鈴木と神
『おめでとう!君は神に選ばれた。これから始まる第二の人生を楽しんでね』
目の前のソイツは妙に楽しげである。
「ちょっと待て、俺は死にたくて…もう生きたく無いから飛び降りたんだ」
そう俺はあの世界が嫌だった。これで終わると思った。
『神は気まぐれなのさ。人間の常識には到底理解出来ないだろうけどね』
「だいたいなんで俺なんだ?俺なんかよりもっといいやつが居ただろ?」
『僕達の目の前で二人同時に死んだって事もあるけども、君だからいや、君達だから選んだって言ってもいいかもね。こんなにも対照的な二人が揃うなんて僕は運がいい。』
「二人って…俺は一人でビルから飛び降りた。一人で死ん『君が飛び降りた真下に居たんだよ、彼。君の死に巻き添えになった形でね』
亮治は頭の中が真っ白になった。
俺が他人の命も奪ってしまった。俺の両親はもう居ないが相手はどうなんだろう?残った遺族や殺してしまった相手にどうすればいいのだろう…
『あーもう死んだ世界の事は考えなくていいよ。もう死んだんだし。それに殺した彼もきっと会えば感謝してくれるよ』
「感謝?なんでだよ」
『君と一緒で彼も死にたがってたから』
「だからって人を殺したんだ。そんな事でそれを償えるかよ」
『たった一人殺しただけだよ。今からはもっともっと沢山の人を殺すのに何を言ってるの?』
「…は?」
『おっと大事なことを伝えて無かったね。よく聞いてよ』
『君の運命は二つ。
魔王を殺す勇者になるか?
勇者を殺す魔王になるか?
さあどちらになるかな?』
何を言ってやがる?勇者?魔王?
『まあ混乱するよね。いいよいいよ。まだ今決める事じゃ無いし。これから君達はいろいろな困難がある運命だからさそれを乗り越えて決めちゃってね』
「なんだよそれ?訳わかんねえ事ばっか言っ『大丈夫運命に従えば何も悪い事ばかりじゃないよ』
「運命運命ってそれ以外にもなる可能性だってあるだろう」
『君達はその二つしかならない。神が言うんだよ?もうそこだけは決定事項だから』
突拍子すぎて言葉が出ない。聞きたい事が多すぎて頭の回転が追いつかない。だがソイツにはその考えが無いようで
『そろそろ話すの疲れてきたから僕の方で区切り付けさせてもらうね。
今回君達と話させて貰ったけど次会うのは10年後。ある事故が起きてからだから。その事故もすでに運命付けられているから逃れる事はできないよー。きっといろんなものを失うかもしれないけど君達の成長には大切なものだから。』
助言は毎日くれる訳じゃないのか…10年後何があるんだ…
『君達からそれぞれの道を聞くのはもっと後きっとその頃にはもう決断してるだろうしね。それじゃー』
ソイツが消えていく。綿毛のように細くなっていく。
「待て。せめてお前の名前を」
『名前を教えるのはルール違反だからね。でも君達はいずれ知る事になる。知りたくもない運命を。抗う事のできない運命を。そして僕達の事も。』
最後まで運命運命運命ってこいつは
『でも…名前はダメだけどこれならいいかな?』
その一言でソイツの全身が鮮明に見えた。
奇抜着物姿
腰には刀の様なものを二つ携える華奢な身体付き
腰まで伸びた長い黒髪
胸元は平均以上のメロンサイズ
ソイツは…いや神だと名乗ったのは若い女の子の姿だった。
『僕を知ったら君は後悔する。これは運命だから』
そう耳元で聞こえた…
急に意識が遠退く…めまいのようで立っていられない
『さようなら…鈴木亮治くん
また会おうね◯◯』
最後の言葉が聞き取れない…あぁ、老衰ってこんな感じなのかな?次は自分で命なんか立ちたくないや…
そして深い闇に堕ちていく