第5話 結局、太陽って無限でタダなんだよな?
「結局さ、全部の源って太陽光じゃない?」
次男は空を見上げながら、ぽつりとつぶやいた。
独り言のようでいて、隣の執事に向けている。
「太陽ってタダだろ? 無限に熱くて、無限に降り注ぐんだよ。
だったらさ、使わない理由なくない?」
執事は控えめに口を開く。
「……天候や昼夜が……」
「まあまあ、それはあとで考えるとしてさ」
次男は軽く手を振り、足早に巨大な施設群が並ぶ敷地へ向かった。
◆
最初に案内されたのは、巨大なレンズのような装置だった。
太陽光を一点に集め、白く輝く焦点が地面を焼いている。
「これが【巨大レンズ太陽炉】。
太陽光を集めれば無限に熱くなるだろ? あれタダなんだよ。
だから、集めた分だけ発電できるんだよ」
執事はそっと目を伏せた。
(……集めても限界が……いえ……)
次男はもう次へ進んでいた。
◆
空を覆うように巨大なドームが建っていた。
透明な膜が太陽光を捕まえ、内部に閉じ込めている。
「これが【全天候型太陽光ドーム】。
空全部を覆えば、逃げる光がなくなるだろ?
だからタダで全部使えるんだよ」
執事は小さく息をつく。
(……光は散乱し……まあ……)
◆
次に案内されたのは、地面に向かって深く掘られた坑道だった。
内部からは熱気が立ち上っている。
「これが【地熱発電坑道】。
地下って永遠に熱いだろ? あれタダなんだよ。
だから掘れば掘るほど得なんだよ」
執事は眉を寄せる。
(……地熱は局所的で……やめておきましょう……)
◆
さらに奥へ進むと、火山の熱を直接利用する装置があった。
赤く光るパイプが脈動している。
「これが【火山熱利用装置】。
マグマって無限に熱いだろ? タダだよな」
執事は静かに目を閉じた。
(……火山も冷え……いや、もう……)
◆
次男は勢いよく別の施設へ向かった。
巨大なタンクと水路がつながり、雨水が循環している。
「これが【雨水循環発電】。
雨って勝手に降るだろ? あれタダなんだよ。
だから降った分だけ発電できるんだよ」
執事は控えめにうなずく。
(……降水サイクルは太陽光で……まあ……)
◆
さらに進むと、巨大な温室のような施設があった。
内部では植物が高速で成長し、その動きで発電機が回っている。
「これが【バイオマス成長力発電】。
植物って勝手に伸びるだろ? あれタダなんだよ。
だから伸びた分だけ発電できるんだよ」
執事はそっと息をついた。
(……光合成の仕組みを説明しても……)
◆
そして最後に、巨大な建造物が姿を現した。
複数の塔、ドーム、坑道、温室が一本の管でつながれ、
中央の巨大炉に集約されている。
「これが【統合エネルギー炉】。
太陽光も地熱も雨も植物も、全部タダだろ?
だったら全部まとめれば永久機関になるよな」
執事は静かに目を伏せた。
(……自然エネルギーはすべて太陽光の派生なのに……)
次男は満足げにうなずいた。
次男は歩き出す。
執事はその背中を追いながら、
この誤解が世界を変えてしまう予感に、胸がざわついた。
◆
次男の誤解は、またひとつ積み上がった。
その誤解がどこへ向かうのか、まだ誰も知らない。
■巨大施設
【巨大レンズ太陽炉】【全天候型太陽光ドーム】【地熱発電坑道】
【火山熱利用装置】【雨水循環発電】【バイオマス成長力発電】【統合エネルギー炉】
※この物語はフィクションです。
次男の誤解が世界を曲げるのは、物語の中だけの優しい現象です。
現実では、どうか真似しないでください。




