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あたたかい星に住む10人の人びと

作者: moshsuzuki

是非とも小学生の世代に読んで欲しいと思っています。そして、その世代が自分の親に向かって「これ以上地球を汚さないで欲しい」と言うきっかけになれば、と思っています。

30ページ弱ですので親御さんからお子さんへ読んであげれる量かなと思っています。

 広い広い宇宙のあるところに小さな小さなあたたかい星がありました。

 その星には水があり、土があり、空気がありました。人びとが生きるために必要なものを全部持っている宇宙でただ一つの星でした。あたたかく、とても住みやすく、人びとの幸せがいっぱいに詰まった星でした。


 ただ、その星には今は人は住んでいません。住むには少しあたたかくなりすぎて、みんないなくなってしまったのです。


 これはその星とそこに住んでいた10人の人びとの物語です。


     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 星は大きく3つのものから出来ていました。水、土、空気です。


 水は、この星を「海」としておおい、「雨」、時には「嵐」として大地をうるおし、「氷」として海にうかびました。また、「飲み水」として人と動物が生き、「木」が育つために無くてはならないものでした。


 土は、その大きな固まりを「陸」と呼びました。小さい陸は「島」と呼ばれました。陸や島は海に囲まれていました。人びとは陸の上に家を建てて住みました。木は土に生えました。

不思議なことに土をほると「油」が出てくるところがありました。人びとはほった油を体をあたためたり、明かりを付けたり、便利なモノを作ったり、「車」を走らせたりと色々なことに使いました。


 空気は、目には見えませんが、水と同じように人が生きるのに欠かせないものでした。  人はつねに空気をすって、はいていなければ生きていけませんでした。

人は暑すぎても寒すぎても生きられない生き物でしたが、星にはその空気をちょうどよくたもつ力がありました。空気は星をおおって、人を守ってくれていたのです。

この星で空気とよくにたものに「おなら」がありました。人がはく息にもおならはふくまれていましたが、主に油を使うときにおならが出ました。おならは空気と同じで目に見えませんが、星をあたためてしまういという問題がありました。

木がおならをすってくれましたが、木がすってくれる分より人が出すおならの方が多ければ、星はどんどんあたたかくなってしまうのでした。


 星はこれら水と土と空気とがバランスを取りながら、人が住みやすいあたたかさをたもつように出来ていました。

しかし、おならがこのしくみを少しずつこわし、星は少しずつあたたかさをましていったのです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 その星には10人の人びとが住んでいました。


 人びとは星の中でそれぞれの場所にせんぞ代々住み着いていました。

 同じ陸のはなれた場所に住んでいる人びともいれば、別の陸に住んでいる人びともいました。はなれた島に住んでいる人もいました。

 ただ人びとは住む場所がちがうだけで、せんぞを同じくした一つの小さな星の住民なのです。


星の人びとは朝起きて、モノを作ったり

売ったりしておのおのの仕事をし、ご飯を食べ、夜ねて、また朝起きる、時々遊ぶ、とみな同じような毎日を送っていました。

ただし、住む場所や生い立ち、歴史や持っている「お金」の量、そして考え方のちがいなどから、そのくらし向き、働きぶりは人によってちがっていました。


 10人のうちのひとりは「大きい人」です。

大きいひとは昔はまずしかったのですが、がんばってモノを作ったりして働いたおかげで、近ごろは使えるお金がふえてきました。そのお金で便利なモノやおいしい食べ物を買いました。(モノを作って、売って、お金をかせいで、モノや食べ物を買って、使ったり食べたりすることを人びとは「けいざい」と呼びました。)

大きい人は体がとても大きかったので、出るおならも大きく、それもじょじょにふえていきました。

大きい人は長い歴史を持ち、その歴史の中にはとてもすぐれた考えがありました。そして、それを広めた頭の良いせんぞがいたのですが、その子孫はお金もうけのことを考えすぎるところがありました。


ひとりは「ゆたかな人」です。

ゆたかな人は10人の中で一番お金を持っていました。この星にあるお金の3分の1はこの人が持っていました。つまり、けいざいが一番大きいということです。お金があるのは良いことですが、人びとはぜいたくをしてしまい、ぜいたくからはおならが出やすいという問題がありました。

ゆたかな人は近いところでも車を使いました。それもおならがたくさん出る大きな車です。また他の人びとよりたくさん食べるので、食べ物を作ったり運んだりするのにより多くのおならを出しました。また、多くのモノを消費するくらしをしていました。油を使う量が他の人びとよりだんぜん多く、この星の3分の1のおならはゆたかな人が出していたのです。


