第百五十七章 特命のゴールデンコンビ復活
霧島外科医とマリは、怪我人のいる地域での治療を終わらせて、別の場所へ移動しようとしていると陸軍から、「敵の基地を一網打尽にした際に、重傷者がいて動けなかった為に、危険でしたが、その場で治療していると敵の連絡を受けて、別の基地から来た敵に襲撃されて、現在交戦中。負傷者多数。」と緊急連絡が入りました。
その場所に一番近くにいるのがマリと霧島外科医でしたので、負傷者多数と聞いた霧島外科医は、世界出張医師団に連絡し予定を変更して、現地へ急行しました。
移動途中マリは、「あなた、戦地では銃撃戦が終わってから行くのではないの?銃撃戦をしている場所へも行くの?」と心配そうでした。
霧島外科医は、「それはその場の状況にもよるので、現場で医師が判断する事になっています。私は報道関係者も銃撃戦の中で報道している為に、医師も行くべきだと思っている。」と返答しました。
マリは、「あなた、銃撃戦の中で、ジープの運転はできるの?無理しなくても、その時は私もジープを降りて戦うので、心配しないでね。」と実戦経験のない霧島外科医を心配して確認しました。
霧島外科医は、「経験がないので解らないが、マリが指示してくれれば私も頑張ってみるよ。」とマリに負担をかけたくないようでした。
マリは、「解ったわ。一つだけ言っておくわね。銃撃戦の中で、真っ直ぐに走ると狙い撃ちされから、ジグザグに蛇行してね。」と忠告しました。
霧島外科医は、「なるほど、そう言われればそうですね。解ったよ。現地に行く途中に広い場所を通るので、そこで少し練習しながら現地に向かうよ。」と納得していました。
マリは、「あなた、ここの地理に詳しいのね。何故?」と調べる時間もなかった為に不思議そうでした。
霧島外科医は、「以前何度か来た事があり、更に先程マリがジープや武器などを借りる交渉をしている時に、僕は地図を借りる交渉をしていました。」とマリの疑問に答えました。
マリは、「あなたは毒蛇以外でも頼りになりますね。」と地理も任せられると判断しました。
霧島外科医は、「僕は何度も戦地へ赴いているが、マリと違い、武器もなく実戦経験もない僕達の生きる知恵だ。最初慣れない頃に戦地で敵に攻撃されて、必死に逃げていると、反対方向に逃げていて、敵の本部に向かって走っていた事があった為に、戦地では地図などを入手して、そのような事にならないようにした。これだけだと思わないでや。武器や実戦以外の事は僕に任せてや。」と自信を持っていました。
マリは、「私が武器や実戦で、あなたが武器や実戦以外という事ですね。」と実戦以外は任せられると安心していました。
霧島外科医は、「そうや。だからゴールデンコンビだと言っただろう。」とゴールデンコンビの由来を説明しました。
暫くすると、少し広い広野を通った為に、霧島外科医は蛇行を始めました。
マリは、「あなた、狙い撃ちされないように蛇行するのですよ。サインカーブを描くように規則正しく蛇行しても意味がないですよ。適当にハンドルを切ってね。それと前進と後退のギアチェンジも素早くしないと、敵に狙い撃ちされます。エンストしないようにアクセルは強めに踏んでね。瞬発力があるのでギアは低速ギアでね。」とアドバイスしました。
霧島外科医は、「ああ、解ったよ。今回はマリと一緒なので、戦場でのジープの運転方法など色々と勉強になったよ。今後役に立ちそうだ。」と喜んでいました。
マリは、「実戦経験のないあなたに、あまり戦地には行って欲しくないというのが私の本音です。」と心配していました。
霧島外科医は、「僕は怪我人がいて困っている人がいれば、いつでも何処にでも行くよ。」などと雑談しながら現地に向かいました。
現地では古宅内科医の女房が足を打たれて動けなくなり、敵が止めを刺そうとしている所へマリ達が到着して、ジープから機関銃で敵を銃撃した為に、古宅内科医の女房は助かりました。
その後、動けない古宅内科医の女房をマリが援護射撃している間に霧島外科医がジープに乗せて、ジグザク走行で銃撃戦をしながら味方の所へ行き、陸軍と合流しました。
霧島外科医が負傷者の手当てをして、マリと陸軍はそれから暫く、敵と銃撃戦になりました。
マリは、森の中で今迄囀っていた鳥が急に囀るのを辞めると、その近くに敵がいると直感するなど、航空機の操縦以外でも地上戦においても自然を味方にして戦った為に、他のアメリカ軍よりも頼りになると、古宅内科医の女房の目には映り、陸軍兵士が、“マリは陸軍兵士としても優秀だ。”と言っていた事が理解できました。
古宅内科医は暫く現地で入院する事になりました。松葉杖で苦労しながら看病している女房はいつ敵の襲撃があるのか解らない為に、主人と一刻も早く日本へ帰りたいと思っていました。
