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プロの小説家との対決を終えて…

 編集者の用意したプロの作家たちとの対決を終え、私の生活は激変した。

 対決の直後、私はクタクタに疲れ果ててしまい、全ての依頼を断って10日間ほど休みを取った。その間、何もせずにひたすら寝て過ごした。


 ようやく動き回れるようになり、10日の間に溜まった留守電や電子メールのチェックをして驚いた。

 これまでとは比較にならないほどのメッセージが届いていたのだ。「小説を読んでくれ!」という依頼も山のようにあった。

「なんなの、これは…」と、私はひとりつぶやく。


 戦学社せんがくしゃの発行している雑誌で、大々的に「プロ対アマチュア」の戦いをあおり、その後のインターネット上の対決を見て、全国から小説家志望者たちが私の元にメッセージを送ってきたのだった。

「対決、感動しました!」

「僕も、あんな風に自由な小説が書けるようになりたいです!」

「ぜひ、私の小説も読んでください!」

「直接会わなくてもいいので、僕の小説を読んだ感想をください!」

 などというメールが続々と送られてくる。とても、1日や2日では返信しきれない量だ。

 中には「無料ただで読んでくれ!」という依頼も数多くあって、私が丁寧に「申し訳ないのですが、これはお仕事なので、そういうわけにはいかないのです」という内容の返事を送ると、「ケチ!」と一言だけ返ってきたりした。


「さすがに、これは全部こなすのは無理そうね。どうしたものかしら?」と、私は思案に暮れる。

 どの依頼を受け、どの依頼を断るか、何か基準を作らなければ。

 報酬額の大きい順に受けていくという手もあったが、それだとお金持ちの依頼にしかこたえられなくなってしまう。せっかく輝けるような才能を持っている人と出会うチャンスがあっても、それをふいにしてしまいかねない。

 なので、その方法は取りたくなかった。かといって、原稿を読むまでは、どの人に才能があるのかはわかりはしない。

 とりあえず、私はメールや電話の内容でおもしろそうな対応をした人から順番に仕事を受けていくことに決めた。そうして、順番待ちをしてもらう。それでも、どうしてもさばききれない人は出てしまう。そういう人に対しては、他の小説読み師を紹介することにした。依頼の内容から、できるだけその人に合っていそうな小説読み師を。


         *


 生活が激変したのは、私だけではなかった。

 小説対決に参加した5人の作家たちにも、それぞれ大きな影響があった。

 特に、その内の3人には、戦学社の方から直接声がかかり、雑誌に作品を載せたり、単行本を出したりと、プロの小説家としてデビューすることが約束されたのだった。


 ひとりはカメヤマさん。インターネット上で発表していた「少年戦国時代」が、ライトノベルのレーベルから単行本として発売されることが決まった。


 それから、サノさん。短期間でそれなりに質の高い作品を量産できる腕を買われて、アチコチの雑誌に短編を載せてもらえるようになった。いわば、ピンチヒッターだ。

 世の中には、締め切りを守らない作家のいかに多いことか!ほんとは、そういうのはよくないのだけど、仕方がない。どうしても書けない時というのはあるものだ。

 そんな時に、さっそうと現われるのが“クリックリー・サノ”ことサノさんだ。どんなに短い期限でも確実に守る。

「むしろ、オレは時間が短い方が燃えるタイプなの」と自分で言っていた通り、締め切りまでのわずかな時間に、確実にそれなりのクオリティの作品をあげてくる。

 そもそも、世の中に流通している小説の多くは、そこまでの質は求められていない。それよりも、一定のクオリティ以上の作品を短期間の間に書き上げてしまう能力の方が望まれていた。そういう意味で、サノさんはピッタリの人材だった。


 最後のひとりは、意外に思われるかもしれないけれども…リュウザキさんだった。

 元々、ベタな小説を書いていた人だ。そこに、私の出したアイデアが加わって、「ちょっと変わったもの」や「少し別の視点から見た小説」を、わかりやすくて、それなりにおもしろい作品に仕上げることができるようになっていた。そこを編集部に買われたのだ。


 こうして、私たちは忙しい日々に忙殺されながら、それぞれの運命を進んでいくことになる。

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