桃太郎
今回は桃視点です
騙された。騙された。騙された。
信じてたのに。あの人たちは裏切らないって!
町工場を出て、適当に走っていると、いつの間にやら大きなお寺に着いた。
そこは、犬養たちと最初に出会った場所だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」桃は寺の門をくぐり中に入ると、大きな樹の下に腰を下ろした。柳の木だ。
桃は小さい頃の記憶を思い出していた。
桃田家は代々正義の味方の家柄で、桃も小さい頃から正義感が強かった。
決して嘘をつかず、決して驕らず、決して正義を曲げない。
そんな正義の塊の桃に、友達はいなかった。
簡単な話。やましいことがない人などこの世にはいない。
桃といると自分が汚く見えてくる。
だから、いつも一人であった。
「桃ちゃんって真面目だよね。」
「ちょっとからかっただけじゃん。」
「きびしー」
「人に正義を押し付けないでよ。」
「みんながみんな、桃ちゃんみたいに強くないんだよ。」
「協調性ないよね。」
「嘘つくってそんなに悪いこと?」
「桃ちゃんは頭堅いから。」
「桃ちゃんひどい。」
「桃ちゃん人の気持ち考えたことある?」
「桃ちゃん。」
「桃ちゃん。」
「桃ちゃん。」
「桃。」
誰かに呼ばれて、桃は顔をあげた。
いつの間にか寝ていたようだ。
あれから30分は経っている。
「よぅ、寝ておったのぉ。桃。」
上を見上げると、柳の枝に男が腰かけていた。
「どーも、お初にお目にかかる。桃太郎と申す。」
柳の木の下では、幽霊が出るという。




