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ブレイブ・シュガー再び

 そんなある日のコトだった。

 雑誌で、あの名前を目にしたのは。


 “ブレイブ・シュガー”

 インターネット上の小説投稿サイトで短期間に驚異的なアクセス数を稼ぎ、華麗にデビューした新人作家。

 その名前を目にした瞬間、私は思った。

「ああ、ユウキ君だわ。ユウキ君もプロの小説家になったのね」と。

 ユウキ君は、戦学社せんがくしゃとは別の出版社から、若手のライトノベル作家としてデビューしたのだった。

 酷い口ゲンカをして、決別してしまったあのユウキ君。あの時は、散々文句を言ってしまったけれども、あるいはそれは生き方の差であったのかもしれない。どちらが正しいとか間違っているとかではなく、純粋に生き方の差であったのかも。

 とはいえ、私は私の考えを曲げてはいなかった。

「小説には質がともなわなければならない。プロモーションだとか人脈だとかを使って大々的に売り出したとしても、それにはいずれ限界が来る。そうでなくとも、そのやり方には何か間違いがあるような気がする」

 そう思い続けていた。


 私は、さっそく本屋さんに行って、ユウキ君のデビュー作を購入してきた。

「どれどれ、ブレイブ・シュガー先生の小説は、どんなものかしら…」

 そう言って、買ってきたばかりの文庫本を読み始める。


         *


 2時間ほどして、手にした本を読み終えた私。

 正直な感想は、「ありきたりだな…」というものだった。

 どこにでも転がっている普通の小説。確かに、よくリサーチしてある。ライトノベルを読む層をよく研究し、彼らが好きそうなものを詰め込んである。

 でも、それだけだった。作者の主張も何もない。やりたいコトが見えてこない。

「ま、ライトノベルなんて、こんなものかもしれないわね…」とつぶやきながら、同時に「そうじゃないでしょ!」と私は心のどこかで叫ぶ声を聞いていた。

「そんなの嘘よ!ライトノベルであろうがなんであろうが、小説は小説!基本は同じ!作者にはやりたいコトがあって、それを書き切らなければいけない!そうして、その“作者のやりたいコト”と“読者の読みたいモノ”が一致した時、最高の傑作は誕生する!」

 誰かがそんな風に叫んでいた。


 その考え方は、もっともだ。まさにその通り。

 でも、実際に私が関わって出版した本は売れていない。純然たる事実が目の前につきつけられてもいた。

 私は、その2つの狭間はざまで揺れ動いていた。

 “いい本”と“売れる本”

 その2つの間で…

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