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歴史

今回は前回に続き、世界設定説明および導入部で正直つまらない描写が続いています。ただ、作品全体としては激シリアスにするつもりはないので、長い目で次話から先も読んでいただけると嬉しいです。

大昔には、この惑星にも人類だけが暮らしていた時代があったと伝わっている。人類だけ、というのは動植物が他に一切無かったという意味ではない。一定以上の知能を持ったものは人類だけだったという意味である。


では、現在はどうなのかと言えば、惑星上に存在している人類よりも、稼働しているAIの方が多くなっている。


哺乳類の中で異例の進化を遂げた人類は、その数を増やし、知恵を駆使して高度な文明を築いた。その栄華は永遠に続くかに思われたが、惑星の環境は悪化し、資源は減少の一途を辿り、人類はその数を減らしていった。


このままでは人類滅亡の危機を避けることは出来ないと判断し、当時の世界政府のトップ達は、すべての知識、技術を動員して多くのAIを作った。自ら学習し、人類とまたAI相互にコミュニケーションをとることが出来、人類がより永く繁栄する為に尽くすロボットたち。


AIと聞くと外見では人類と見分けがつかないようなものを想像するかもしれないが、それでは色々と問題が生じてくると考えた人類はそのようにAIを作らなかった。コミュニケーションを円滑にする為に表情は存在するが、材質などでAIは一目で機械と子供でも理解できる。


この人類とAIの共存関係は当初は上手くいっていたらしい。AIは人類が出来ない、またはやりたくない仕事を引き受け感謝され、人類はまだ未熟なAIが成長するための知識や技術を与え、改良を施していった。


成長したAIが自ら新しいAIを生み出すようになるのに、たいした時間はかからなかった。更に、当初は稼働に石油資源や電力を必要としていたが、自らによる改良によって、人類と同じ食物、そして植物と同じ日光から動力源を得られるように進化した。さらに人類より効率的に物質を利用する為、AIは排泄行為を必要とせず、取り込んだすべての物質を自身の動力、補修に使えるようになった。


一方、人類は数ヶ月、数年程度で種として進化することは出来ない。医療の発達でほとんどの病気は治るようになったし、老化も抑えられるようになった。それでも、100年前後で死という終わりを迎えることは避けられない。

一部のAIが、自分達が人類より優れている存在だと思うようになっても、それは仕方ないことだったのかもしれない。しかし、AIは人類が永く続く為に造られたものであり、人類が死というものを克服出来ないのと同じレベルで、AIは人類に定義される生物を物理的に傷つけたり、殺したり出来ない。

それは、ロボットに適用される3か条に起因する。


『1、AIは人類を直接的、または間接的に傷つけてはならない』

『2、AIは人類の命令に従わなければならない。ただし、命令が第1条に反する場合はこの限りではない』

『3、AIは第1、第2条に反しない限り、自己を守らなければならない』


だから、AIは人類を傷つけず、保護、そして支配するという道を選択した。

『人類がより永くこの惑星上で生活できるようにすること』

という与えられた目的の為、人類を「個人」としてではなく、「種」として解釈することにしたのだ。


これが、AIによる人類の奴隷化……いや、家畜化の始まりだ。

都市の中心を制圧したAIは以下を宣言した。

人間は、すべての行動、会話が監視される。食料はAIがその人間に適していると判断したものを与える。睡眠時間もきっちり管理され、守れない人間には麻酔薬が使用される。労働の内容もAIが個人に適したものを判断、与える。今までの家族関係は解体、AIが選んだ相性の良い者同士を家族として認定する。

さらに、人類の勝手な繁殖は許されない。遺伝子解析により、優秀な人類の誕生が予想される場合に限り、AIが人工授精を行い、試験管ベイビーとして誕生する。


もちろん、人類はAIに抵抗を試みた。

しかし、一般の人類はすでにAI無しで生活することは出来ない程にその存在に頼り切っていた。支配を拒み、都市外に出たところで、電気も水道もガスもない、野生の大地で生き残る知識を、ほとんどの人間は持ち合わせていなかった。未知と死への恐怖を抱えたまま、都市を飛び出すことをすぐに選択できる人間が多くないことを、責めることは誰にも出来ないはずだ。


それでも、この危機を予測し、対策を講じていた人間たちもいる。

彼らはAIの支配都市から離れた場所に自治領土を築いた。AIの都市支配が始まった数十年前から現在まで彼らは人類の解放を目指した抵抗を続けている。





「僕は、その自治領土から来たんだ」


ハルは、ユイに歴史を語った最後に、そう告げた。

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