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最強タッグ誕生

 それからはトントン拍子でことが進んでいった。

 ナカムラさんのお屋敷に積まれていた在庫の山は、アレヨアレヨという間になく減っていき、またたくく間になくなってしまった。あわてて増刷をかける。

 元々どの本も1000冊とか2000冊程度の小さなロットでしか印刷していなかったのだが、5000冊…中には1万冊以上も売れる本まで出てくる始末。

 それもこれも全部、ユウキ君のおかげだった。


「一体、どういう魔法を使ったの!?」と驚く私。

 それに対して、こともなげに答えるユウキ君。

「いや~、別にそんなに大したことはしてませんよ。言ったでしょ?オレ、こういうのに向いてたんだって。小説を書くのは得意ではなかったけど、誰かが書いた小説を売るのは得意だったっていう。それだけのお話ですよ」

 なんにしても、作った本が売れるのはいいコトだった。

 おかげで、交通費どころか、まともに給料を払えるようになり、作家には印税が支払われるようになった。それも販売価格の20%とか、そのくらいの額で。

 こうして、ナカムラ書房は出版社として機能し始めた。


 私が小説読み師としてつちかった能力で、次から次へと世に出ていない隠れた才能を発掘してくる。ナカムラさんが資金を出し、本として出版する。完成した本をユウキ君が売り歩いてくる。最強タッグの誕生だ。

 1度ルートができてしまえば、あとは楽だった。次からは、わざわざ書店に売り歩きに行く必要はなくなり、電話やメールやファックスで注文が入ってくる。それに応じて在庫を確認し、指定された本を発送する。その為に、新しく社員やアルバイトを雇った。いつまでもナカムラさんのお屋敷を使わせてもらっていうわけにもいかなくなり、新しく倉庫と事務所を借りた。


 ナカムラ書房は、物凄いスピードで急成長をげていき、いっぱしの企業として名をせるようになっていった。まだまだ戦学社せんがくしゃのような巨大出版社と肩を並べるまでにはいたらなかったが、それでも中規模出版社として充分に活躍するようになっていたのである。

 なにより利益率が高いのがよかった。あまり多くの在庫をかかえすぎないように、うまく調整しながら本をっていたのがよかった。その辺りは、ナカムラさんの手腕が発揮された。


 資金的に余裕が出来ると、新しい試みにも手を伸ばしていくようになった。

 利益度外視で実験的な小説も出したが、これが逆にうけて、そこそこの利益を上げたりもした。イラストと俳句の組み合わせも評判がよかった。ワタナベさんを中心に俳句をたくさん作ってもらい、それに実力はあるのだが名を知られていないイラストレーターをつれてきて、絵を描いてもらったのだ。

 特に成功したのが“2段翻訳”だった。これは、海外の埋もれた文学作品を発掘し、ふたりの翻訳家によって翻訳させるというもので、ひとりは原文を日本語に訳す役割。もうひとりは、日本語に訳されたものをさらに別の日本語に置き換えていく役割だった。これにより、元の作品のよさを生かしつつ、さらに読みやすく読者がとっつきやすい小説へと変えることができた。

 この手法は、特にSFで多用された。これまでのSF小説は、どれもこれも読みづらいものばかりで、初心者には敬遠されがちだった。2段翻訳によって、そういった層にも読まれるようになっていったのだ。それだけでなく、これまで全くSFに手を出さずに生きてきた人たちにも気軽にれてもらえるようになった。

 こうして、ナカムラ書房はさらに躍進やくしんを遂げていく。

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