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出会い3


「ふぅ、倒せたか。というかリン、何で勝手に戦闘に入ってきたんだ?」


あんなやつ、俺一人で十分だったのに。


「だってリュウ、戦闘中にあんな隙作っちゃうんだもん。そりゃ心配になって割り込むでしょ。普通。」


「あの硬直は俺の方が早く解けるって知ってたの!だからやったの!」


子供みたいに言い返す。


「知ってたって・・・どうやって調べたの?」


急に真剣な顔で尋ねてくる。


「そりゃ、実戦で試したんだよ。」


「じ、実戦で試したって、このゲーム、ホントに死んじゃうのよ!もし向こうの方が早く硬直が解けたらどうするの!」


俺は、

「別にこんなやつの攻撃の一発や二発、問題ないって!」

と言おうとしたが、リンが本気で心配してくれてることに気がついて、怒られているというのに、嬉しくなってしまった。


「ごめん、もうやんないよ。リンもいることだし。」


「絶対止めてよね、ただし、一人でやるのはね。」


少し笑いながらリンが言った。

?一人では?どういうことだ???


「私がいるときはフォローもしてあげれるし、そもそもスイッチをする隙を作るのは重要だしね。」


「あれ、二人で一緒に戦うんじゃないの?」


別に二人別々に戦う意味はない・・・よな?


「普通のときはそれで良いけど、HPが減ってきて戦闘中に回復しなきゃいけなくなったとき、一人で敵を引き付けた方が良いじゃない。」


「一人が先に回復するでしょ。そのあとにスイッチで入れ替わってもう一人が回復すれば簡単に回復できるじゃない。」


なるほど、確かにそうだな。戦闘中に回復できるというのはなかなか心強い。


「リンは頭が良いなぁ~」


「リュウが頭悪いだけじゃない?」


「な、なに!?た、確かに学校での成績はあまり良くはなかったけど・・・」


「ふふっ、リュウは面白いね。さて、これからどうしよっか。」


「どうするかな。」


「今日はもう帰ろっか。」


「そうだな。」


俺はもっとリンと一緒にいたかったが、俺たちはただのパーティーなだけだ。これ以上一緒にいる意味無いしな。残念だけど今日は帰るか。


「そう言えばリンはどこに住んでるの?」


「2ステージ目のフラワータウン。お花畑が目の前にある家を買えたんだ~。綺麗なところだよ。」


「凄いな、家買ったのか。俺なんかずっと宿に泊まりっぱなしだからなぁ。憧れるな~、家とか。」


俺も稼ぎはある。稼ぎはあるんだけどさ・・・丁度4ステージ目から、カジノ何て場所が出来て、もうそこでいつも負けに負けて、全然たまらないんだよな。


「そうなんだ。じゃあ今日も宿に泊まるの?」


「あぁ、このステージなんだけど安い宿、見つけたんだよ。」


「あ、あのさ。きょ、今日私の家に来ないかなぁ~なんて・・・?」





・・・、・・・、・・・、


「ハッ!えっ!い、家?家ってリンの?え?行っていいの?」


「やっ、ほら、泊めるとかじゃないけど、せっかくパーティー組んだんだし、パーティー結成記念をお祝いしてもいいかな~って思って。」


「あぁ、なんだ・・・そういうことか。」


ちょっと何かを期待してたんだけど、俺の望んでたものじゃなかったよ。


「行ってもいいなら行かせてもらいたいな。」


もう暗くなってきたし、そろそろ帰らないと、夜の森ってゲームの中でもやっぱ怖いしな。


「うん。じゃあ行こっか。あ、ちょっとまって。確かここら辺で蜂蜜が採取できたハズなんだけど・・・」


リンが辺りの樹を探しまわる。


「あ!あった!」


目的の蜂蜜を見つけたらしく、気をタッチして蜂蜜を採取している。するとその樹から蜂が飛び出してきた。


「うわぁぁぁぁ!!!」


リンが絶叫しながら逃げる。

「はははっ」と笑いながら見ていた俺にも、二手に別れた蜂が襲ってきた。

ちょっと、俺は悪くないじゃん!何で俺まで追っかけてくんだよ!


「ハァ、ハァ、ハァ、に、逃げ切った。」


蜂に追いかけられ数分間逃げ続け、やっと蜂が帰っていった。


「やばい、リンとはぐれちまったな。」


幸いパーティー登録はしてあるため、居場所が分からなくなりことはないし、町に向かって歩いていれば大丈夫だろう。


「ええと、リンの位置は・・・こっちか。」


リンの居場所をマップで確認して、蜂から逃げてきた方向と逆の方向に歩き出す。

しばらく歩いていると、向こうもこちらに向かっているらしく、リンを表すカーソルがこちらに向かってくる。

しかし、そのカーソルは急に動きを止めた。その直後、


「きゃあぁぁぁぁ!!」


「リン!」


少し遠くにリンの悲鳴が聞こえた。俺は全速力で悲鳴が聞こえた場所に走る。

リンの姿を捉えると同時に、複数人のプレイヤーも見つけた。


「リン!大丈夫か!?」


「リュウ!」


「あ~?なんだ、連れが居たのか。ふんっ、おいてめぇ、今すぐここから消え失せれば、何もせずにいてやろう。」


「あぁ?」


何言ってんだこいつ?


