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人間関係を広げる才能

 最初、なんの才能もないと思っていたユウキ君。

 でも、実は彼にも才能はあった。ただし、それは小説を書く才能ではなかった。もっと別の才能。“人間関係を広げる才能”だ。

 それが悪いとは言わない。その能力を使って、より多くの読者を獲得する。そういう方法もあるだろう。

 けれども、あくまでそれは“いい小説を書いた上”で使うべき能力なのだ。小説を書く方の能力は上げない。それでいて、人気だけは獲得しようとする。そういうやり方はいずれ行き詰まる。


「このままじゃ、大変なコトになるわよ!」

 開口一番、私はユウキ君に向って、そう叱った。

「え?何が?」と、とぼけたフリをするユウキ君。

「ネット小説よ、この前の。あなた、評価の操作してるんでしょ!」

 そこで、ようやく事実を認めるユウキ君。

「ああ~、あれね。操作ってほどじゃないさ。ちょいと努力をしただけさ。“効率のいい努力”をね」

 ここで、私はさらにカチンときた。

「何が効率のいい努力よ!あんなもの努力の内に入らないわよ!努力するなら、ちゃんと小説を書く努力をしなさいよ!」

 ふぅ…と1つ大きなため息をついてからユウキ君は余裕の表情で答えてくる。

「あのさぁ。世の中には、いろんなやり方があるんだよ。悪いけど、オレにはいい小説を書く才能はない。それはオレ自身が一番よくわかってるんだ。それは努力なんかじゃ越えられない、果てしなく高く大きな壁さ。だったら別の方法で挑む。それのどこがいけないんだよ?」

「いけなくはないわ。全然いけなくはない。でもね。そればっかりじゃ駄目なのよ!ちゃんとがんばっていい小説も書く。その上で、多くの人にも読んでもらう努力もする。それならば、わかるわ。でも、今のユウキ君はそうじゃないでしょ?」

 ここで、ユウキ君はふぅ…と、もう1つ大きなため息をついた。それから、意を決したかのようにこう言った。

「ミカミカさん、オレに嫉妬してるんだろ?」

「嫉妬?」

「そうさ。ミカミカさんの指導じゃあ、全然上達はしなかった。どんなにがんばって書いたって、読者の数なんて増えやしなかった。それが、別の方法でちょっと努力しただけで、多くの読者を獲得し、みんなから賞賛されるようになったものだから、嫉妬してるんだよ。自分の能力不足を棚に上げて、偉そうなコト言うなよ」

 さすがに私も、これには頭に来た。

 これまで、何度も修羅場をかいくぐってきて、感情的になることだって何度もあったけれども、こんなに腹が立ったのはひさびさだった。

「なんですって!もう1度言ってみなさいよ!」

「何度でも言うさ。あんたの指導が悪いからこうなったんだ。もっと楽して人気者になる方法を教えてくれりゃよかったのに。そうすりゃ、こんな手を使わずに済んだんだ。『いい小説、いい小説』って言うけどさ、こっちはいい小説よりも、売れる小説の書き方を教えて欲しかったんだよ!大勢の読者に読まれて、絶賛される。そういうのを夢見てたんだ!」

「そんな…」

「もういいよ。もう今回で終わり。小説読み師としてのあんたの仕事はここで終わったんだよ。次からは来なくていいから。なにしろ、オレは最高の手を発見したんだ。“効率のいい努力”をして、楽してランキングを稼げる方法を身につけたんだからな!」


 そう言われてしまっては、もうどうしようもない。

 あくまで、これは雇用関係。雇っているのはユウキ君の側で、私は雇われている側なのだ。依頼者の方から一方的に打ち切りを宣告されたら、もうどうしようもない。

「わかったわ。好きにしなさい。でも、忘れないで。そういうやり方は、いつか破綻をきたす時が来るわよ」

「へへ~ん、そんなコトあるもんか。じゃあね~」


 こうして、私はユウキ君と決裂した。先に彼との関係の方が破綻してしまったわけだ。

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