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第百五十六章 古宅医師、戦争に捲込まれる

ある日、世界出張医師団に参加していた古宅内科医が、戦場で行方不明になったと連絡を受けて、女房はおろおろしてどうして良いのか解りませんでした。

住宅街では、任期満了に伴い新自治会長が選出されて、自治会長の引継ぎの打ち合せで古宅内科医の女房を訪ねた新自治会長は、その事を知り、「古宅さん、落ち着いて下さい。あなたも、前自治会長でしょう!もっと確りして下さい。」と励ましました。

自治会長は、霧島外科医も世界出張医師団に参加していると聞いた事がある為に相談に行きました。

マリは、主人も戦場で捕虜になった事があり、今後主人も同じ目に遭う可能性があり、他人事ではありませんでした。

自治会長はマリから色々と説明を聞いて帰って行きました。

その後、自治会長は、「私達の町内に、世界出張医師団に参加されている医師が数人住んでおられます。その中の一人が今回、戦争に巻き込まれました。今後も色んな事があると思いますので、その対策について緊急自治会を開催します。」と住民に連絡しました。

緊急自治会では、今回のような場合に限らず、地震など緊急事態が発生した場合の助け合い、情報収集等について話し合い、古宅内科医の女房に、現状どうなっているのかを確認しました。

「どの家族も現地の近くで治安の良い場所に行く事を希望していますが、安全な場所の確保ができないとの理由で、許可されていません。私も今直ぐにでも行きたいのですが、どうにもなりません。」と心配そうでした。

自治会長は、「古宅さん、食事などはどうされていますか?心配で食欲がないのは解りますが、今確りと食べておかないと、肝心な時に倒れますよ。これは、アメリカ軍兵士として実戦経験のある霧島外科医の奥さんからの受け売りです。」と助言しました。

霧島外科医は小さな声で、「そうか、何かトラブルがあり、心配で食事が咽喉を通らない時でも、マリはいつもガツガツと食べていたのは、そういう事か。だから人の心がない鬼だと言われるのですよ。」と笑っていました。

マリは、「実戦経験のない人が何を言っているのよ。実戦では体力勝負よ。戦いが長引けば先にスタミナ切れした方が負けです。負けると言っても、ゲームに負ける訳ではなく、実戦で負けるとは、死を意味します。誰が何と言おうが、食べられる時に食べなければ死にます!」と怒りました。

自治会長は、「その関係役員として、ある程度事情が解っていて、実戦経験のある霧島外科医の奥さんを推薦します。」と提案しました。

反対意見がなかった為に、マリが取りまとめ役になりました。

会議中、霧島外科医の携帯に世界出張医師団から着信がありました。

「現地で医師が不足しています。あなたに現地へ行って頂きたい。これは強制ではありませんし、命の保証もできない事を考慮した上で返答して頂きたい。」と連絡がありました。

霧島外科医は、「命の保証はない事を承知の上で、あなた方に協力しています。医師が不足しているのでしたら、今直ぐにでも立てます。」と積極的に協力しようとしていました。

世界出張医師団は、「航空機とパイロットの手配を先程からしていますが、なかなかつきません。もう少し待って頂けませんか?」と準備中だと伝えました。

霧島外科医はマリの肩を叩きながら、「今直ぐにでも飛んでくれるパイロットに心当たりがあるので、航空機はこちらで手配します。」と準備ができてないのでしたら、実戦経験のあるマリが頼りになると考えました。

世界出張医師団は、「大丈夫ですか?飛行するのは治安の良い場所ではなく、戦地ですよ。ミサイルで撃墜される可能性もあります。」と普通のパイロットには無理だと忠告しました。

霧島外科医は、「私の女房は、元アメリカ空軍パイロットで、空中戦の経験も何度もあります。そのような場所への飛行は、普通のパイロットより女房の方が安心して任せられます。」とマリの事を説明しました。

世界出張医師団は、「そうですか、解りました。航空機とパイロットについては、お任せします。」と空中戦の経験がある空軍パイロットだったら間違いないと判断しました。

その後、霧島外科医が電話で打合せ中に、マリは古宅内科医の女房に、「どうやら自家用機で今からでも現地へ飛ばなければならないようなので、もしパスポートを持っているのでしたら、一緒に連れていってあげるわよ。但し安全な場所の確保ができてないとの事ですので、命の保証はできませんけれどもね。どうしますか?」と現地に行きたそうでしたので、確認しました。