 ひとりは「まずしい人」です。

住んでいる場所では油が取れず、土が悪くあまり食べ物が作れず、モノを作る「技」もなく、せんぞの代からずっとお金がない人でした。十分な飲み水や食べ物が無く、いつもおなかがへっていました。ゆたかな人は太りすぎていましたが、まずしい人はとてもやせていて、ときには死にそうなくらいでした。

そんな状態ですからまずしい人のけいざいからはほとんどおならが出ませんでした。

 ただし、まずしい人は生きるのに必死で、森を焼いて食べ物を育てる場所にするので、その際にたくさんのおならが出ました。また、森に生える木を焼いてしまうことで、すえるはずのおならをすえなくなってしまい、結果として星におならがたまることになりました。


 ひとりは「かしこい人」です。

かしこい人はよく勉強して、がんばって働いてきたので、長い間いいくらしを送っていましたが、なんだか最近星がどんどんあたたかくなっていることに気が付き始めました。色々調べると、それは人びとが出すおならのせいだと分かり始めました。

どうにかしなくてはいけないと思い、自分のくらしやけいざいに決まりを作って、なるべくおならが出ないようにしてみました。

 するとどうでしょう、しばらくすると自分のおならがどんどんへりました。

だけど、それでも星はどんどんあたたかくなっていきましました。

かしこい人は自分だけではなく、星の人びとみんなが決まりを守らないと、星があたたかくなりすぎるのを止められないと信じるようになりました。


 ひとりは「そぼくな人」です。

そぼくな人はふつうに働いていて、特にお金持ちでなければ、びんぼうでもありませでした。

昔の人が言った「晴れた日には田んぼをたがやし、雨の日には家にこもって本を読む」生活をしていました。

朝早く起きて、夜も早くねる。歩いていどうする。散歩を楽しむ。土地に生える野菜やお米を食べる。必要ないモノは買わない。ゆっくりと本を読む。他の人たちと楽しくおしゃべりする。

ゆたかな人とくらべると、生活は便利ではないかもしれません。モノやお金や食べ物もあまりありません。けれど、それでいながらそぼくなことを楽しめるので、不自由をそれほど感じないし、いつも心が幸せな人でした。


 ひとりは「ひねくれた人」です。

何にひねくれているかというと、星が最近あたたかくなってきているのはおならのせいだという「かしこい人」の意見に対してです。

この人は何をして働いているかははっきりしないのですが、体からちょっと油のにおいがしました。


 ひとりは「モノを売る人」です。

モノを売る人は手先が器用なため、新しいモノを作って売ります。新しいモノは高く売れ、お金がたくさんもうかるため、研究を欠かさず、常に技をみがいていました。

たくさんモノを作ると、おならもたくさん出ます。その時は「他の人がおならをへらした分」を買ってきて、自分の+の分と他人の−の分を合わせておならは出すぎていない、とみんなに言っていました。

また、その頃売れていたモノは出るおならが少ないモノでした。それに関する技を毎日みがいていました。完成した技は「この技はぼくが考えついたからまねしないこと」という約束を他の人びとから取り付けることがありました。 

 おならをへらすすぐれた技を持ちながら、それを使って何をすべきかみんなに大きな声で伝えられない心の弱さがモノを作る人にはありました。


 ひとりは「島に住む人」です。

たくさん魚が取れる青い海に囲まれた小さな島に住んでいました。島はとても小さくて、売るほどの食べ物を作ったり、モノを作る大きな工場を建てたりすることが出来ませんでした。砂浜がやわらかすぎて油をほることも出来ませんでした。

 海がおだやかなせいか、けいざいにあまり一生けんめいではなく、お金はあまりありませんでした。それでも、空が晴れているせいか、いつも心が幸せで、心の底からこの島を愛していました。

 日ごろあくせくせず、多くのモノを消費せず、ゆったりとくらしていましたので、おならはほとんど出ませんでした。


 ひとりは「氷の上に住む人」です。

この星の一部の寒い場所では、海の上に大きな氷がうかび、その上で昔からくらす人がいました。

 氷の上に家を建て、氷の上に住む動物を食べ、ぶ厚い服を着てくらしていました。氷の上ですから毎日すごく寒く、ふぶきがふいたりしました。

ただ、最近はあたたかい日がふえ、なんだかすごしやすいなと感じていました。あたたかくなって魚がたくさん取れるようになって喜んでいました。

ただ、あたたかくなったせいで氷には変化が起きていました。氷の陸のはじっこがくずれ始めていますし、氷の川はとけ始めていました。また、氷の上に生えていた木はかたむいてしまいました。それに、陸に住んでいる白いくまも少なくなりました。


