神の雑談
『…行ったか』
秀俊が消えた後も黒鎧の神は消えずにその場に残っていた。
あの男は我から見ても良き人材だ。物の通りをわきまえておる。あの愚か者とは違う…我と同じ目をしておった。
『それで、何時まで隠れておる』
『あははーばれてたかー』
ひょこっと顔を出し舌を出してウィンクする。
『愚か者人の子よ。お前の事は嫌でも分かる』
そういうと黒鎧の神は座り込む。
『お前と二人で語るのは何時ぶりだ』
『お?堅苦しい言葉止めたんだ。いいよいいよ僕としても堅苦しいの嫌いだし。てかお前の事大っ嫌いだし。そうだねー僕がお前を殺して殺された時以来じゃない?』
先ほどまで亮治と話していた彼女も座る。
『お前は言葉が過ぎる。何故、力の事も話さず送り出す』彼女の言葉を無視して話す。彼女の喧嘩腰の口調とは違い単調に。
『だってー聞かれたら答えるのが神様ってもんでしょ?僕はあの子の事好きだし。ほら姿見せた途端胸にばっか目が行くんだよ』彼女は暴力的な胸を両手で挟む。
しかし黒鎧は目を伏せ
『下品だ』
『あーそういうとこも嫌い。死ねよ』
笑いながら最後の言葉に恨みを込めるように
『そっちの子はどう?僕の子と対照的でしょ?お前みたいに鬱陶しい子?』
『…』黒鎧は無言だ
『あー無視した。本当そういうとこ昔から嫌い』
彼女は茶化す様に言葉を続ける。
『同じ神様になってもお前は嫌いだ。僕の選んだ可愛い子にお前の選んだ子なんて殺されろ』
楽しげに話すが彼女の目だけは笑っていない。殺気を放っている。
『あの子は我と同じ強き人の子だ。そう簡単には殺せん。そして我自身神になったとしても元はお前と同じ…人の子だ』
その言葉を聞き少し彼女はたじろぐ。
『本当昔から変わらない。やっぱり大っ嫌いだ。だけど今回勝つのは僕だよ』
『奇遇だな。我も同じ所存だ』
『『なあ』』
『勇者』
『魔王』
どちらが放った言葉なのかは彼ら自身しか聞こえない。
しばらく静寂が訪れたが、彼女から切り出した。
『それじゃ僕はあの子を見てないと。可愛い子。僕と同じ様になるよ。きっとね。お前と一緒に見たく無いから僕の部屋でソレが起きるまで篭ってるから。』殺気を放ってウィンクをする。
黒鎧も無言で鏡の様な物を凝視している。
『なんだよ。チャーミングなウィンクしてあげたのに。ばーかばーか。ふん』
むくれている彼女だが先ほど亮治に見せた様に消えていく。そして散り際に
『今度こそお前とその子を殺してやる』
そう言い残して消えた。
そして静寂と黒鎧の男だけがこの空間に残った。