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第百六十六章 紅葉、訓練生をからかう

紅葉は当日、彼に気付かれないように無線機のスイッチを入れて、“離陸させたから、少しは真面な飛行ができるかと思えば、全く駄目じゃん。良くこれで皆を乗せて離陸する気になったわね。お仕置きとして一寸からかってやるか。”と訓練生をからかう事を考えていました。

紅葉は、「何故こんなに揺れるの?冷や汗かいているけれども、どうしたの?」と肩を軽く叩くと、彼はパニックになり、操縦桿を放して、頭を抱えながら、「ウワー、もう駄目だ!」とパニックになりました。

航空機は徐々に高度を下げた為に、他の女生徒は、「キャー、助けて」と叫びました。

紅葉は笑いながら、「しょうがないわね!」と操縦桿を握り、スロットルを戻して、安定飛行させました。

彼は、「えっ!?何で?今、何処を触った?勝手に触ると墜落するぞ!」と慌てていました。

紅葉は、「操縦桿を放して頭を抱えると墜落しないの?」と無線を聞いている航空学校の教官に彼の様子が解るように聞きました。

彼は、「いや、それは、その、一寸手が疲れたので休めていただけだ!操縦桿は直ぐに握って操縦するつもりだった。」とその場を取り繕いました。

紅葉は、「それじゃ今の、“ウワー、もう駄目だ!”と言うのは、どういう意味なの?」と、どんな答えが返って来るのか楽しみに聞きました。

彼は、「えっ?ああ、あれはだな、もう手が疲れて駄目だと言ったのですよ。」と必死にその言い訳を考えていました。

紅葉は、「今離陸したばかりよ。そんなにすぐ疲れるのでしたら、空中戦をしているジェット戦闘機のパイロットは敵と交戦中に疲れたから、もう駄目だと操縦桿を放すの?そんな事をしても敵に撃墜されないの?」と今度はどんな返答をしてくるのか楽しみにしていました。

彼は、「えっ?それはだな、余裕だよ、余裕。飛行中、空中で操縦桿を放すぐらいの余裕がないとね。敵と交戦中は手を放さないよ。当然だよ。」と返答しました。

紅葉は、“先程、真っ青な顔で冷や汗をかきながら、焦っていたくせに、次から次へとよく言うよ、パイロットより漫才師の才能があるのじゃないかしら?あれっ?何処へ行くつもりかしら?”と疑問に感じ確認しました。

紅葉は、「この先の雲は速く動いているわよね。何故?」とその理由を確認しました。

彼は、「雲は気体だから、動くのは当然だよ。知らないの?学校で理科の先生に聞くと解るよ。」と紅葉の忠告に全く気付いていませんでした。

紅葉は、“違うだろう、風が強く吹いているって事だろう。彼の操縦技術では確実に墜落だな。仕方ないな、いざとなったら助けてやるか。でもその時は、先程と違って、どんな顔をするのだろうか?写真をとっておこう。”と思いながら携帯をポケットから取り出し、携帯のデジカメで前方の雲を、一秒間隔で複数枚撮影して、雲の速さがどの程度なのかを解るようにしました。その後、彼の顔を撮影し、もうそろそろだと思い、撮影準備をしました。

セスナ機は突然横風を受けて、右に傾き、そのままキリモミで急降下しました。

紅葉は彼の顔を連射後、操縦桿を握り、機体を安定させましたが、今度彼は、操縦桿を放して、頭を抱えた状態で震えながら、動かなくなってしまいました。

紅葉は、「一寸、何しているのよ、パイロットさん、手を放すのは余裕ではなかったの?あれ?動かなくなっちゃった。」と呆れました。

通信機から、「ゲームセットだな。申し訳御座いません紅葉さん、空港まで戻って下さい。しかしあのキリモミ状態からよく機体を安定させられましたね。さすが伝説の名パイロットが太鼓判を押すだけの事はありますね。」と連絡がありました。

紅葉は通信機を取り、「了解!帰還します。でも操縦技術で太鼓判を押された事はありませんよ。いつも、“まだまだ未熟ね“と言われています。」と返答しました。

彼も通信機を取り、「教官、これはどういう事なのですか?」と現状を把握できていませんでした。

教官は、「彼女は紅葉さんと言って、伝説の名パイロット、霧島マリさん、旧姓芹沢と言えば解りますか?の娘さんで、操縦技術はマリさん直伝で、腕は確かだとマリさんは言っていました。マリさんは、“紅葉がいれば大丈夫ですので、騙された振りをして離陸させれば、彼の実力が解りますよ。いつも頼りにしている教官がいなければ、どのような操縦をするのか見て下さい。”と言われたので、暫く職員一同、無線機の電源を入れた状態で、君の操縦を見ていました。」と返答しました。