 最後のひとりは、いつもみんなから見えるところにいない人でしたので、後でお話することとしましょう。

その人には家はありませんでしたが、みんなの心に住んでいました。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 その9人は、おたがいモノの売り買いをしたり、おたがいを行き来したりしながらも、それぞれの考え方を持って、それぞれのやり方で、それぞれの生活を長い間送っていました。


ただ、くらしている中で、星があたたかくなってきている、星のいろんなことが変わってきている、というのは全員がおのおのの場所で感じていました。

そこで、かしこい人がみんなに呼びかけて、星の真ん中にある星で一番高い山のてっぺんで「てっぺん会議」をすることにしました。


     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 山のてっぺんにはかしこい人、大きい人、ゆたかな人、まずしい人、そぼくな人、ひねくれた人、モノを売る人、島に住む人、氷の上に住む人の9人全員がそろいました。


かしこい人が会議を始めました。

「みなさん、本日は『てっぺん会議』にお集まりいただきありがとうございます。今日は、近ごろみんな感じていると思います、星があたたかくなってきていることについて話し合いたいと思います。まず、みなさんのところでは最近どんな感じですか?」

大きい人、「そうだね、毎年ちょっとずつあったかくなってきている気がするよ。」

そぼくな人、「昔にくらべると冬はそれほど寒くなくなってきたね。」

モノを売る人、「いやいや、今年の夏は暑くてかなわなかったよ。」

 かしこい人が続けます。「そうですね、おそらくここにいるみんながここ何年かでどんどんあたたかくなってきていると感じていると思います。では、最近住んでいる周りで何か変わったことはありませんか?」

 「去年大雨があったんだけど、なかなか雨が上がらなくて、風はすごく強かったし、家の床はびしょびしょになるし大変だったよ。」とゆたかな人。

「こっちは雨が少なくって、飲み水がすごくへっちゃってのどがかわいてしょうがなかったよ。空気がかわいて山火事が何回もあったしね。」とまずしい人。

「住みかの氷がとけちゃって、ペンギンや白いくまをすっかり見なくなったね。」と氷の上に住む人。

「砂浜がへって、波打ちぎわがうちに近づいてきたような気がするんだよな。」と島に住む人。


「ありがとうございます。そうですね、たしかにここ山のてっぺんから、みんなが教えてくれたような雨雲、山火事、乾いた川、氷がとける様子、へった砂浜を見ることが出来ます。」

みんなでいったん席を立って、部屋の大きな窓からまわりの場所を見下ろしました。遠くて小さいですが、たしかに星の様子が見えました。みんな少しこわくなりました。


かしこい人、「今、みんなに見てもらったように、星では今、間ちがいなくおかしなことが起きています。みんな住んでいるところによって、起こっていることはちがうけど、その原因はやはりいっしょのものだと思います。」

「それはおならだって言いたいんだね?」とひねくれた人が小さな声で聞きました。

実はみんな、おならが星をあたたかくする、おならが星にたくさんたまりすぎると色々悪いことが起きるということは、昔から聞いていて何となく知っていたのです。

「その通りです。色々調べた結果、ぼくたち人間が出したおならが原因だということは明らかです。今日みんなには、この星を昔のように住みやすい星に戻して、ぼくたちの子供や孫たちにこの星を残すために、おならを出す量をへらそうとていあんしたいのです。」

みんなだまって聞いていました。

「みんなでがんばっておならを半分にしましょう。モノを作る時も半分。ふだんの生活も半分。星を守るためだから、みんないいですよね?」かしこい人はにっこりとほほえみながら問いかけました。

さっきは小さな声だったひねくれた人が今度ははっきりと言いました。「待ってよ。あたたかければ、冬はすごしやすくなるし、木が早く育っておならをすうでしょ?」

かしこい人の返事を待たずに、モノを売る人がしゃべり出しました。「それじゃモノが作れないよ。それにみんなモノを買わなくなるから仕事がなくなっちゃうよ。」

 大きい人もうなずきました。

ゆたかな人が続きました。「生活は急には変えられないよ。車は便利だし、暑い時にも寒い時にも気持ちよくすごすためにも油を使いたいしね。」

島に住む人がゆたかな人におこりました。「それはぜいたくってものだ。金持ちの人たちは今までおならを出し続けていたんだから半分にすべきだと思うよ。だけどおれらはそんなの知らないよ。」

