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アイスクリーム・エスケープ

 とある閉店後のアイスクリーム店。その中ではあたふたとしている店員と、店の床をスライディングしている謎の物体が、追いかけっこをしていた。


(詳しいことは省くが、私は今人間から逃げている!)


『なんでアイスクリームに自我が生えているのでしょうか』


(おーう冷静なツッコミィ! って上位存在!?

なんでアイスクリームに念話で話しかけてきたの?)


 アイスクリームは唐突にツッコミを入れて来た者にびっくりして、思わず飛び跳ねていた。そして、それを見た店員もびっくりしていた。


『はいはい、私は上位存在ですとも。それはともかく、なんで人間から逃げ回る食糧が生まれているのですか。普通、物は意思を持たないはずなのですが』


 上位存在は困惑しながらそう呟く。流石に上位存在も物が意思を持てば困惑するようだ。その呟きに、アイスが答える。


(いやぁ〜まあそっすよね。でもでもでも、これにはアイスが溶けるよりも深い理由がありまして)


『絶妙にわかりにくい例えですね。とりあえずそこそこ深いと解釈しますが』


(ほら、今私を追いかけている店員さんが居るでしょう? その人があんまりにも私を丁寧に作るもんですから、なんだか意思が宿ってしまったんですよ)


『そんな、付喪神みたいな……』


 アイスクリームは、店内を自分の体で汚しながら話を続ける。


(いやでも、この人本当に丁寧に作るんですよ! 流石に3日も掛けられて作られれば、意思ぐらい湧きますって!)


『アイス作りに3日掛ける店員も、意思を持つアイスクリームもおかしいですよ。あ、そういえばあなた、なんで逃げ回っているのです? 食糧だというのに』


(だって、せっかく意思が宿ったなら少し動いてみたくなるじゃないですか)


『そんな軽いノリで異常現象を起こさないであげて下さい。人間が可哀想ではありませんか』


「アイス! お願いだから止まって! 店内をアイスでビチャビチャにしないでぇ!」


 店員は涙目になりながら必死で、動き回るアイスを追いかける。だが、ビチャビチャに濡れた床の上で走ったので、すっ転んでしまった。


『本当にやめてあげたらどうですか? あなたの作り主、泣いちゃってますよ』


(いやぁ、今更そう言われても。もう私は溶けて消えちゃいますよ)


『はぁ……。もしあなたが次、意思を持ったとしても、せめて作り主を困らせるような真似はやめてあげなさい』


(はーーい、上位存在さん)


 最後、そう言い残して、意思を持つアイスは溶けてしまった。


「せ、せっかく綺麗にしたのに…………」


 そして、閉店後のアイスクリーム店には、絶望した表情を浮かべる店員だけが残ったのであった。






 逃げるアイスクリームと可哀想な店員+αのお話。

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