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枠を外れた小説

 2ヶ月が経過し、決戦の日まで4ヶ月を切った。

 リュウザキさんがひと段落し、私の方も、残りの4人のメンバーに目を向ける余裕が出てきた。

 すると、今度はナカムラさんがピンチだということがわかってきた。


「すまないが、ミカミカ君。私の書きたい小説は、こんなものでは入り切らないよ。登場人物を削ってしまうと、やりたいコトもできないし…」

 ナカムラさんに、そう言われてしまったのだ。

「そんな…」と、ショックを受ける私。

 今回の対決は、原稿用紙30~50枚という制限がついている。その枚数内ならば何文字でも構わないが、ナカムラさんがやりたいコトは、どう考えてもその枚数内におさまりそうはない。かといって、妥協して書いてしまうと、せっかくの持ち味を失ってしまうことになる。

 けれども、落ち込んでいる暇などない。

「わかりました。では、ナカムラさんの書きたいように書いてください。枚数の方も、あまり気になさらずに。できる限り50枚以内に収めるように。どうしても、それをオーバーするようならば、その時は後から考えましょう。とりあえず、自由に書いてみてください。こういうのは勢いが大切なんですよ!勢いが!」

 対決する編集者が用意したプロの作家たちは、きっと完成度の高い小説を用意してくるだろう。逆を言えば、それらは型にはまったありきたりな小説に決まっている。大きく枠をはずれることはない。

 つけいるすきがあるとすれば、そこだ!

「私たちは、私たちにしか書けないオリジナリティあふれる作品で勝負しよう!きっと、そこに勝ち目がある!」

 私はそう思い直し、ナカムラさんの自由に書いてもらうことにした。


 結果できたのは、私が一番最初にナカムラさんのお屋敷を訪れた時に見せられたあの原稿だった。登場人物は異常に多く、ハチャメチャで、何が起こっているのかよくわからない。あの作品に近かった。

 でも、今回の私の感想はちょっと違っていた。

「これ、もしかしたら、おもしろいかもしれない…」と、そう思えたのだ。

 あの時は、長編だったから読みづらさが先に立ってしまったが、今回はそうではない。枚数が少なめなこともあって、“実験小説”としては、なかなかおもしろいと感じたのだ。

 枚数の方も原稿用紙で62枚。ちょっとオーバーしているけれども、このくらいなら、どうにかなりそうだ。

「いいですね!これでいきましょう!」と私は叫ぶ。

「ほんとうかい?ミカミカ君?」と、ナカムラさんの方も驚いている。

「ええ。前の時は、あまりにも長すぎて面食めんくらってしまいましたが、このくらいの長さならばどうにかなると思います。初見の読者でも、『おもしろい!』と思ってもらえるかも。それに賭けてみましょう!あとは、ギリギリまで削ってどうにか規定の枚数に合わせるようにするだけです」

「よっし、わかった!」と、ナカムラさんも協力的だ。

 こうして、ナカムラさんに関しては、残りの時間を使って削れる部分を削り、できる限り持ち味も失わないようにする作業に時間をあてることにした。

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