まずしい人が島に住む人をおうえんしました。「そりゃそうだ。ぼくは生きるためには森を焼いて畑を作って、ご飯を炊かなきゃいけないから、おなら半分なんてむりだよ。」

そぼくな人は半分にすることにさんせいで、「ぜひそうしようよ」と言いましたが、反対する人びとの声が大きすぎて、かき消されてしまいました。

氷に住む人も、今どうにかしないといけないとは感じましたが、魚がたくさん取れるようになったことを思い出し、だまってしまいました。


みんな星の今の様子を見下ろした時にはこれはあぶない、こわいと思ったくせに、自分のことになるとおならをへらすことに反対します。

 この後も会議は続きましたが、「半分は無理だ」というばかりで話が進みませんでした。


困ってしまったかしこい人は、最後に「とりあえずみんながんばって、少しでもおならをへらすこと」として会議を終えました。


     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 会議の後、人びとはそれなりにおならをへらすように努力はしてみました。ただ、人びとが出すおならの量はそのころどんどんふえていましたので、「ちょっとへらしてみるか」くらいでは、半分はおろか、前と同じくらいにするのがせいいっぱいでした。


そうこうするうちにしばらくたちましたが、星で大変なことが起こってしまい、急きょ第2回てっぺん会議を開かなければいけなくなりました。


      ☆☆☆☆☆☆☆☆


 第2回てっぺん会議は7人で行われました。

なぜ7人かというと、海にうかんでいた氷がとけてしまって、そのせいで海の水がふえ、島がしずんでしまい、氷の上に住む人と島に住む人がいなくなってしまったからです。


前よりだいぶ年を取ったかしこい人がきびしい顔で言いました。「みんな知っている通り、氷と島がなくなって、2人がいなくなりました。もう待ったなしです。みんなで協力し合って少しでもおならを減らさなくてはいけません。こうなった以上、目標を決める必要があります。モノ作りも、ふだんの生活も少なくともおならの量を今までの5分の1にはしなくてはいけないと思います。みなさん、いいですね?」

大きな人が答えます。「いいや、ぼくはモノ作りでおならを5分の1にするなんてどうしても無理だ。もし本当にやるのなら、モノを売る人に技を教えてもらわなくちゃ出来ないよ。」

モノを売る人はぶすっと「技はタダじゃ使わせないって、みんなと約束したろ? それに自分でおならをへらせなきゃ、その分を他の人から買ってくればいいじゃないか」と言い返しました。

かしこい人はあきれてものが言えません。

まずしい人はいらいらしました。「前にも言ったけどぼくは生きるために焼畑はぜったい必要。もしそれをどうにかしろって言うんだったら、ゆたかな人からお金をもらわなくちゃ生きていけない。」

ゆたかな人は顔をしかめながら「そりゃ少しは出してもいいけど、まずは自分で努力してからだよね。」

そぼくな人は「みんなが昔の人のようなくらしを進んですれば…」と言いかけましたが、ひねくれた人にさえぎられました。

 「この星では、せんぞ様の時代にも、自然にあたたかくなったことがあった。けどそれは長く続いた後ぎゃくに寒くなった。今回ももう少しすると自然が気温を下げるだろう。そんなに心配する必要は無いんだよ。

 それに5分の1の理由が分からない。みんな便利な生活を今まで通り続けたいだろ?おならが出ても多少の油は必要ってわけさ。」


かしこい人は目を真っ赤にしてうったえました。「こんな時にみんな何を言ってるんだ!技についての約束なんてどうでもいいし、おならをへらす分を買ったって星全体ではおならがへらないし、お金なんて持ってたって星が無くなったら何の意味もないし、油を売るためにへりくつこねてる場合でもない。みんな本当は最後どうなってしまうのか分かってるんだろう?ぼくらが生きてる間は大丈夫かもしれないよ。けど、ぼくらの子供は、孫はどうなる?なんで…どうして…」かしこい人はこれ以上はなみだでしゃべれませんでした。みんな気まずい思いでその会議は終わりました。


