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第百七十二章 柔道部のマスコットガール

大日本高校の柔道部では、入部してくる新入生が少なく、特に女子柔道部は少なく廃部の危機にありました。

柔道部のイメージを明るく楽しいイメージに変えようとして、マスコットガールについて色々と検討していました。

柔道部の会合で、「今年の新入生の中に、美人でお淑やかな女性が入学していて、男性だけではなく、女性や上級生からも慕われている生徒に事情を説明して、柔道部のマスコットガールになって頂けるように依頼する事を提案します。」とある部員が発言しました。

別の部員が、「チアガールなら聞いた事はありますが、野球などの団体戦の事で、柔道部では、チアガールというのは聞いた事ないし、それも試合の時だけでしょう?それに聞いた所によると、その生徒はお淑やかで、ミニスカートを履いて踊るような娘ではないと聞きましたよ。」と入手した情報を告げて反論しました。

反論された部員は、「私はマスコットガールだと言ったのよ。誰もチアガールだとは言ってないわよ。」と補足説明しました。

その部員は、「マスコットガールとチアガールと何処が違うのよ。あなたのいうマスコットガールとは一体なんなのよ。」とマスコットガールの意味が理解できない様子でした。

その部員は、「柔道部にはマネージャーがいるでしょう?マネージャーになって頂ければ、女生徒にも慕われていると聞いたので、彼女と話ができて友達になれるというだけで、柔道部に入部してくる生徒もいると思ったのよ。」と返答しました。

彼女と同じクラスの部員が、「駄目で元々だから、今から説得に行きませんか?確か彼女は今日が掃除当番だったと思いますので、まだ帰ってないと思いますよ。」と女子柔道部員全員でその生徒の教室に向かいました。

ある日の放課後、柔道部員が、「常盤さん、あなたお淑やかで美人の上、成績優秀なので男子生徒達だけではなく、女子生徒からも慕われている我が校のアイドル的マドンナだから、柔道部のマネージャーになって、マスコットガールになってくれない?格闘技は怖いというイメージがあるらしく、入部する生徒が少ないのよ。明るく楽しいイメージに変えたいのよ。」と交渉していました。

その交渉を聞いていた渚が、「柔道はマスコットではなく、試合の勝敗で全てが決まるのよ。各種大会で優勝すれば、大日本高校の名声もあがり、柔道部に入部する目的で入学してくる生徒も出てくるわよ。常盤さんはお淑やかで、格闘技とは縁がなさそうなので困っているじゃないの。」と助言しました。

柔道部員が、「それじゃ渚、試合だけではなく、柔道部に正式に入部してよ。」と依頼しました。

渚は、「それは、私がお淑やかではないという事なのか?」と不満そうでした。

柔道部員は、「柔道・空手・剣道ともに有段者で、やくざ者を簡単に撃退する渚の何処がお淑やかなのよ。常盤さんと比べ物にならないわよ。」と返答しました。

そんな話をしている時に、街中で郵便局強盗が発生して、警察に追われて犯人グループが大日本高校に逃げ込みました。

放課後渚が、教室で柔道部員や常盤さんと雑談していると、パトカーがサイレンを鳴らして次々と学校へ来た為に皆何事かと思っていると、郵便局強盗の犯人が学校へ逃げ込んだ事を知らせる緊急校内放送中に犯人グループが刃物を持って乱入して来ました。

犯人は、「さすが有名受験校だけあって、柔道部でも白帯ばかりじゃないか!」と人質を取ろうとしました。

柔道部主将が、「刃物を持っているから気を付けて!」と柔道部員数人が犯人を撃退しようとしましたが、全く太刀打ちできませんでした。

犯人は、「柔道部のくせに弱いな。こいつらを人質にして逃げようぜ。」と犯人が柔道部員を人質に取ろうとした為に渚がその犯人の腕を捩じ上げました。

犯人の仲間が渚に襲いかかりましたが、渚に簡単に撃退されて、その強さに驚き、別の女生徒を人質にしてナイフを突き付けて、「大人しくしろ!騒ぐと、この女を殺すぞ!」と渚を威嚇しました。

渚は、「しまった。どうしよう。」と困っていると、近くにいた常盤さんが刃物を持っている犯人の腕を掴み簡単に投げました。

数人の犯人グループが常盤さんに、「このガキ!邪魔するな!」と襲いかかりました。

柔道部員が、“常盤さんが危ない。”と思い、渚も常盤さんを助けようとしましたが、常盤さんは、犯人全員を簡単に投げてしまいました。

そこへ教室を抜け出して助けを求めた生徒から犯人の居場所を聞いた警察が来て、犯人一味は逮捕されました。

この時警察は、常盤さんに投げられた犯人の一人が脱臼していて、渚に空手で撃退された犯人の一人が骨折していた事に驚きました。

犯人が、「お前ら、治療費払え!」と怒っていました。

警察は犯人に、「お前ら、女性だと思い鼻の下を伸ばすから、こんな事になるんだ。美しい薔薇にはトゲがある事を覚えておくんだな。お前らが刃物を持って襲い掛ったんだから正当防衛になります。治療費は諦めろ。」と説明して連行して行きました。

