紅葉、よく見て!攻撃が一方向からだと、迎撃しているが、多方向から同時に攻撃されると迎撃せずに攻撃を回避している!攻撃や迎撃はどの方向にでも可能なようですが、同時に他方向への攻撃や迎撃は一度もしてない。他方向からの同時攻撃に弱いのではないですか?複数機で同時に他方向から攻撃すれば、撃墜可能な気がしますが、どうですか?」とマリと紅葉の意見を聞きました。
紅葉が、「この映像でも他方向からの同時攻撃を回避しています。同時攻撃に弱そうですが、もう一捻り何かないと、同じように回避されて撃墜は不可能だと思います。」と返答しました。
富士夫は、「もう一捻りと言っても、僕達にできて、撃墜に役立ちそうなのはアクロバット飛行ぐらいだから、それで対抗するしか方法はないと思いますが、それでも難しいと思うよ。思いもよらない方向からミサイルが飛んでくれば話は別だけどね。」と難しい顔をしていました。
マリもその弱点を突けば撃墜可能だと判断して紅葉の言うもう一捻りを富士夫の言ったアクロバット飛行の連続で相手の注意を引けば撃墜可能だと判断しました。
思いもよらぬ方向というのはジェット戦闘機の車輪を空中でぶつける事により、戦闘機の進行方向を急激に変える事で可能だと判断して、その間に同時攻撃すれば撃墜可能だと判断して、作戦を紅葉と富士夫に説明して二人共納得しました。
次回投稿予定日は、3月26日です。




