第二章 軌道修正
真っ暗な闇の中、一筋の光が私の目の奥を照らしてくれる。
スマホのアラームも私に朝が来たことを懸命に知らせている。
「また守れなかった・・・」
悪夢の様な情景が頭の中に張り付いて私を照らす一筋の光も遮断されているかの様に酷く落ち込んだ朝を迎えてしまった。
スマホのアラームを止めてロック画面に表示された日付を確認する。
「え?戻ってない。」
頭が真っ白になる。机の上のペンダントを確認する。
もちろんあの時に起動させることが出来なかったので残り回数が減っていると言うこともなかった。
つまりあの出来事は現実に起こったまま今日と言う日を迎えてしまった事になる。
しかしなぜ私は家に帰ってきて普通に寝て今を迎えた?
あの瞬間以降の記憶が全くない。今までこんな事はなかった。
時間が戻っていないと言うことは廻くんはどうなった?
私を庇って車に撥ねられた廻くん、時間が戻ってないと言うことはまさか・・・
嫌な想像が頭を過ぎる。
私は居ても立っても居られなくなり急いで家を出る。
急に走って家を出る私に驚いて声を掛ける母親を無視して向かう先は廻くんの家だ。
家の前に到着すると表札には「黒野」と書いてある。
ピンポーン!
チャイムを鳴らす。そして私はここで気付く。
私が廻くんの家を知っているのはおかしい。
どうしよう。もし廻くんが出て来たらどう説明しよう。
でも私も少し思っている事がある。もしかしたら廻くんも私と同じ・・・
頭の中で色々な事がぐるぐるしているとはーいと言う返事と共にドアが開いた。
出て来たのは廻くんのお母さんだった。
「えっと・・・どちら様ですか?」
それはそうだ。今は私の事はまだ知らないのだ。
少しだけ悲しい気持ちになってしまったが気を取り直してお母さんの目を見る。
「廻くんのクラスメイトの時雨輪と言います。廻くんはいらっしゃいますでしょうか?」
真っ暗な闇の中一筋の光が俺を包み込む。スマホのアラームの音。
何故だかは分からない。俺に朝が来たのだ。
「やっぱりそうだったんだな。しかし・・・」
今回の一件は今までと状況が大きく違っている。時間が巻き戻っていないのだ。
これまでならペンダントのスイッチを押して起動させ強く願う。
時間を戻してください。彼女が死なない世界に戻してくださいと。
しかし今回は違う。起こった出来事がなかった事になって次の日を迎えているのだ。
あの瞬間時雨は俺と同じペンダントを握っていた。
しかし俺が見たところ起動している様ではなかった。正常に起動すればペンダントの形状が変わるはずだからだ。
でも時雨のペンダントは形状を変えていなかった。
そもそも起動していたとしてもペンダントの力でこんな事象が起こるのか?
「聞いてみるかあいつに・・・」
ピンポーン!
その時玄関のチャイムが鳴った。まだ朝早いと言うのに一体誰だろう?
二階にある自分の部屋を出て階段を降りて一階の玄関へ向かう。
すると既に母親が来客に対応していた。
玄関のその先を見るとそこには時雨が居た。
こんなに朝早くからどうしたのだろう?いや。決まっているか。
対応してくれた母親に礼を言って時雨と向き合う。
「廻くんおはよう。」
「おはよう時雨。」
「私がどうして廻くんの家を知っているのか聞かないんだね。」
「ああ。時雨も俺と同じだったんだな。話がある。いつもの公園に行こう。」
「うん。」
そうして俺達は近くにある公園に向かい公園のベンチに腰掛ける。
何から話そうか。どう話そうか。
しばらくの間俺達を薄暗い沈黙が包み込む。
「やっと見つけた!」
俺達の間の薄暗い霧を払い除けた一筋の声。
目の前に現れたのは工藤零時だった。
「零時?なんでお前がここに?」
「お前らこそこんなに朝早くから二人で何やってんだよ。」
「いや、それは・・・」
「いや。言わなくても分かってる。」
「え?」
「まだその話を二人でするのは待ってほしい。この反応はマスターペンダントではないか・・・しかし・・・それでも。」
零時は何かタブレット端末の様なものを手に持ちぶつぶつと何かを口にしている。
「零時お前何を言って・・・」
「悪いな二人とも。」
次の瞬間視界が暗闇に覆われた。




