第百七十三章 渚、オリンピック選手に決定
マスコミが全国高校柔道大会に出場した早苗の試合を見て、オリンピック候補選手数名含む全試合を秒単位で一本勝ちした強さに驚いて色々と調べて、学校新聞から早苗達の苗字が変わっている事に気付いて、“花咲姉妹復活!全国高校柔道大会で優勝!”と報道しました。
渚と早苗に、オリンピック柔道選手を選出する試合の出場依頼がありました。
早苗は、「私と妹は柔道を封印して辞めています。先日は柔道部からどうしても頼むと依頼されて出場しただけです。」と断りました。
マスコミは、「お母さんの事、聞きました。未だに、お母さんの事を思っておられるのですね。先日の柔道の試合を拝見させて頂きました。オリンピック候補選手を含む全試合秒単位で一本勝ちでしたね。決勝戦でも、試合開始のホイスルが鳴っても早苗さんは身構えず自然体で余裕でしたね。優勝候補の相手選手が身構えて早苗さんに近付いた瞬間、あっという間に投げて、丸で大人と子供のようで余裕の試合でしたね。相手選手に確認すると、“いつ投げられたのか今でも解らない。気付いたらマットに沈んでいました。私とはレベルが違いすぎます。”と言っていました。オリンピックに出場すれば金メダルも夢ではないと思います。是非オリンピックに出場して頂きたいですね。」と勧めました。
早苗は、「私はまだ柔道を始める気になりません。今は気晴らし程度に柔道をしています。オリンピックは渚ちゃんに任せます。」と断りました。
渚はオリンピック柔道について、母に相談しました。
母の陽子は、「私は実の父親がやくざの組長でしたので、オリンピック出場は断り続けました。でも渚は違います。父親は警察官で、母親は医師です。堂々と胸を張って行ってらっしゃい。あなたの実力なら必ずオリンピック選手に選ばれると信じています。お母さんが出場できなかった分まで頑張って!」と励まされて、渚は出場を決意しました。
渚は、「母ちゃん、花咲姉妹を指導していたと聞きましたが本当なの?何故黙っていたのよ。当時私が捜していた事を知っていたのでしょう?」と不満そうでした・
陽子は、「渚、早苗さんと同じクラスになったんだって?早苗さんが、“苗字が変わっている為に、掃除当番も同じ班になって話もしましたが、渚さんは私に気付いていないみたいだわ。”と笑っていたわよ。早苗さんが孤児になったのは、渚との試合の数カ月後よ。渚と柔道で対戦できる精神状態ではなかったから言わなかったのよ。でもあの事件から五年経過してもまだその事件に引きずられているようで、可哀そうだわ。オリンピックが一つの切掛けになると思うので、渚!早苗さんにもオリンピックに出場するように説得して。」と返答しました。
この時、渚はまだ自分がテレジア星人の血を引いている事を知らずに、陽子も渚を不安にさせない為に、それを隠していました。
渚がいない時に、コスモスが陽子に、「オリンピックは、まずくない?聞いた所によると、薬物を使用しただけで失格になるのでしょう?テレジア星人の血を引いている事が、後で判明すれば問題にならない?」と渚の事を心配していました。
陽子は、「それは問題になるでしょうね。でも、渚には何とか星人の血を引いている事は隠して、普通の生活をさせてやりたいのよ。下手にオリンピックに出場するなと忠告すると、その事がばれる可能性があります。私には、その方が問題です。オリンピックで問題になれば、メダルを返却して、謝れば良いのよ。渚は何も知らなかったのだから、私が悪人になれば済む事よ。」と返答しました。
コスモスは、「陽子にその覚悟があるのでしたら、もう何も言わないわ。」と陽子の考えを受け入れました。
オリンピック柔道選手を選出する試合には、渚や陽子やマスコミなどから説得された花咲姉妹も出場しました。
早苗と渚との試合はマスコミも、「世紀の大決戦復活」と報道して大騒ぎしている中で試合が開始されました。
試合の結果、渚は矢張り常盤早苗に敗れたものの、その他の試合は一本勝ちで花咲姉妹と共にオリンピック選手に選ばれました。
コスモスが陽子に、「小学生の時の試合結果の事もあり、今回は試合を見ていましたが、矢張り早苗さんには敗れました。何故なの?何かあるのかしら。」とテレジア星人の血を引いている渚が何故地球人に負けたのか納得できない様子でした。
陽子は、「私も早苗さんを指導して気付きましたが、早苗さんは合気道の極意を会得している上に柔道技は鋭いのよ。」と返答しました。
コスモスは、「合気道の極意と柔道とどういう関係があるの?」と陽子の説明を理解できない様子でした。