暫くすると、霧島外科医の今回の任期が終わり、日本へ帰る事になった為に、古宅内科医の女房は、超一流パイロットと外科医が一緒なので、この機会を逃すと暫く日本へは帰れないと判断して、「今、主人を動かすのは危険です。」と医師から忠告されましたが無理に頼み込み、一緒に帰国する事になりました。
帰国後、古宅内科医の女房は今回の件を自治会の会合で、マリがアメリカ軍よりも、頼りになる事や、陸軍兵士も同様の事を言っていた事を説明して、そのようなマリが霧島外科医を専属的に警備していた為に、近くにいた私達も今回は無事に帰れた事などを報告しました。
その後、自治会長が、「アメリカ陸軍記録担当軍人が、霧島さんの奥さんがジープから機関銃で古宅婦人を助けた様子や、銃撃戦などの様子を記録したDVDが贈られて来ました。」と報告しました。
役員達は、「是非そのDVDを見たい。」と希望した為に、その場で再生して皆で鑑賞しました。
男性役員が、「霧島さんの奥さん、凄いですね。今、走行中のジープから投げたのは手榴弾ですよね。丸で戦争映画を見ているようです。」とDVDの内容に圧倒されていました。
この話を聞いた他の住民達からも、「是非そのDVDを鑑賞したい。」と要望が多数寄せられました。
マリは、「恥ずかしいから辞めてよ。銃撃戦なんて、自治会の運営には全く役立たないのよ。」とDVD鑑賞には消極的でした。
佳子が、「マリ、一人殺して幾ら貰ったの?」とマリを横目でチラッと見ました。
マリが、「そんなんじゃないって。佳子は誤解しているわよ。侵略されかかっている国を助けに行ったのよ。これは正義の戦いなのよ。」と興奮していました。
佳子が、「正義の戦いなら、良いじゃないの。住民も見たがっている事だし。」と佳子は矢張りマリは実戦ができても精神的には幼稚ねと感じました。
マリは、「あれっ?なんか誤魔化されたみたい。」と興奮していたのが一気に冷めました。
佳子は、「以前、鬼教官に、“先に冷静さを失った方が負けです。”と教わったのでね。」と笑っていました。
マリは、「佳子に余計な事を教えるんじゃなかったわ。」と後悔していました。
結局、週末の午後、住民全員を集めてDVD鑑賞会が開かれる事になりました。
DVD鑑賞会後は、マリは近所で人気者になり、子供達の戦争ごっこによく誘われていました。マリも子供は嫌いではないので、時間の取れる時には、そのような子供達の相手をする事もありました。
その後マリは自治会で、元刑事の佳子と二人、防犯担当役員に指名されました。
マリは、「私は今回のように急に戦地へ赴く事もあるし、私は元軍人で防犯は専門外ですが、元刑事の佳子さんは、防犯も職務に入っていて専門なので、佳子さんがリーダーで私は副リーダーでお願いします。」と提案しました。
佳子が、「とか何とか言いながら、人に押し付けて、上手い事逃げちゃて。」と不満そうでした。
マリは、「私は世界出張医師団の役員もしているのよ。何で私ばかりやらなければならないのよ!佳子こそ逃げようとして、そんな事を言っているのじゃないの?」と反論しました。
佳子は、「世界出張医師団の役員と言っても、緊急事態が発生した時だけで、普段は何もやらないじゃないの!そう度々緊急事態なんて起こらないわよ。」と指摘しました。
マリは、「緊急事態が発生した時には、皆バタバタしている為に、そういう時に限って空き巣などの犯罪が起こるのよ!その時の為にも世界出張医師団の役員リーダーと防犯の役員リーダーを分けるのは当然でしょう!」と反論しました。
佳子は、「解ったわよ。やれば良いんでしょう!やれば。やるわよ。」と引き受けました。
自治会長は、「やっと決まりましたか?」と笑っていました。
マリが、「ほら、佳子がごねるから、笑われたじゃないの!」と不満そうでした。
佳子は、「ごねるとは何よ。私は只、意見を言っただけでしょう。言論の自由を知らないの?」と自分の意見を正当化しようとしました。
マリは、「佳子は、法律に従った考えしか浮かばないの?刑事の悪い癖ね。言論の自由も良いけれども、発言する前に、その意見が正しいかどうか、良く考えてから発言しないと恥をかくだけよ。」と佳子の主張は間違いだと指摘しました。
佳子は、「法律を守る事は当たり前でしょう?誰かさんみたいに、銃は持ち歩いてないわよ。」と不満そうでした。
ある日、マリが親友の佳子と霧島外科医と三人で雑談していると、近所の住人の敷島さんが友人と、マリを訪ねて来ました。
「彼は学生時代の親友で、趣味でサバイバルゲームの同好会に入っています。次回のサバイバルゲームは、ゲーム専用の自動小銃を使います。」とマリの力を借りようとして紹介しました。
次回投稿予定日は、1月5日です。