「こっちは五人いるんだ。てめぇ一人でどうにかできるとでも思ってないだろうなぁ?」


「うるせぇ、早くリンを離せ!」


「俺らは今からこの子と遊ぼうとしてんだ。離せ?イヤだね。お子さまはさっさと帰んな!」


五人のプレイヤーたちのリーダー格であろう髭を生やした男が言い放つ。瞬間、取り巻きの男どもから笑いが沸き上がる。


「てめぇら、ふざけんなよ。」


俺は憎しみと怒りを込めてゆっくりと言った。


「殺されたいのか、お前。」


リーダー格のくずやろうに問われる。


「こっちの台詞だ。」

「ハッ!言うねぇ、ガキのくせして。あんまり生意気言ってると、リンちゃんにイタズラしちゃうよ?」


「きゃあ!」


男の手がリンに伸び、あちこちに触れる。リンにはきっと犯罪者通報メニューが表示されているのだろうが、手を縄で縛られているらしくメニューを操作できずにいる。


「てめぇ、それ以上リンに触れてみろ。・・・本当に殺るぞ。」


今度は静かに、だが殺気を込めて言い放つ。


「ガキがビビってんのに調子に乗ってんじゃねぇよ!さっきまでの威勢はどうした!これ以上触れたらなんだって?」


男がリンの頬をなぞる。


「ほらほら触っちまっ!!」


「黙れ。」

男が言葉を言い終わる前に剣を胸元に鎧ごと貫通させて突き刺し、そのまま数メートル走る。続いてスキルを発動させる。「大旋風」

自分を中心に、剣を回転しながら振り回しその回転に対象を巻き込んで、最後に回転によって発生させた竜巻で吹っ飛ばすというスキルだ。風属性が付いているが今は関係ないだろう。通常なら竜巻に巻き込まれた対象はかなりの距離を吹っ飛ぶ。

だが今回の場合、男は俺よりかなりレベルがひくかったのだろう。竜巻に吹き飛ばされる前にHPが0になり体が消えた。

最後の最後まで自分に何が起きているのか理解できてなかったようだ。俺はゴミを見るような目でそいつが消えるのを確認してから、周りの四人にも殺気を込めた視線を送る。俺の体はスキル使用後の硬直で動けなかったが、俺の目線を受けた四人もまた、同じだった。


「てめぇら、全員ゆるさねぇ。ぶっ殺してやる。」


全員許さない、ぶち殺す。リンに手をだしたやつを許せるわけがねぇ。


「リュウ!もう止めて!もう、十分よ!」


「リュウ?さっきもリュウって言ってた気がしたが、まさかあの、〔孤独の龍〕が通り名のトッププレイヤーかっ!?」


「そうだ。俺がリュウだ。」


男どもは俺がリュウだと知ると血相を変えて逃げ出した。


「逃がすかよ。」


スキル、「フレアドライブ」を発動させるべく、左足を下げ、剣を垂直に構える。


「リュウ!止めて!これ以上人を殺したらだめ!」


リンが横から口を出す。


「お願い、リュウ。うぅ、もう、もう止めて。ひっく」


俺はそこでやっとリンが泣いていることに気づき、攻撃動作を止めた。


「ごめんリン、泣かせちゃって。俺は、もう、君には関わらないから、泣かないでくれ。」


「違う!リュウのせいで泣いてるんじゃない!リュウは私を助けてくれた!あのときリュウが助けてくれなかったら私どうなってたか分からない!それに、それに私のせいで人を殺させてしまったから。それが悔しくて、悲しくて、申し訳なくて、それで・・・」


「そんなこと、リンが気にすることじゃない。」

「俺があいつを殺したのは、俺の憎しみからだ。リンのせいじゃない。」


「リュウ・・・」


「リン、俺は君を守りたい。今日初めて会ったばかりだけど、君と一緒にいたい。君のそばで君をずっと守っていたい。」リンが目を見開いた。


「・・・!私も、リュウと一緒にいたい。リュウが助けに来てくれたとき、スッゴイ嬉しかった。まだ助かってもいないのに、安心した。リュウと一緒にいるだけで、心が落ち着く。」


「リン・・・」


「パーティー結成のお祝いって感じじゃなくなっちゃったけど、家来てくれないかな。何か怖くて・・・」


「あぁ、行くよ。俺も一緒にいたい。」

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