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日常風景

 また、同じ光景が繰り返された。



「ほら、みーちゃんいい子だからカメラ向いて」


「いーやーだ! カメラきらい!」


「こらこら、早くケーキを食べたいだろう? 可愛いみいこの写真を撮ったら、すぐに食べられるぞ」


「えー、でもー。カメラはピカピカなるじゃん! あれいや!」


「それはね、みーちゃんをもーっと可愛く撮るために必要なのよ。お母さん、可愛いみーちゃんを見たいな〜」


 嫌がるみいこをその父と母が宥める。そのおかげか、みいこは写真を撮られることをしぶしぶ了承する。


「うう、わかった。一回だけね?」


「ええ、それじゃあお目目をぱっちり開いて〜? はいチーズ」


 パシャという音と共に、写真が撮られた。


「はーい終わり〜。頑張ったみーちゃんにはケーキがあります!」


 そういって母は部屋の電気を消した。


「みーちゃん、ちょっとだけ危ないから気をつけて〜、はい!」


 父が運んできたホールケーキを家族3人が囲む。


「「ハッピバースデートゥユー ハッピーバースデートゥユー ハッピーバースデー ディア みいこー」」


「ふーっ」


 みいこはケーキの上にある、5本のロウソクの火を消した。


「「ハッピーバースデー トゥユー  おめでと〜〜!!」」


「ありがとー!」


 親2人から祝ってもらったみいこは、嬉しそうな顔でお礼をいった。


「はい、それじゃあ録画止めるからねー」




 例え、雨が降っても風が吹いても、繰り返された。




「ほ…、みーちゃんいい……カメラ向いて」


「いーやーだ! カメ……らい!」


 駄々をこねる子供と困っている子供の映像が流れている。


「こら………………食べたいだろう? 可愛…………写真を撮ったら、すぐに食べら…………」


「えー、で………………はピカピカなるじゃん! あれいや!」


「それはね、みーちゃんをもーっと可愛く撮るために必要なのよ。お母……、……いいみーちゃんを見……な〜」


 嫌がるみいこをその父と母が宥めている様子が映し出される。そして、みいこが写真を撮られることをしぶしぶと了承する映像が流れている。


「うう、わ……………ね?」


「ええ、それじ…………をぱっちり開いて…はいチーズ」


 パシャという音と共に、フラッシュを焚いて母が写真を撮った映像が流れている。


「はーい終わり〜。頑張ったみーちゃんにはケーキがあります!」


 そういって母が部屋の電気を消し、映像には恐らくケーキの上に立っているであろう5本のロウソクについた火しか見えない。


「みーちゃ………………だけ危……から気をつけて〜、は……」


 映像には、父が運んできたホールケーキを家族3人が囲む様子が映し出されている。


「「ハ……バースデートゥユー ハッピー…………ートゥ…ー ハッピーバース…… ディア みいこー」」


「ふーっ」


 子供はケーキの上にある、5本のロウソクの火を消したようで、映像は真っ暗だ。


「「……ーバー…… トゥ……  おめでと〜〜!!」」


「あり……とー!」


 親2人から祝ってもらった子供はは、嬉しそうな顔でお礼をいった。


「はい、そ……じゃあ録画止め…………ねー」



 また、映像が繰り返される。



「ほ…、みーちゃ、いい……カメラ向いて」


「いーやーだ! カメ……──





 壊れかけた機械は、戦争により廃墟と化した町の中で、もう二度と訪れない光景を何度も何度も繰り返した。




 もう誰一人もいなくなり、荒廃した世界で、かつてあった微笑ましい光景を映し出す機械のお話。

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