彼は、「航空学校からでは離陸直後までしか見えないのではないですか?」と不思議そうでした。

教官は、「お前の近くをセスナ機が飛んでいる事に気付かないのか?そのセスナ機から撮影していて、私もそのセスナ機に搭乗しています。離陸直後の、あのフラフラとした飛行は何だ?途中から安定したが、そこで紅葉さんが助けてくれたのか?そんな操縦だから、紅葉さんがヒントをくれたのに君は、そのヒントが解らなかったのではないかね?それにそんなに直ぐに疲れるのだったら、君にはまだパイロットは無理のようだな。帰ったら疲れないように腕を鍛えないといけませんね。腕立て伏せ五十回!」と指示されていました。

彼は、「えっ?ヒントって何ですか?教官。私は何も聞いていませんよ。」と不思議そうでした。

教官は、「先程紅葉さんが、雲が速く動いていると言っていただろうが!あれは、風が強く吹いているとヒントをくれたのだよ。君は何も解っていないのか?しかし、あの強風では私でも墜落するかも知れないのに、よく写真を撮るだけの余裕がありましたね。」と感心していました。

彼は、「写真とは何ですか?」と何の写真か解りませんでした。

教官は、「君が強風に捲込まれてキリモミ状態になった時、紅葉さんは君の、その時の間抜け面をデジカメで撮影して、機体を安定させてからメールしてくれました。しかし、君は何という顔をしているのだ。本当に君は何もできないのだな。」と呆れていました。

彼は、「僕にだって着陸ぐらいはできます!」と自信たっぷりでした。

紅葉は、「先日喫茶店であなたが説明していた着陸方法で着陸すれば、滑走路に激突するわよ。もう良いですから、私が今から着陸させるので、何処が間違っているのか良く見て考えなさい。」と着陸して、「後は自分で考えなさい!」と睨んで同級生達と帰って行きました。

同級生達は、空港を出て紅葉に、「嘘!紅葉!あんた伝説の名パイロットの娘さん?凄い!大スクープ!」と感激していました。

紅葉は、「恥ずかしいから大騒ぎしないでよ。」と恥かしそうでした。

翌日、学校でその同級生は皆に、「大スクープ!」と話をしていました。

その話を聞いた、同級生の一人に、「紅葉、今度、飛行機に乗せてよ。伝説の名パイロット直伝の操縦技術を見せてよ!折り紙付きの操縦技術をね!」とせがまれました。

紅葉は、「もう!あんたはお喋りなのだから!自家用機があるので、乗せてあげるわよ。」と返答しました。

学校が休みの日に、先生と生徒数名が紅葉の家を訪ねて色々と雑談をした後に、紅葉は、「自家用機は二機あるけれども、どちらが良いですか?」と希望を聞きました。

皆は、「嘘!自家用機を二機も持っているの?凄い。爆撃機には今迄も、そして今後も乗る機会がないだろうから、爆撃機に乗りたい。」と希望しました、

自家用機である大型爆撃機に皆を乗せてマリは、「紅葉、今日は、あなたが機長になりなさい。」と指示しました。

マリが副機長、紅葉が機長で遊覧飛行を行い、最後にマリのサインを貰い、満足して帰って行きました。

一方陽子の娘の渚は、中学生になり、渚は学校では大人しくしていて美人で優等生でしたので、誰も祖父がやくざだとは全く気付きませんでした。

ある日、渚の親友の順子が、渚の家に遊びに行くと渚に伝えました。

渚は、“まずい、マンションには、偶に丸東組の組員が来るし、鉢合わせしたらどうしよう。”と困っていました。

渚は、「私の家はマンションだから、狭いよ。外で遊ぼうよ。」と何とか順子をマンションに来させないようにしました。

順子は、「先日も同じような事を言っていたけれども、私が行けば何か都合の悪い事でもあるの?」と疑問に感じました。

渚は、“これ以上隠すと、ばれそう。お爺ちゃんに連絡して、当日は組員を来させないように頼むしかないか。”と諦めました。

渚は、「別にそんな事はないけれども、狭くても良ければ、今度遊びにおいでよ。」と順子をマンションに呼びました。

順子が週末に遊びに来ると言った為に、渚は帰宅後、茂に電話して事情を説明しました。

茂は、「渚も陽子も何故、俺が丸東組組長である事を隠すのだ?はっきりと言わないから、二人共苦労するんじゃないか。よし、週末に組員を連れて行き、お前達が苦労しないように、俺が説明するから、大船に乗ったつもりで安心しろ。」と渚が苦労しないように手を貸そうとしました。

渚は、“一寸冗談じゃないわよ。大船は大船でも、タイタニックみたいに船底に大きな穴が開いている大船に乗った気分。どうしよう。”と困っていました。

陽子が帰宅したので事情を説明して、お爺ちゃんを説得してくれるように頼みました。

陽子は、「何故、最初に私に相談しなかったのよ。お爺ちゃんは一度決めた事は覆さないわよ。今更私が何を言っても、当日は可愛い孫の為だと思い、絶対に来るわよ。」と説得は無理だと忠告しました。

渚は、“まずい事になった!”と母に助けを求めました。

「それだったら、何か理由を付けて、お母さんがお爺ちゃんを引き留めてよ。」と頼み、何とかしようとしていました。


次回投稿予定日は、2月12日です。

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