成長の兆し
小説読み師。
この仕事をしていて一番うれしい時は、人が成長した瞬間に出会った時だ。
以前にお話をしたカメヤマさんのことを覚えているかしら?
歴史小説を書いていた堅物のあの人。頭デッカチで、頭の中は日本史のことばかり。歴史の教科書みたいな小説を書いていた人。
「アレ?」と、カメヤマさんの最新作を読んでいた私は声を上げる。
「どうした?」と、カメヤマさん。
「お…おもしろい!」
「おもしろい?ほんとに?」
「ええ!凄くおもしろい!前のと全然違ってる!」
明らかに以前と違っている。物語の中に登場するキャラクターが生き生きしている。縦横無尽に飛び跳ねている。前は、こんなじゃなかったのに!
私は、素直にそのコトを伝えた。
「これ、登場人物が生きてますよ。人形じゃなくなってる。生き生きしてる。この小説の中の世界で、ちゃんと生きてます!」
「そっか。そう言ってもらえるとうれしいな」
「歴史小説って、こんなにおもしろいものだったんだ~!早く続きが読みたいな~!他の作品でもいいかも。カメヤマさんの書く、他の登場人物を主人公にした小説も読んでみたいです!」
「いや~、まさかそこまでベタ褒めしてもらえるとは」
「何が起こったんですか?一体?」と、私はカメヤマさんの変貌の秘訣をたずねてみた。
「それが、ミカミカさんに言われた通り、アニメを見てみたんだよ。それから、ライトノベルっていうの?軽めの小説も何作か読んでみた」
「それで?それだけで、いきなりこんなに変わっちゃったんですか?」
「そう。それだけ。『こんなのだったら、自分でも書けるかな~?』って、これまで書いていた小説を土台に書いてみた。そうしたら、こうなった」
「すっご~い!もしかしたら、天才じゃないですか!?」
「いや~、そこまで褒められると照れちゃうな~」
「いえいえ!お世辞でもなんでもありません!ほんとに凄いです!」
「そう?じゃあ、がんばって、もっと書いてみようかな?」
「はい!そうしてください!もっともっと書いてみてください!きっと、いい作品になりますよ!」
「わかった。じゃあ、ちょっとやってみるよ」
世の中、わからないものだ。
あんなに堅苦しい作品を書いていた人が、わずかな時間の間に、こんなにも変貌をとげてしまうだなんて!
驚きと同時に、私は自分自身の能力にちょっとばかし自信を持ってしまった。
「このミカミカちゃんのアドバイスも、捨てたもんじゃないわね♪」なんて。
でも、実はカメヤマさんの進歩は、こんなもので終わったりはしなかったのです。
この先、もっと大変なコトに…




