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第6話 繋がる世界と誤解の巨大テーマパーク

「全部使えないなら、繋げといて」


次男は、巨大施設群を見下ろす丘の上でそう言った。

独り言のようでいて、隣の執事に向けている。


「だってさ、せっかく作ったんだよ?

 単体でダメなら、組み合わせればいいじゃん。

 エネルギーって足し算すれば増えるだろ?」


執事は静かに息をついた。

(……足し算では……いえ……)


次男は満足げにうなずいた。


「ほら、世界って複雑にすれば動き続けるんだよ」


その一言で、技術者たちは動き始めた。



最初に繋がれたのは、巨大な塔だった。


【重力塔】

落下エネルギーを利用する装置だが、単体ではすぐ止まる。


塔の下部には、巨大な水槽が接続された。


【浮力水槽】

沈めれば浮く。浮けばタダ。

次男の“浮力=タダ理論”の象徴。


塔から落ちた重りが水槽に沈み、

浮力で押し戻される力が、次の装置へ送られる。



その先には、巨大な円盤が回っていた。


【摩擦円盤】

こすれば熱が出る。熱はタダ。

次男の“摩擦熱=タダ理論”の遺産。


浮力で押された水が円盤を回し、

摩擦熱が生まれ、その熱が次の装置へ送られる。


執事はそっと目を伏せた。

(……摩擦は摩耗し……まあ……)



円盤の熱は、巨大な風洞へ流れ込む。


【風洞タービン】

熱で空気が動く。動くものはタダ。

次男の“勝手に動く=タダ理論”の延長。


風洞の風は、海へ向かって吹き抜ける。



海沿いには、巨大なプールがあった。


【海洋プール】

波は永遠に動く。動くものはタダ。


風洞の風が波を揺らし、

波の上下動が次の装置へ送られる。



その隣には、潮の満ち引きを模した装置があった。


【潮汐プール】

月の力はタダ。

次男がそう信じて作らせた巨大施設。


波の力が潮汐プールを揺らし、

その上下動が地下へ送られる。



地下には、熱気が満ちていた。


【地熱坑道】

地下は永遠に熱い。

次男の“地熱=無限”という誤解の結晶。


潮汐プールの動きが坑道の熱交換機を動かし、

熱が地表へ送られる。


執事は眉を寄せる。

(……地熱は局所的で……やめておきましょう……)



地表では、巨大なレンズが太陽光を集めていた。


【巨大レンズ太陽炉】

太陽光は無限。集めれば無限。

次男の“太陽=タダ理論”の象徴。


地熱の熱と太陽光の熱が合流し、

光と熱が混ざり合い、奇妙なゆらぎを生む。



そのゆらぎは、巨大なリングへ送られた。


【磁力収束リング】

磁力は見えない。見えないものは逃げない。

次男の“見えない=タダ理論”の遺産。


光と熱と磁力が混ざり、

空間がわずかに歪む。



そして最後に、すべてが一本の管で集約される。


【統合エネルギー炉】

太陽光も地熱も波も風も摩擦も浮力も重力も、

全部まとめれば永久機関になる――

次男がそう信じて作らせた巨大な炉。


炉の内部では、

エネルギーが矛盾しながら循環していた。


・動き続けるのに止まり続ける空間

・上下が反転する階段

・熱が逃げず、風が止まらず

・波が逆流し、光が曲がる


世界は、次男の誤解を前提にした物理へと変形していく。



次男は満足げに言った。


「これさ、全部が全部を動かすってことだよな。

 すごいよな、世界ってさ」


執事は静かに息をついた。

(……優しい破綻が始まっている……)


だが、その破綻は、誰も傷つけないまま形を整えていく。


巨大な塔は水槽へつながり、

水槽は円盤へ、円盤は風洞へ、

風洞は波を揺らし、波は潮汐を動かし、

潮汐は地下を温め、地下は太陽光と混ざり、

光は磁力を歪め、すべてが炉へと収束する。


一本の道のように、

誤解の理屈が連なり、

矛盾が矛盾のまま循環し、

世界の端で静かに回り続ける。


やがて、技術者のひとりが小さくつぶやいた。


「……完成しました」


その言葉に、次男は振り返る。


丘の下には、

落下、浮力、摩擦、風、波、潮汐、地熱、太陽光、磁力――

すべてが連結された巨大な構造体が広がっていた。


挿絵(By みてみん)


誤解で作られたはずの装置たちが、

誤解のまま調和し、

誤解のまま動き続けている。


世界の物理がわずかに折れ、

しかし優しく均されていく。


次男は満足げにうなずいた。


「よし。これでいいじゃん」


執事はその横顔を見つめ、

胸の奥に小さな震えと、

言葉にできない感情を抱いた。


こうして――

誤解の巨大テーマパークは、

静かに完成した。


次男は歩き出す。

執事はその背中を追いながら、

止められない流れを悟り、静かに息をのんだ。


■巨大施設

 【テーマパーク】


※この物語はフィクションです。

 次男の誤解が世界を曲げるのは、物語の中だけの優しい現象です。

 現実では、どうか真似しないでください。

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