突入!
「で、ここがブラックファングのアジトっすかー」
「やっぱりぃ、小説だと一瞬で着くわぁ〜」
「小説…?なんのことですか?」
「あぁ、雉羽田は自分が小説のヒロインだと思ってるんだ。気にするな。」
犬養は目の前にある小さな町工場を見渡した。
寂れて、人の気配が全くない。
「本当に、この建物であってるのか?」
「そのはずなんですけど。」
桃は犯罪者ノートを見直した。
たしかにここの住所が書かれている。
「まあ、なんとかなるでしょう。突入あるのみです!」
と言うやいなや桃はアジトの扉をけやぶり、中に突入した。
きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…
桃は悲鳴をあげた。
「大丈夫か!?」
犬養は驚いて、アジトの入り口に駆け寄った。と、同時にあることに気づく。
「何かあったんすか!」
「大丈夫ぅ〜??」
猿飛たちが駆け寄ってきた。
「馬鹿!お前たち!止まれ!!」
犬養の命令もむなしく、猿飛たちは犬養にぶちあたる。
案の定、犬養はバランスを崩し、入り口にある落とし穴に落ちた。
落とし穴は深さ3メートル程だった。
犬養達四人は仲良くそこに落ちたのだ。
「まさか、こんな古典的な手にやられるとはな。」
犬養は頭を下にして逆立ちのような体制だ。
「何してるんすか。ボス。」
猿飛は生来の身体能力で見事足から着地したようであった。
雉羽田と桃もまた然りである。
「おめぇらが突き落としたんだろーが!!…たくっ!」
犬養は重々しく上体を起こした。
「痛ちちち…。嬢ちゃん。どこで仕入れたんだ。ここがアジトだって情報を。」
どうやら腰を打ったらしい。
「どこって。喫茶店で知り合ったおじさんです。」
その答えに犬養は唖然とする。
最近、唖然とする機会が多い気がするが、予想の斜め上をいく桃の馬鹿さに唖然としない奴はいないだろう。
「知り合ったおじさんって…。」
「正確に言えば、迷子の子供を連れながら、おばあさんの荷物をもって、轢かれそうな猫を庇った時に、目の端でチンピラに絡まれてるおじさんが見えたので、助けてあげたら紅茶を奢ってくれました。」
「………。」
人助けのオンパレード過ぎて少し引く。
本当に正義感の塊である。
その時誰かの声がした。
「おじさんってのは酷いなぁ。これでもまだ、24だぜ?」
上から降ってきた声に犬養達は顔を向けた。そこにいたのはブラックファングのボスの鬼頭だった。
「あ!あの時のおじさん!」
「やぁ、嬢ちゃん。あの時はどうも、助けてくれてありがとう。」
鬼頭は落とし穴を覗きながら、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「どういたしまして。」
正直に桃は常套句を述べた。
まだ、自分が目の前の男に騙されたと気づいていないようだった。