柔道部員は驚いて、「常盤さん、あなたも柔道ができるの?そんなに強いのに何故今迄何もせずに見ていたの?只のブリッコなの?」と聞きました。

常盤さんは、「あの状態では皆を守れないと判断して見ていましたが、今なら助けられると判断して犯人を撃退しました。試合では相手選手を倒す事だけを考えれば良いけれども、このような場合は、それは二の次よ。近くにいる人を守る事を最優先にする必要があるのよ。犯人グループ全員を撃退する自信がなければ、逆らわずに大人しくしていないと、近くにいる人が怪我するわ。最悪死亡する可能性もあるのよ。渚さん、あの状態で犯人に挑めば、他の生徒が危険な状態になると判断できませんでしたか?私は犯人の目配りから彼女が人質に取られる事は解っていました。渚さんは犯人を撃退する事だけを考えて気付いていなかったようでしたので、彼女が人質にされてから近付くと警戒される為に、彼女が人質にされる前に彼女の近くに行き、彼女が犯人に人質にされてから、犯人のスキを見て彼女を救ったのよ。私がいなければ彼女は殺されていたかもしれませんね。」と忠告しました。

渚が、「柔道部員も太刀打ちできなかった犯人を簡単に撃退できるのは、柔道の経験があるわね。それも周りの状況を正確に掴めるのは柔道の達人ね。一度私と対戦しない?」と挑戦しました。

常盤さんは、「渚さん、今私が使った技を見て何も感じないの?」と会った事があるとヒントを与えました。

渚は、「あの技に何か特別な意味があるの?」と全く気付いていませんでした。

常盤さんは、「渚さん、あなた本当に何も見ていないのね。だから私に勝てないのよ。私は孤児になり親戚に引き取られた為に、苗字が花咲から常盤に変わりました。今の技は、小学五年生の時に柔道の試合で渚さんを破った技よ。」と教えました。

柔道部員は、「えっ?小学五年生で花咲と言えば、世紀の大決戦と言われたあの試合の事か?確か優勝したのは花咲姉妹の姉で早苗さんだったと記憶していますが、あの試合で敗れた選手が渚さんだったとは思わなかったわ。という事は、常盤さんは渚さんより柔道が強いのか?」と驚いていました。

早苗は、「あなた方も自分は柔道部だからと思いながら柔道で撃退する事ばかりを考えずに何故椅子で撃退するとか別の方法を考えなかったの?相手の目配りや手足の微妙な動きを正確に読み取れば、相手が今から何をしようとしているか解るわ。これは柔道の試合でも役立つわよ。」と助言しました。

早苗も渚と同じように柔道部に、マネージャーではなく、部員として勧誘されましたが早苗は、「私の柔道で母が亡くなり私は孤児になりました。それ以来柔道は封印しました。その後柔道の達人が私を訪ねてきて、近くにいる人を守る事や相手の目配りなどを教わったのよ。」と断りました。

渚が、「封印したにしては、今の柔道は見事だったわよ。」と感心していました。

早苗は、「気晴らしに私も妹も柔道をしています。今言った柔道の達人に指導して頂いています。渚さん、あなたのお母さんよ。渚さんのお母さんって柔道が強いのね。私一度も勝った事ないのよ。いつも、“こんなお婆ちゃんに勝てないなんて駄目ね“と言われています。」と補足説明しました。

この事は学校新聞にも掲載されて学校中の噂になりましたが、記事は渚の事より早苗の事が多く掲載されていました。早苗の苗字が変わった経緯や、何故柔道を封印したのかなど、詳しく掲載されたのに対して渚の事は世紀の大決戦で早苗に敗れた選手だとか、空手で犯人を骨折させた程度で、更に写真は早苗だけでしたので渚は不満でした。

その事に気付いた以前渚に助けられた生徒が、「渚が、丸東組の幹部待遇で子分もいる事が解らなくて良かったじゃないの。私達はいつまでも渚の味方よ。」と慰めていました。

やがて渚も二年生になり、一つ違いの早苗の妹も大日本高校に入学しました。姉と同様に柔道部から勧誘されましたが、入部しませんでした。渚と同じように試合だけ協力する事にしました。


次回投稿予定日は、3月13日です。

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