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タートル・イエヤス

 1歩、カメヤマさんの部屋に足を踏み入れて、私は驚きの声を上げた。

「え?何?これは?」

 そんなコトは気にかけず、カメヤマさんは明るくあいさつをしてくる。

「やあ、ミカミカさん。いらっしゃい」

 思わず私はたずねる。

「や、やあ…って。それどころじゃないですよ。どうしたんですか!?このお部屋は!?」

 グルリと部屋を見渡すと、壁中にポスターが貼られまくっている。どれもこれも、アニメのポスターだ。かわいらしい女の子や女性のキャラクターもあれば、重厚なロボットアニメのポスターもある。

「ああ~、これね。ちょっと模様替えしてみたんだ。ミカミカさんに言われて見始めたアニメにハマっちゃってね。こっちも見てよ」

 と、言われて移した目線の先には、ライトノベルの文庫本がズラリ。アニメのDVDやブルーレイディスクが、これまたズラリと並んでいる。

「え!?ええ~!?こんなに買っちゃったんですか?」

「まあね。どうだい?ちょっとしたもんだろう」

「いや、そりゃまあ、たいしたコレクションですけど…」

「これだけあると、全部こなすのに時間がかかっちゃってね。それでも、小説を書くのにいい影響を与えてくれているよ。そうだ。こっちも見てくれる?」

 そう言われて、カメヤマさんの差し出したノートパソコンの画面をのぞき込む。

「こ、これは…」

 そこには、インターネット上に投稿された小説が映し出されていた。

「タートル・イエヤス?これ…もしかして、カメヤマさんですか?」

「イエス!なかなかナイスなペンネームだろ?」と、なんだかしゃべり方まで以前と違ってきているカメヤマさん。

「は、はあ…」

「まあ、ちょいと読んでみてくれよ。結構人気があるんだぜ」

 そううながされて、私はカメヤマさんの書いたネット小説を読み始める。


「こ、これは…」

 最初の数行を読み始めた段階で、すでに私は驚きを隠せなくなっていた。

 なにしろ、以前にカメヤマさんが書いていた歴史小説とは全然違うのだ。舞台は、確かに戦国時代なのだが、登場するキャラクターは、みんな少年。それも、美少年ばかり。

 以前のカメヤマさんは、堅苦かたくるしくて、大変に読みづらく、言っちゃ悪いけどとても退屈な作品ばかりを書いていた。

 それが、どうだろう?ムチャクチャにおもしろいのだ!!

「これ、以前書いていた作品と全然違いますね…」

「だろ?作風の方も、イメージチェンジしてみたんだ。どう?」

「どうもこうも…おもしろいです。それも、ムチャクチャに!!」

「そう?実は、自分でも結構自信作でさ」

「ただ…」

「ただ?」

「これって、以前に書いていたのと全然違いますよね」

「それで?」

「いえ、大丈夫なのかな~?って。これって、ほんとにカメヤマさんが書きたかった小説なのかな?と思って」

「オイオイオイ、よしてくれよ。『登場してるキャラクターが死んでる』とか『人形みたいだ』って言ったのはミカミカさんの方だろ?だいぶ、よくなったろう?以前に比べて」

「いや、まあ…そうなんですけど。それは、そうなんですけど。けど…」

「これでもオレはミカミカさんに感謝してるんだぜ。あのままいたら、一生クソつまんねぇ小説ばかりを書いて暮らしていただろう。それが、君のおかげで変われた!それも、根底からガラリと!これを感謝せずに、何に感謝するって言うんだ?これでミカミカさんを批難したら、神様に激怒されるってもんだぜ」

「そ、そうですか…」

「とにかく、ありがとな!おかげで新境地を開けたぜ!評判の方も上々なんだ。特に女の子の読者からは好評でね。“歴女れきじょ”っていうの?『若くてかわいいキャラがいっぱい出てきて楽しいです♪』とか『意外と時代考証がシッカリしていてビックリしました!大変に勉強されているんですね』なんて感想をよくもらうんだ」

「へ~、なるほど~」

 確かに、時代考証はシッカリしている。それでいて、かわいらしかったり、かっこよかったりする少年武将が次々と登場して、読者を飽きさせることもない。これは、文句なしにおもしろい!

「ま、まあ…カメヤマさんが満足しておられるのなら、私としてもうれしい限りですが…」

「満足!満足!大満足さ!いや~、まさか小説を書くのがこんなにも楽しいものだったなんてな~!ほんと!あらためてお礼を言わせてもらうよ、ミカミカさん」


 こうして、私はアニメのキャラクターに囲まれまくった部屋をあとにした。

「タートル・イエヤスか…えらく思い切ったイメチェンをしたものね。でも、こういうのも1つの小説の形よね」などとつぶやきながら。

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