古宅内科医の女房は、今回の事件に巻き込まれた他の家族に連絡する事を希望しました。

その後、色々と相談して、出発は明朝と決まりました。霧島外科医の他に、古宅内科医の女房と、この事件に巻き込まれた家族で、霧島外科医の同僚である外科医の女房が偶々パスポートを持っていた為に、同行することになりました。

マリは、「心配な事は解りますが、いざという時の為に色んな物を持って行っても荷物になるだけで、身軽な服装で、荷物も極力少なくしないと、移動だけで体力を消耗します。」と忠告しました、

翌日マリは離陸前に、「本当に良いのですね。今ならまだ間に合いますよ。昨日も説明したように、私が元空軍パイロットでも撃墜される危険性もあります。安全が確保されてから、後で現地に向かう方法もあります。」と最後に確認しました。

皆は、「一刻も早く、現地に行きたい!主人一人を死なせるなんて耐えられない。せめて一緒に死にたい。リスクは覚悟しています。」と決意は固かったので、マリは念の為にパラシュートの使用方法を説明しました。

マリは離陸後、飛行中スピーカーで、「アメリカ空軍と交渉した結果、軍用機を借りられました。一度沖縄空軍基地へ着陸して、軍用機に乗り換えます。」と伝えました。

通常は退役軍人に軍用機の貸出はしませんが、マリの上官がマリの操縦技術を失いたくなく、軍用機の貸出を許可したのでした。

着陸後、古宅婦人は、「マリさんの自家用機も軍用機ですよね。何処が違うのですか?」と、その違いが理解できず、不思議そうでした。

マリは、「私の自家用機は武器などの装備は全て取り外している為に、攻撃されても応戦できません。それと乗り換える軍用機は私の自家用機より小型で旋回能力などに優れています。空中戦ができるかどうかだけです。」と返答しました。

マリ達は沖縄空軍基地で中型の軍用機に乗り換えて、戦地に向かいました。

マリはスピーカーで、「ここからは大変危険です。ミサイルや敵戦闘機などに攻撃される可能性があります。止むを得ず急旋回や宙返りなどのアクロバット飛行をする可能性があります。安全ベルトを確りと締めて、何処かに捕まって下さい。事前に判明すれば、非常ベルでお知らせしますが、悪までも事前に判明した場合だけです。」と説明しました。

皆は安全ベルトを確認して、手を合わせて、無事に到着する事を祈っていました。

その数分後、マリは非常ベルを鳴らしました。皆は何処かへ確りと捕まったり、お互い抱き合ったりして目を閉じていると、直ぐに空中戦になりアクロバット飛行の連続でしたが、マリはなんとか切り抜けて、無事、現地に到着しました。

現地到着後、全員防弾チョッキを身につけて、マリはアメリカ陸軍と交渉して、自動小銃などの武器と、機関銃を装備しているジープを借りて、霧島外科医専属の警備として、暫く現地に留まる事にしました。

霧島外科医は、「特命のゴールデンコンビ復活やな。敵兵士の他に毒蛇にも気を付けてや。」と笑っていました。

マリは、「毒蛇や他の事でも、あなたを頼りにしています。」と負傷した時はすぐに手当てしももらえそうだと期待していました。

ジープは霧島外科医が運転して、マリはジープに装備されている機関銃をいつでも発砲可能な体制を取っていました。

他二名の医師の女房は、この事件の捜索にあたっているアメリカ陸軍が警備する事になり、ここからは別行動になりました。

古宅内科医の女房は陸軍兵士に、「マリさんは、確か空軍パイロットだったと聞きましたが、マリさん一人で警備可能なのですか?」と不思議そうでした。

陸軍兵士は、「彼女は陸軍兵士としても大変優秀です。超一流パイロットでなければ、陸軍にスカウトしていますよ。ただ人身売買組織壊滅作戦の時には、“女性は商品じゃない!”と興奮して頭に血が昇っていて、失敗しましたけれどもね。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「マリさんも普通の女性なのですね。確か鬼教官と聞いた事があった為に最初はどんな人かと思っていました。」と兵士と雑談していました。

霧島外科医が世界出張医師団からの指示により現地で負傷者の手当てをしている時にマリは自動小銃を持って霧島外科医の近くで警備していました。

数日後、陸軍が敵の基地を一網打尽にした際に捕虜が数人いて、その中に世界出張医師団の医師がいました。霧島外科医の同僚の外科医は死亡、古宅内科医も重症を負っていました。連絡を受けて、現地へは軍医や医師の家族らが向かいました。


次回投稿予定日は、1月2日です。

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