陽子は、「合気道は相手の力を利用して技をかけるのよ。早苗さんは、最初は自然体で相手が攻撃して来た力を利用して柔道技をかけているでしょう?相手選手と組み合った時でも、相手選手の力を利用して技をかけているでしょう?渚が強いのはテレジア星人の血を引いている為に、体重と力が大きく影響しているのよ。体重と力とでは、天才的な柔道技を使っている早苗さんには敵わなかったという事よ。」と返答しました。
コスモスは、「そうなの?」と陽子の説明を聞いても、渚の体重はトン単位よ、本当に地球人に投げられるのかしら?と半信半疑でした。
この試合結果を見て、マスコミ各社が渚と早苗の事を調べると、渚の母親は高校生時代、トラやライオン相手に格闘技の練習をしていて、その様子を撮影した映像が残っていて、母親がオリンピック出場を辞退した格闘技の達人であることが判明しましたが、その渚を敗った常盤早苗については、小学生の時に母が亡くなってから、柔道の達人である渚選手の母親が指導していた事が判明し、「花咲姉妹、柔道の達人の指導により、涙の復活!」と報道しました。
オリンピックには渚は無差別級、早苗は63Kg級、早苗の妹は48Kg級で出場決定しました。
大日本高校は有名な受験校で、格闘技の試合も今迄は縁がなかったのですが、今回三人もオリンピックに出場する事になり、学校新聞でも取り上げられて大騒ぎになりました。
オリンピック強化合宿の案内が来たので、ワクワクしながら行くと、入り口でマスコミが待ち構えていました。
早苗には、「涙の復活をされた心境は?」等とインタビューして、渚に、母親がオリンピックに出場しなかった理由を聞かれました。
渚は、母の父がやくざの組長だとは言えず、相手選手に怪我をさせない為にだなんて言うと、オリンピックファンから非難されるので困りました。
渚は、「母から何も聞いていないし、オリンピックに興味がなかったのではないでしょうか?」と返答しました。
マスコミは、「そうですか。確かに、お母さんが高校生の頃にインタビューした映像が残っていて、そのような事を言っていましたが、お母さんにも、オリンピックに出場して頂きたかったですね。残念です。」と残念そうでした。
渚は、“解っているのなら、聞くなよ。焦ったじゃない。”と不愉快そうでした。
マスコミは、「梅沢選手も、お母さんのように、トラやライオンと練習しているのですか?」と質問しました。
渚は、「ええ、家では、トラの次郎ちゃんとライオンの太郎ちゃんが私の練習相手です。」と返答しました。
渚は、“何で早苗が涙の復活で私がトラとライオンの話なのよ。”と思いながら不満で、「もう良いですか?」と強化合宿に行きました。
しかし、その内容は期待外れでしたので思わず、「こんな合宿でしたら、家で次郎ちゃん相手に練習していた方が良かったかわ。」と口に出してしまいました。
それを聞いた他の選手達は、「一寸人気があると思って、花咲姉妹に敵わなかったくせに生意気な!そんな事を言うのだったら、私達と勝負しろ!」と監督の制止を無視して、渚に順々に飛び掛りましたが、全員倒されました。
渚は、「手加減したのに、情けないわね。これがオリンピックに出場しようかという選手とはね。私と真面に闘える選手はいないの?」と口先だけの選手かと思っていました。
選手達は、「次郎ちゃん?となら真面に闘えるのか!それじゃその次郎ちゃんとやらを連れて来い!」とどんな練習相手なのか気になっている様子でした。
その場は収まり、その日は合宿の規則などの説明だけに終わりました。
結局、渚はその日、一旦帰宅して、明日次郎ちゃんを連れて来る事になりました。翌日渚は丸東組の組員に運転手を頼み、次郎ちゃんを連れて来ました。
選手達が朝の準備体操をしている所へ、渚を乗せたバンが到着しました。
選手達は、次郎ちゃんがどんな練習相手なのか確認しようとして全員集まって来ました。
渚が、「次郎ちゃん、追いで。」と呼びました。
車からトラが出て来た為に、次郎ちゃんが本当にトラだったと知り、選手達や監督は絶句しました。
渚がトラを捕まえて、「紹介します。私の格闘技の練習相手をしてくれている次郎ちゃんです。可愛いでしょう。ほらいらっしゃい!」と首輪を引っ張りながら皆の方へ連れて行きました。
監督は、「今は、朝の準備体操の時間です。梅沢さんも、トラを檻に入れてから、準備体操に加わって下さい。皆と一緒に体操して下さい。」と指示しました。
渚は、組員がバンから下ろした檻に、トラを入れて、準備体操を始めました。
準備体操終了後、他の選手が、「トラと戦えば、殺されるだろうが!」とトラと闘うなんて嘘だろうと思っていました。
渚が、「それじゃ、戦うわ。」とトラと争った為に選手達は驚いていました。
次回投稿予定日は、3月16日です。




