俳句の次のステップ
前回の依頼から数ヶ月が経過し…
ひさしぶりにワタナベさんから呼び出しがかかった。
今回は、小説ではない。
この数ヶ月間の苦心の作、ワタナベさんの詠んだ俳句の数々を見せられているのだ。
「どうですか?最初は苦労したんだすけど、段々とコツがつかめてきた気がするんですよね。最小限の単語だけで構成された究極の短文。俳句ってヤツが」
ワタナベさんに言われて、1句1句拝見していく。
「ウ~ン…そうですね」と言ったまま固まってしまう私ミカミカ。
正直、私は小説を読むのが専門だ。時には、詩やエッセイなどの文章を読まされることもあるし、自分から好んで趣味で読んだりもする。
けれども、俳句というのには、あまりお目にかかったことがない。
そこで、正直にその気持ちを、そのまんま伝えた。
「あの~…申し訳ないんですけど、私、俳句ってよくわからないんですよね。自分で『俳句を詠め』だなんて言っておいて」
「はぁ…」と、明らかに失望した様子のワタナベさん。そりゃ、そうだ。
「だから、季語だとか俳句の基本だとかがわかっているわけじゃないんですよ。どういう単語を使うべきだとか、どういう法則に則って作られているのかとか」
「はい」
「でも、これを1つの作品として読むなら…つまり、小説の一種だと思いながら読むとすると…」
「読むとすると?」
「おもしろいと思います!」
「おお~」と、感嘆の声を上げるワタナベさん。
「これまでのワタナベさんの書く小説は、とにかく無駄な言葉が多かった。修飾語なんかもいっぱいくっついちゃってて、ゴチャゴチャして読みづらかった。もちろん、それはワタナベさんの小説の長所でもあるんですよ」
「ですね」と、ワタナベさん自身も同意する。
「それが、好みの人もいるでしょう。最終的には、そういった文章の小説を目指せばいい。でも、少なくとも今の私にはゴチャゴチャして読みづらかったし、他の多くの読者にとってもそうだったでしょう。私よりも本を読むのに慣れていない人は大勢いますからね。むしろ、その方が遥かに多いでしょう」
「わかります。それは、僕も痛いほど実感してます」
「それに比べると、この俳句…あるいは俳句もどき?の方が随分といい!“一番大切なコト”がピンポイントで『ズバリ!』と伝わってくる。『ああ~、こういうコトが言いたかったんだ!』って、ダイレクトに伝わってくる。インパクトもある!この方がずっといいですよ!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」と、ワタナベさんは大変に感謝してくれていた。
「じゃあ、さっそく次ですね」と、私は次のステップに進むことを提案する。
「次?」
「そりゃ、そうですよ。ここで終わりじゃないでしょ?ワタナベさんが最終的に書きたいのは、こういうモノではないんでしょ?」
「あ、そうですね。もちろん。でも、次って言っても、また前みたいに小説を書くだけでしょ?あるいは、もっと俳句の訓練を続けるか」
「いえいえ。次は、これを連作にしていってください。俳句というのは、5・7・5で終わり。それで、1作でしょ?そうではなくて、続きものにするんです。1行が俳句1句。それをズラズラと何行も続けていって、1つの物語にするんです。それくらいならできるでしょ?」
「楽しそうですね、それ!やってみます!」と、ワタナベさんの方もノリノリだ。
こうして、今度は連作で俳句を詠んでいき、それを1つの物語にするという手法に挑戦し始めたのだった。




