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小説は自由でいい

 次は早かった。

 前回の訓練でコツをつかんだワタナベさんは、さっそく10日後には、私の出した「俳句を連作し、1つの物語にする」という課題をクリアーした。


「ああ~、いいですね。おもしろいと思います。以前に比べればずっと、読みやすいしわかりやすい。メッセージも伝わってくる!」

「ほんとに!?」と、ワタナベさんの方も驚いている。

「ええ、ほんとです。ところどころ意味不明な部分もあるんですけど、逆にそれもいい味を出していて。なんていうか、こう…ウィリアム・ブレイクみたいな感じで」

「うぃりあむぶれいく?」と、ワタナベさんが復唱する。

「ええ、そうです。昔の詩人です。そして、同時に画家でもあった。ウィリアム・ブレイクは、自作の4行詩のつらなりに、イラストをつけて発表したりしていた。彼にとっては、詩もイラストも独立したものではなく、1つの融合した形だったんです。この作品には、そういう雰囲気がある。少なくとも、詩のよさは共通している。この作品、誰かにイラストをいてもらうといいかもしれませんね」

「詩とイラストの融合か…そういうのは考えたことなかったな~」

「小説というのは、本来自由なものなんです。それを長い歴史をて、決まりきった形ができてしまい、様式のようなものが確立してしまった。ストーリーもそうだし、三点リーダーの使い方とか、句読点の打ち方とか、細かく指摘されるようになってしまった。そういうのは、実は小説をつまらなくし、表現の幅をせばめていってしまっている」

「確かに…」

「でも、ほんとは何をやってもいい。なんでもあり!」

「なんでもあり…か」

「そう!だから、文章よりもイラストの方が多くてもいいし、意味なんてわからない言葉の羅列でも構わない。ただ、読んでいる人にそのおもいが伝わりさえすれば!何かしらのインパクトを与え、感情を呼び起こすことさえできれば!要は“何を感じさせるか?”なんです。“どう表現するか?”じゃない」

「そういうの、これまでの僕には欠けていたかもしれないな。『小説とは形が決まっているもの。正しい日本語に従って、語彙力ごいりょくを駆使し、より高度な単語を並べ立てる。それこそがよい小説の条件だ!』そういう先入観にもとづいて書いてしまっていた。でも、そうじゃなかったんだ…」

「ですね。もっと自由でいい!もっとはっちゃけていい!心を解放し、思うままに書けばいいんです。それできっと、誰かの心に届く。世界中のどこかで待っている人がいる。その人にしか書けない、その人らしい小説を。きっと、ワタナベさんの小説を待っている人もいますよ。この世界のどこかには」

「よっし!今なら書ける気がする!これまで以上に素晴らしい小説が!極力きょくりょくわかりやすく読みやすく、それでいて自分らしい小説が!」


 こうして、ワタナベさんの心には情熱の炎がともり、バリバリと新しい作品を書き始めたのだった。

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