表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

或るあるシリーズ

或るペットショップの一生

作者: 林 秀明

自動ドアが開いた瞬間に生きた臭いが身体に纏わりつく。手で服を払う仕草も、この場面では意味はなさないが、なぜかやってしまう人間の心理が働く。


ペットショップ……


たいした用事はないのについつい入ってしまう娯楽園。

あの犬はもう引越したのかな? 新しい仲間の猫が入ったかなど自分のライフワークスタイルの一部として、その進捗状況を欠かせずにはいられなかった。


正面の自動ドアを開け、前列のペットフードには目もくれず奥の犬、猫広場へと向かう。

生憎猫は布団を被せたようにみな静まり返っていたが、犬は我が者振る舞いで自己主張を前足を立てて、アピールしてくる。


「なぜ、そんなところいるんだい?」

「人間の巣に捕まってしまったのさ。ここの連中はこの刑務所で一生を終えるか、人間の奴隷として過ごすか、みな悩んでいるんだ」

「君はどうするんだい?」

「俺はここに居たいが、買われて他所に行く事になった。でもまた戻るだろうな」

「なぜなの?」

「俺は普段大人しく見られがちだが、ほんとは凶暴なくらい暴れるのが好きでな。いつも誰かを殴っていたい、そんな感傷にかられるんだ。でも普段はそうしない。なぜだか分かるか?」

「いや、わからない」

「人間の期待を裏切る事に興奮を覚えるんだ。買って損したと思うように……前の家では家中の家具を壊してやったよ。温和な飼い主がえらく怒ってね。その瞬間俺はまたここに戻って同じ事を繰り返すのさ」


「……お客様」

店員の呼びかけによって犬とのテレパシー会話は中断した。犬がこう思っていたとは……

「本日、じゃんけんをして勝つと半額でこのワンちゃんを買えますが、いかがですか? いつもいらっしゃってますので」

「いや、やめとくよ。やっぱり僕には動物を買うことは難しいのかな」


私はそう言って、少し落ち込んだ顔で店を後にした。

動物を買いたいけど、買えない人の理由……それぞれであるが、こういった理由もあるかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