昔話
勇者と魔王の昔話
昔々、この世界にはたくさんの種族がいました。
鍛治が得意で力の強いドワーフ族。
とても頭が良く魔法の使えたエルフ族。
泳ぐのが得意で水の中だと1番の海魔族。
とってもすばしっこくまるで動物の様な獣族。
その他にもいろいろな種族がいました。
それぞれの種族は自分達の住む場所を増やそうとたくさん戦いました。
戦いはどんどん大きくなっていきます。
もちろんたくさんの種族が死んでいきました。それでも戦いは終わりません。それどころか大きな戦争になってしまいました。
それを良くは思わなかった神様がある1人を送り出しました。
戦場に突如現れたその方に群衆は襲いかかります。
しかしその全てを薙ぎ倒す力、大規模な範囲魔法を扱うその方に誰も敵いません。
いつしか戦いは終わっていました。
みんなその方に目を奪われています。
すると、持っていた剣を掲げ
『これからは私がお前達を統括する。
全てを捧げろ』
その強さに恐怖また歓喜の声が戦場に響き渡る。その場に居たほとんどの種族がその方にひれ伏し配下となりました。
その方は配下に付いた種族を魔族と統一して呼び、いつしかその方は魔族の王。魔王と呼ばれるようになりました。
魔王は領地や人種の問題には時に力で、時に話で民主からの支持を得ました。
そんな中ある種族は魔王の配下に付きません。
人族です。人族は非力で賢いわけでもなくこれと言って優れた点は無い劣等種族と呼ばれました。
彼らは魔王の配下に付くことを恐れたのです。自分達が非力なのだからいつしか滅ぼされるのでは無いのかと。
だけれどもやはり弱い人族は領地などほとんど持ちません。
そんな中1人が魔族の領地を奪還しました。
人族でありながらエルフの魔法に似た者を扱い人族の繁栄に貢献するその人を人族では勇者と呼び、勇者から人族でも扱うことの出来る魔法を広め、人族は領地も力も持つことができたのです。
それを快く思わない魔王は魔族達を使い人族を滅亡させようと考えました。
しかし戦う術を得た人族は他の種族にも対抗できる力で反撃します。
だけれども襲撃は日々続きます。
そんな中勇者が襲ってくる魔族の大元である魔王に挑みます。
魔王と勇者の戦いは幾日もかかりましたがある日を境にその音が聞こえなくなりました。魔族も人族も戦いを止め勇者と魔王の元に駆けつけます。
しかしそこに2人はいません。
残っていたのは見たこの無い、それは大きな黒い大剣と2本の美しい刀でした。
大剣は魔族のドワーフが打った剣。
2本の刀は人族が打った刀。
おそらく魔族の剣は魔王の。
人族の刀は勇者がそれぞれ使ったと思われる。
魔族は自分達の王を倒す人族の力に恐れました。
人族を見下す種族はもういません。
もう戦いもありません。
それぞれのこれまでに得た領地で皆幸せに暮らしているのです。
その後、勇者と魔王は人族と魔族に大いなる貢献をした事により神として崇められました。
ですが不思議な事にみんな2人の顔も名前も覚えて無いのです。
ですが勇者と魔王。
大剣と2本の刀。
そこには確かに戦いの印があったのです。