その後、その代の人びとはてっぺん会議をふたたび行うことはありませんでした。


       ☆☆☆☆☆


 そして時がすぎ、7人の子供の代になり、星はさらに大変なことになりました。

ゆたかな人を、それまでに見たことがないような大きな嵐がおそい、ゆたかな人はいなくなりました。

まずしい人は見たことがない虫にさされ、だれも知らない病気にかかり、動かなくなりました。

ひねくれた人は、せっせとほって売っていた油がついに無くなり、そしてお金が無くなり、おなかがへってたおれました。


その他の4人は海がどんどん陸の内側におしよせてきたので山に住まいを変えました。前にくらべて山では食べ物を手に入れにくくなりました。また、気温が上がったせいで動物は見なくなり、植物はほとんど育たなくなりました。そして、食べ物と飲み水を手に入れるのはとてもむずかしくなりました。


       ☆☆☆☆☆


 さらに時がすぎ、4人の孫の代になり、星では信じられないおそろしいことが起きてしまいました。

食べ物、飲み物がほとんど無くなり、苦しくなった大きい人とモノを売る人がうばい合いを始めたのです。おたがい相手をたおせば水と食べ物が手に入ると考えました。

ただ、二人とも力が残っていなかったのでその戦いは、両方がたおれるだけの結果となりました。


        ☆☆☆


 そしてその後、星はどうなってしまったのでしょうか?それは先ほどお話していなかった最後のひとりのみが知っています。


そうです、そのひとりとは神様です。


神様は大昔に水、土、空気でこの星を作り、体、頭、心で人を作りました。星は、水が空からふり、土にしみ、空気にまじって空に上がるように作られました。人は、頭が体を動かし、体でしたことを心で感じ、心が頭に作用するように作られました。


神様はこの星の出来事を見ながらこうつぶやきました。

「星は長らく自らの3つのバランスをたもってきた。人は残念ながら自らの3つのバランスをくずしてしまい、星の空気をよごし、星のバランスをもこわした。

 人にはすぐれた頭があり、自らの生活を良くするため、便利にするため色々なものを作ってきた。しかし、体がその便利さになれてしまい、心がどんどんわがままになり、ぜいたくになった。そして、そぼくにくらす心、自分の子孫やこの星の未来を思いやる心、星の人どうし助け合う心をわすれてしまった。

ただ、私は、大きな建物や、車のようなふくざつな機械をつくれるほどの、人のすぐれた頭をそれでも信じていた。その頭を使って、みんなでやるべきことを決め、少しだけわがままとぜいたくをがまんして、決まりを守り、また星を元のような楽しくて幸せで住みやすい星にもどせると信じていた。だが、なぜこんなことに…」

それは人を作った神様でもいくら考えても分からないことでした。

 神様は人のおろかさをなげき悲しみ、誰も見えなくなった星を見て泣き、そして星を去りました。



         ☆

 

 カエルを熱いお湯の中に入れると、熱くて飛び出します。ただし、カエルを水の中に入れ、じょじょに温めていくと、カエルは水温が上がったことに気付かずに死んでしまうといいます。


 では人間の場合どうでしょうか?

 人間はすぐれた頭を持ち、温めているその火を止めることも出来ます。

 ただし、わたしたち人間はその頭で、自分が生きている間は火を止めずとも、お湯が死ぬほどには熱くならないことが分かってしまいます。

 わたしたち人間は、自分たちが生きている間は温かなお湯を楽しんでいます。一方で、子供と孫たちに対しては、自分が楽しんだ後に熱いお湯を残し、それにかれらを入れて、今まさにふたをしようとしてしまっているのかもしれません。

                 (了)


今後地球はどうなってしまうのか?

今人類は何をしなければいけないのか?

経済、エゴ、欲望、快楽、政治などを超えて考えなくてはいけないことがあると思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] キレイにまとまっていて、面白いお話でした。 ただ語り口調が子供向けで、比喩や言葉の言い回しは小学生には厳しいのかな、という感じがします。 私は小学生の家庭教師をしていますが、小学生の大多数…
2008/06/03 08:43 ライスフィールド
[一言] 小学生におならの比喩が伝わるか疑問でした。本当におならを我慢してしまう子が出てしまうのでは‥と。良い作品だと思うのですが、もう少し推敲したものを読みたかったです。
[一言] 素直に面白いが童話としては、テキスト量は不適切かな? 童話としては、ハッピーばんばんざいでの終わり方の方が良かったと思うが、総合的に見てやはり良かったです。
2008/02/22 16:26 リップルスター
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